要約の達人が選ぶ、今月のイチオシ! (2019年2月号)


2019年になりましたね。今年は元号が変わるなど、いろいろな変化が起きる年になると予想されます。2019年のスタートを飾るにふさわしい、至高の本をご紹介します。



大学・大学院ともに、いわゆる「文系」とくくられるような学問を専攻していました。しかも参与観察やインタビューといった「質的研究」が主だったということもあり、はっきりとした数字を出せる「量的研究」には、当時からなんとなく引け目を感じていたものです。
「数字が重要」というのは、ビジネスにおいてはとりわけ当てはまります。これはある意味で当然ですし、それ自体が悪いことだとはまったく思いません。数字がなければファクトベースで話せませんからね。しかしなんでも数字で評価できるという態度も、なんだか少し表層的な見方なのではないのかな? とずっとモヤモヤしていました。
そこにきてこの本です。本書を読まれて、「こういうことなんだよ!」と膝を打った方も多いのではないでしょうか。人間は結局のところ、物語を生きる動物です。そこにある文脈が読み解けなければ、深い理解は難しい。「物語(=文脈)を日常生活で読み取る」ことの重要性を、あらためて認識させてくれました。
昨今では「ビジョン」を持つことの大切さがよく指摘されますが、果たして「ビジョン」はどう培うべきなのか? 本書にその重要なヒントがあります。将来が読めない時代だからこそ、お読みいただきたい一冊です。



世界最難関の大学といわれるミネルバ大学。最近では日本語での情報発信も充実してきたため、「ミネルバ大学という革新的な大学がある」ことをご存じの方も多いだろう。
講堂や研究施設もなく、授業はすべてオンライン。実績もほぼゼロ。なのに世界中から学生が殺到する。なかには、ハーバード大学やスタンフォード大学といった名だたる大学の合格を辞退して進学する学生もいるほどだ。
本書を読めば、そんな「教育の常識」を覆すミネルバ大学の全貌が理解できる。設立背景や授業・入試・学生生活・学び方の特徴、今後の発展など、知れば知るほどミネルバ大学に惹きつけられていく。
とりわけ要約者が興味をもったのは、「都市をキャンパスにする」という方針である。学生たちは4年間で世界7都市に移り住み、そこをキャンパスとして学んでいく。仲間とともに異文化を肌で感じる経験は、学生たちの一生モノの財産になるだろう。
今後は「教育×破壊的イノベーション」が世界のあちこちで起こっていく。そんな未来を彷彿させる一冊だ。教育の未来に関心のある方にはぜひ読んでいただきたい。



動画はもはや、プロだけが作るものではなくなりました。TikTokは若者のインフラとでも言うべき存在になり、SNSには友人がアップした動画が溢れています。あまりにもシームレスに、しかし深く、動画は私たちの生活に入り込んできました。
だからこそ誰しも、動画についてじっくりと考える機会がないままに今に至っているのではないでしょうか。本書は、そんな私たちをしばし立ち止まらせてくれます。
著者によると、2018年以降“動画のサードウェーブ時代”に突入しているといいます。動画の変遷をコーヒーカルチャーにたとえているわけです。
YouTubeの登場(2005年)~YouTuberのブーム(2014年)は昔ながらの喫茶店スタイル(ファーストウェーブ)にたとえられ、Facebookの動画対応(2015年)~早回し料理動画のブーム(2017年)はスターバックスのような巨大チェーン(セカンドウェーブ)、2018年以降はBlue Bottle Coffee(サードウェーブ)。サードウェーブにおいては、動画のクオリティがますます重視されるようになっているそうです。このたとえ、誰もが納得ですよね。
本書を読めばきっと、ふだん何気なく目にしている「動画」の見え方が変わるはず。特にコンテンツづくりに関わっている方や「スマートフォンに顧客を奪われてしまった」と嘆くすべての業界の方にとって、必読の一冊だといえるでしょう。



何とも耳の痛い本が発売された。
朝起きるとどこかが痛い、何か具合がイマイチと、体調が100点だった試しがない今日この頃。新しい商品が発売されても、昔は飛びついていたのに今はどうも手が出ない。老化なのか劣化なのかわからないが、35歳ぐらいを過ぎてから確実にオッサン化を感じる日々だ。
私は2003年に社会人になり、今年で16年。社会人になりたての頃はまだまだ「オジサン最強説」が流れていた。世の中はオジサンが支えている的な思想である。そこから時は流れ流れて、本書が発売されるような世の中になった。
ただ、本書によれば「オジサン」と「オッサン」は違うらしい。「オジサン」世代の中でも、古い価値観に凝り固まって、過去の成功体験に拘泥し、謙虚さや学ぶ姿勢を失ってしまった人たちのことを「オッサン」と呼んでいる。ああ、怖い。「オジサン」ならまだいいが「オッサン」は辛い。
本書では、若い世代に向けての劣化したオッサンへの対処法だけでなく、どうやったら劣化したオッサンにならなくて済むかも示してくれている。
自分の人生だけでなく、日本のこれからの未来のために、オッサン化している自覚のある方は今すぐ読みましょう。