【書店員のイチオシ】
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 』
【NetGalley Japan】


内容紹介
イギリス南部の都市ブライトンで生まれ育った中学1年生のぼく。パンクな母ちゃんとダンプの運転手の 父ちゃんの間に生まれた一人息子で、「いい歳をして反抗的でいい加減な」母親とは違い、 学校ランク第1位の公立小学校で生徒会長をしていたような「いい子」。
しかし、 ぼくはちょっと変わった「元・底辺中学校」に進学することにした!
超美少年なのにレイシストのダニエルや、こわーい兄貴がいるけど心優しいティム。ただでさえ思春期ってヤツなのに、「ワケあり」だらけの中学校では、 家庭環境とか、性別の違いとか、ときには両親の肌の色をきっかけに、毎日が事件の連続。それでも、ぼくたちは大人たちの常識を軽く飛び越えて、 子どもなりのやり方でそれを乗り越えていく。
NetGalley会員レビュー
深刻に問題提起してくるような重さはなく、ユーモアある軽やかな文章であるのに、読みながら自分の中に色々な思考の種が蒔かれるのを実感する。
人種やジェンダーなど様々な「分断」が溢れるこの世界、大人たちが議論をこねくり回しているのを尻目に、シンプルな感性で問題をひょい、と飛び越えてしまう子供の素直さが素敵。この素直さは、息子くんのように常に「差異のあるもの」として見る/見られる両方の立場にあればこそ培われた感性なのだろうか? いや、"エンパシー"が"シンパシー"と違って(感情ではなく)能力だとするなら、誰だってその力を磨くことは可能だと信じたい。
まずは問題を認識すること、自分の無意識下にある「自分とは違うものへの忌避感」を自覚すること。その第一歩として、この本が果たす役割は大きいと思う。
「多様性とは何か?」「差別とは?」「多文化共生社会とは?」など、今、日本でも考えるべきトピックがたくさん含まれたエッセイでした。「答えのない問い」として優れたものも多く、エッセイの一部分だけを配布して、「解決策を考えさせる」、「自分の意見をまとめる」などの授業にも使えると思いました。
最近大学から求められているのか、図書館に「グローバルに関する本はないですか?」とやって来る生徒がとても増えました。しかし「グローバルの何が知りたいの? 経済? 社会? 文化?」と聞いてもほとんど答えられる生徒はいません。そんな「グローバルについて知りたいけど、よく分からない」という生徒に、ぜひこの本を手渡してやりたいです。
個人的には「学校の先生の仕事として福祉的なものが増えている(食事にも事欠く家庭に対して、先生が自腹で食料を買ったりしている)」という話と、筆者ならびに筆者の息子さんが日本に帰国した際に受けた差別の話が特に印象に残りました。
息子さんがノートに書いていた言葉から拝借した「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」というタイトルもとても素敵です。理知的で好奇心旺盛な息子さんの今後が気になります。
「多様性、差別、格差」と書くと身構えてしまうのだが、元「底辺」中学校に進学することになった息子さんのエピソードを通して語られているので、サクサク読めてしまった。それも一気に読んでしまった。読み終えた後、息子さんと一緒に成長させてもらったなぁと充実感を感じている。いや。息子さんに教えてもらったんだな、これは。
多様性に関しては先進国というイメージ(実際そうだろう)のイギリスだが、だからこその差別があったり、思っていた以上の格差社会だったりで驚いた。一方で、他国の様子を知ることで自国の課題も見えてきた。
多様性、差別、格差という言葉を見たり聞いたりしない日はない。近年は外国人労働者も増え、また海外からの観光客も増加し、日本にいても異文化やいろんな価値観と触れる機会が増えたせいもあるだろう。裏を返せば、課題は以前からそこにあったが、人々の意識が成長することで気づくようになった、または声を上げられるようになったということでもある。
息子さんと同じく「これはどういうことだろう」と素直な心で思考することを忘れないでいたい。そこからチェンジ、または前進のチャンスにしたいと思う。1人でも多くの方に読んでもらいたい。
平常、お薦めの本は? と聞かれたときは、相手の好みや求めているものをまずよく聞いて、それならこんなのどうかしら、と対応します。自分の好みを全面に出すことはできるだけせずに、相手の“今”にほどよくハマるものを手渡したいなぁと思っています。
それなのにどうしよう、この本を誰彼かまわずおすすめしたい。傍若無人自己満足強烈押売をしたい。
でもそれはやっぱりしたくないなぁ……なので、相手の話をよく聞いて、髪の毛一本分でも、この本に結び付きそうなものがあったら、こんなのどうかしらと手渡す本の中に、この本を必ず入れよう、と思います。
息子さん本人やパートナーの一言が、海外未経験で凝り固まった価値観にある自分には刺さりました。来年の五輪や外国人労働者受入などよりボーダレスになっていく我々日本人にもこれから直面するであろう問題を強く意識させます。
また対照的に保護者として息子を眺める視点は温かく、いつの時代も変わらない家族という在り方も感じさせてくれます。
何度も何度も繰り返して読みたくなるような1冊。
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