【書店員のイチオシ】
あくまで一読者としての視点を忘れない『進む、書籍PR!』
【ブックスタマのイチオシ】




本屋をやっていても、書籍PRというお仕事は、あまりなじみがありません。 でも、『佐賀のがばいばあちゃん』や『おやすみ、ロジャー』、『ワンダー』と言えば、知らない書店員はいないでしょう。 そのヒットの陰で、この本の著者の奥村知花さんが書籍PRを担当していました。
本を売るのでもなく、広告をするのでもなく、本の存在を企画として売り込むのが書籍PRです。
「桃李もの言わざれど下自ら蹊を成す」、とは言いますが、年間6万冊新刊が出ると言われる中では、中身がよい本だからと言って、必ず売れるとは限りません。本が売れるためにはその本がおもしろいだけではなく、出版社の編集と営業、広告代理店、テレビ制作会社といった、さまざまな人の仕事がかみあって同じベクトルに向かって、はじめてヒットにつながります。
印象的だったのは、出版社がこの本の売りだと思っているポイントと、テレビ制作側の人が取り上げたいネタポイントが、結構違うということです。出版社側の人は、この作家は○○賞を取ったということを売りにしたいと思っていますが、テレビ制作側としては芥川賞や本屋大賞などは別として、そのほかの賞ではPRの売りにはならない、ということです。テレビに売り込みたい、という出版社の人が、あまりテレビを見ていなかったりすることが意外に多いそうです。相手の立場を想像して考えるということが、PRの現場でも大切だということです。
奥村さんが実際にPRを担当した書籍が実名で出てきて、体験にもとづくエピソードもふんだんに出てくる点が非常に参考になります。出入り禁止になってしまったり、インタビュー中に激怒させてしまったりといった、失敗談も赤裸々に書かれています。
著者の奥村さんは仕事を受けるべきか決める前にゲラを3回読むそうですが、これも仕事の相手である著者や編集者の立場を想像するひとつの手段だと思います。一読者としての視点を忘れない、自然体の仕事のやり方に共感が持てました。 私も料理レシピ本大賞 in Japanという賞の実行委員長をやっていますが、賞のPRを考える参考にしたいと思います。