要約の達人が選ぶ、今月のイチオシ! (2019年10月号)

石渡 翔

今年も「読書の秋」がやってまいりました。暑さも落ち着いてきましたし、公園やカフェのラウンジで読書するにも乙なもの。

というわけで10月の編集部イチオシをお届けします。

松尾美里
編集部松尾美里のイチオシ詳細
EQ2.0
EQ2.0
トラヴィス・ブラッドベリー,ジーン・グリーブス,関美和(訳)
サンガ
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EQ2.0
EQ2.0
著者
トラヴィス・ブラッドベリー ジーン・グリーブス 関美和(訳)
出版社
サンガ
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今月のイチオシ9月号では「CQ(好奇心指数)」の重要性についてふれた。10月号では、「心の知能指数」として世界的に知られているEQにフォーカスしてみたい。

EQとは、自分自身と他者の心の動きを理解し、自分の行動や人間関係を上手にマネジメントする力のことである。仕事で高い成果をあげている人の90%はEQが高いというから、EQを向上させる具体的な方法を知らないままでいるのは惜しい。

EQを高める66のテクニックを紹介した本書『EQ2.0』は、英語版だけで200万部を突破し、16ヶ国語に翻訳されている。ダライ・ラマや『7つの習慣』著者のスティーブン・R・コヴィーらが絶賛しているという事実からも、本書の注目度が窺い知れる。

EQには、「自己認識スキル」「自己管理スキル」「社会的認識スキル」「人間関係管理スキル」の4つのスキルがある。現状ではどのスキルを重点的に補強したらよいか? そのために特に実践するとよい3つのテクニックは何か? 診断を受けると、こうした結果が提示される。

印象深かったのは、「自己認識スキル」が他の3つのスキルの土台になるということだ。自分自身の心の動きを把握しないまま、自分の感情をコントロールし、相手の気持ちを察知するのは難しいというのは合点がいく。また、自己認識スキルを高めるテクニックとして、「居心地の悪さに慣れる」「立ち止まって『なぜそう感じるのか?』と自問する」「ストレスがかかったときの自分を知る」などが紹介されている。これらを熟読すると、自分を知ることがいかに難しいかを突きつけられる。

たとえば、自分に対してマイナスな発言ばかりする人がいたとしたら、その対象に目が行くことはないだろうか。私なら、居心地の悪い感情を引き起こしている相手と距離をとる方法を考え始めてしまう。しかし、相手ではなく自分の心に矢印を向けるとどうか。「私はこういう感情にとらわれやすいのかも」などと、自分の感じ方の特徴がわかるかもしれない。対症療法で終わらず、本質的な問題解決の糸口がつかめるのではないだろうか。

もちろん、自分の感情に寄り添い、対峙するのは簡単ではない。見たくなかった自分が鏡に映ると、目を背けたくなるかもしれない。しかし、そのハードルを乗り越えようと思えるほど、著者のアドバイスは希望に満ちている。「何度か居心地の悪い感情に寄り添おうとするうちに、心がざわついても破滅するわけではないことがわかるだろう」。

自己認識スキルを伸ばすことで、EQも向上し、人生にポジティブな変化を生み出せる。そうした大事な事実に気づかせてくれる一冊に出会えたことを嬉しく思う。

「EQ診断なら受けたことがある」という方もそうでない方も、まずは巻末のパスコードを使ってオンラインテストにアクセスし、EQを診断してみていただきたい。

庄子結
編集部庄子結のイチオシ詳細
「家族の幸せ」の経済学
「家族の幸せ」の経済学
山口慎太郎
光文社
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「家族の幸せ」の経済学
「家族の幸せ」の経済学
著者
山口慎太郎
出版社
光文社
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多くの人が経験したり、日常的に見聞きしたりするものだからでしょうか。結婚や子育て、すなわち「家族の幸せ」にまつわる領域には、「神話」的なものが流布しがちだと思いませんか? 本書では、最新のエビデンスを用いて「家族の幸せ」の「神話」に切り込んでいきます。

本書のポイントは、データを無機質に紹介するのでなく、そこから得られる教訓を示唆したり、政策の提案につなげたりしている点。低出生体重児に関するデータの項では電車で妊婦さんに席を譲ることの意義に言及されますし、「育休の経済学」の章では「お母さんの就業と子どもの発達を考えるならば、育休よりも保育園の充実にお金を使うべき(P137)」という結論が導き出されます。データを知って「はい、終わり」ではなく、読者の思考をその先へと導いてくれるのです。

どこかで聞きかじった噂や、自分が育ってきた環境でのみ通用するルールを盲信するのではなく、ちょっと立ち止まって考えたり、疑いの目を持って見たりすることを忘れないようにしたい――そう思わせてくれる一冊でした。

熊倉沙希子
編集部熊倉沙希子のイチオシ詳細
三つ編み
三つ編み
レティシア・コロンバニ,齋藤可津子(訳)
早川書房
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三つ編み
三つ編み
著者
レティシア・コロンバニ 齋藤可津子(訳)
出版社
早川書房
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最近、おもしろい小説を読みましたか?
フライヤーからの最新のおすすめは、本書『三つ編み』です。
フランスで100万部突破、邦訳書はいま「直木賞より売れる」(!)と評判の「新井賞」を受賞した作品です。

本書は、なんといっても読後感がいいんです。
物語では、インド、イタリア、カナダに住む、3人の女性たちの人生が順番に語られます。彼女たちはそれぞれに、社会からの抑圧や苦しい運命に直面します。読みながら心の中で応援せずにはいられません。けれど、「屈しない」「あきらめない」彼女たちの姿に、こちらがいつのまにか励まされ、強さを分けてもらったような気持ちになるのです。社会の中で弱い立場にあるとき、闘う相手は何なのか、守るべきものは何なのか、そんなところまで読み手の思いをみちびいてくれるでしょう。

そしてもちろん、筋書もいいんです。
タイトルの「三つ編み」とは、3つの人生を比喩的に表しているだけではありません。美しい「髪」が、まるで天からの恩恵のように、重なるはずのない3つの人生をたぐりよせます。著者はもともと映画監督、脚本家として活躍していた方だそうで、このあたりの展開の上手さはさもありなんと思わされます。

少しでも気になった方は、ぜひ要約からチェックしてみてくださいね!!

石渡翔
編集部石渡翔のイチオシ詳細
ラディカルズ
ラディカルズ
ジェイミー・バートレット,中村雅子(訳)
双葉社
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ラディカルズ
ラディカルズ
著者
ジェイミー・バートレット 中村雅子(訳)
出版社
双葉社
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「すでに起こっている未来を探せ」と唱えたのは、かの有名なピーター・ドラッカー氏ですが、実際どこで「未来」は起こっているのでしょうか。「成長著しいが、影響範囲がまだ限定的な領域」というのが、ひとつの解としてよく挙げられます。ですが「ラディカルズ」、すなわち「過激な人たち」の活動を通してしか、見えてこない未来もある――そう感じさせられた一冊でした。

本書にはさまざまな領域における「過激な人たち」が出てきます。「不死の人間」をめざす大統領候補、よりよい人生のために幻覚剤LSDを真剣に研究する人びと、ブロックチェーンを用いて仮想空間上に独立国家を築く女性……。私たちの「当たり前」を否定し、ともすれば異常な行動を取る「ラディカルズ」に対し、社会の目線はけっして優しいものではありません。それでも彼らはめげることなく、自らの信念を貫き通すため、行動することを諦めないのです。

正直に言うと、ここで取り上げられている事例のすべてが、やがて新しい「当たり前」になるとは思いません。大部分は「こんな変わった人もいたんだな」と、いつか忘れ去られてしまうのがオチでしょう。ですがかつて「バカげた過激思想」とされていたものが、いまの私たちにとっての「当たり前」になったという事例も、本当に数え切れないぐらいあるのです。

10年後、20年後、あるいは30年後に本書を読み返したとき、はたしていくつの事例がそのときも「ラディカル」に映るのか、いまから想像してみるとおもしろいのではないでしょうか。

公開日:2019/10/01
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