【〈連載〉大人の教養シリーズ 第3回】
「歴史」から現在と未来を見通す3冊


リモートワークが増え、自宅での時間の使い方を考え始めた人も多い昨今。
「こんなときこそ学びを深めよう!」「教養あるビジネスパーソンを目指そう!」「独学の時代!」と言われるけれど、いったい何から手をつければ……。
そんなときこそ、フライヤーがいくつか用意している学びの入り口へとみなさんをご招待する、月一連載「♯フライヤー大人の教養」はいかがですか。
第1回の「数学的思考力」、第2回の「経営の神様」ともに多くの方にお読みいただいております。教養への欲求の高まりを感じます。
さて、今回こそ「歴史」がテーマです。歴史というと、受験勉強などで暗記科目としてのイメージが定着しているせいか、「つまらない」「眠い」ものだと感じてしまう人もいると思います。
それはおそらく、歴史がいまの自分、そしてこれからの自分とつながっていないように見えるからかもしれません。
歴史は決して現在、未来と分離された「ただ通り過ぎたもの」ではなく、確実にいまここにいる私たちを縛り、明日の私たちを動かしています。
今回の「大人の教養」第3回では、そうした目線で歴史のダイナミズムを感じられる3冊を選んでみました。
未来に向けて、過去からの線上に私たちはどう立てばいいのか。それを考えるためのヒントになるはずです。


生きていればお腹が空くのも人間。その「当たり前さ」は、人類が生まれた時から「食」とともに歩んできたことを意味しています。これを振り返りながら、「食」がいかにいまの、そして未来の人間へとつながっているかを、現代の欧州のインテリジェンスを代表するジャック・アタリ氏が書き綴ったのが本書です。
古代文明、帝国、宗教などの裏側では必ず「食」が重要な役割を担ってきました。なぜ食品産業が経済、政治、文化に力をもっているのか、この本を読むと明らかになります。
そして、栄養に縛られた人類、貧困の中で健康格差を生じさせている食糧事情、それでも増え続けている人口は、30年後の世界をどう変えようとしているのか。
過去から未来へと貫かれる豊かな視点を提供してくれます。




文明と人類の歴史に迫ったユヴァル・ノア・ハラリのベストセラー『サピエンス全史』ではなく、こちらの本を「歴史」の一冊として選んだのは、歴史学者らしい仕事として、過去からの解放と未来への開放をより指向している本だからです。
現代の科学とテクノロジーは、どのような歴史の線上に生まれたものなのか。「宗教」はどのように変容し、自らが「神」になり代わろうとするいまの私たちの人間至上主義につながっているのか。マルクスが流行したのはなぜか。そういったことを突き詰めた先で、テクノロジーによって人間の自由が消し去られた未来が予測されます。
なにやらゾッとする話のようですが、なぜいまの私たちは情報に囲まれるようになったのか、このままどこに連れて行かれようとしているのか、しっかりふまえておくことは大切です。自分の生き方に対して新しい視野を展いてくれるはずです。


最後に、SF小説であるこの作品を、あえて「歴史」の一冊として紹介します。ジョージ・オーウェルによって書かれ1949年に刊行された本書は、私たちが生きる現代社会とその行き着く先を、過去からの視点で予見しているものだからです。
作中の全体主義国家では、少しでも体制に背く行動をとると〈思考警察〉に連行されてしまう。屋内も含めて街中に張り巡らされたテレスクリーンはつねに人々を監視し、意外な人物が〈思考警察〉としてあらゆる場所に潜んでいる。主人公であるウィンストンは、歴史の改竄作業を仕事にしている。結末は決してハッピーエンドに見えるものではありません。
本書が醸し出す第二次世界大戦の頃の空気は、いまの目線で見ると、さらに濃厚な〈毒気〉として現代を生きる私たちの体と心を支配しているように感じられるかもしれません。それは、未来への漠然とした不安をもかき立てます。
だからこそ、この「歴史」の一冊は、いまなお読み継がれているのです。
「歴史」の視点があるからこそ、私たちは現在に立ち、未来への視野を獲得できます。そのことが少しでも感じられたようでしたら幸いです。
普段のご自身の学びについて、ぜひSNSなどで「♯フライヤー大人の教養」のコメントを書いてシェアしてみましょう! 新しい学びの入り口が見つかるかもしれません。
次回は1カ月後、「ビジネスモデル」にかんする3冊の予定です(変更になる可能性もあります)。お楽しみに!