【編集部のイチオシ10月号】
人生の扉を開くマジックに出合えるか
スタンフォードの脳外科医から学んだ「マインドフルネス」の真実


「要約の達人が選ぶ、今月のイチオシ!」では、フライヤー編集部メンバーが毎月持ち回りで、「イチオシ」を紹介していきます。
今回ピックアップしたのは、マインドフルネスの実践を促し、本来の自分の力を発揮させてくれる本です。マインドフルネスとは、「いま、この瞬間」に集中している状態を意味します。判断を手放して自他を観察することで、気づきの力を発揮する技術でもあります。
「マインドフルネスの習慣をつけたいけれど実践が難しい」「ネガティブな感情についとらわれてしまう」。そんな方に「人生を変えるマジック」をお伝えします。

スタンフォードの脳外科医の人生を変えた「最強のマジック」とは?


こんな人生があるのだろうか。『スタンフォードの脳外科医が教わった 人生の扉を開く最強のマジック』(プレジデント社)は、涙なしには読めない、著者の実話に基づいた一冊です。
貧困な家庭に育ち、家族の世話に疲れていた少年時代の著者・ジム。あるときマジック用品店にて、人生を変えるマジックを知る女性ルースに出会います。彼女から6週間かけてマジックを学んだジムは、心が癒され、医者になるという夢に向かっていく。順調に脳外科医としてのキャリアを築いていったジムでしたが、思いがけない事態に遭遇し、富と成功を一気に失うことに。その喪失により、いちばん大切なマジックを明らかにする旅が始まっていきます――。
読者は著者の半生をたどりながら、「マインドフルネス」と「ビジュアライゼーション」を学ぶことができます。そう、ここでの「最強のマジック」とはマインドフルネスに至るための方法なのです。
印象的だったのは、マインドフルネスに至るまでのステップ「心を開く」がいかに難しいかということでした。その前のステップである、頭の中の声をとめることにも一苦労。なぜなら、心の余裕をなくしかけたとき、脳内ではこんな声がするからです。自分は何か欠けているのではないか。期待に応えられないのではないか。これらは過去によってつくられた「雑音」であるのに、まるで自分自身の声のように聞こえてしまうのです。
それでも、本書を読むと、心の声が静まり、心を開けるようになると信じることができます。それは、ルースの教えが、いま私自身が自己を肯定できるように応援してくれている人の答えと非常に似ていたからです。その人は、ジムよりも困難といっていい幼少期を過ごしてきました。最も身近な大人から愛情を受けることが難しくとも、小学生の頃から周りに影響されず落ち着くための方法を自学していったそうです。ほかの大人から注がれた愛や関心をキャッチし、「最強のマジック」を体得して、いまは周りの人に伝える側にいるのでしょう。ジムにとってのルースのような存在に対する感謝の念がわきあがってきました。
本書を読み終わる頃には、いちばん大切なマジックの正体がわかります。そのとき人生の扉を開くカギを得られるはずです。
人生の「苦しみ」から解放されるには?


マインドフルネスへのトレーニングをしようと思っても、そこに至るまでに、自分の中の苦しみや生きづらさと折り合いをつけることに、難しさを感じる人もいるのではないでしょうか。その苦しみを受け入れ、本来の可能性を取り戻すためにはどうしたらいいのか? その問いに画期的な解決策を提示してくれるのが、『無(最高の状態)』(クロスメディア・パブリッシング)です。
著者の鈴木祐氏は、10万本以上の科学論文を読破し、ベストセラーを生み出してきた新進気鋭のサイエンスライターです。本書では、誰もがもつ歪んだ行動・思考パターンを特定し、苦しみを受け入れて無我の境地をめざすための方法が、わかりやすく示されています。その内容は、神経科学や脳科学の研究、禅の教えに基づいていて納得感大です。
私たちの苦しみをこじらせる原因は、「一の矢=痛み」が生じたときに、「二の矢=苦しみ」が突き刺さってくることだそうです。「一の矢」は避けられない現実ですが、そこに「現実への抵抗」が加わることで「二の矢」が生まれます。つまり、苦しみのメカニズムは「苦しみ=痛み×抵抗」という式で表せます。ならば私たちが取るべき対策は、現実に対して積極的に「降伏」することだと、降伏のポジティブな意味を学ぶことができるのです。
こうして自分を受容していくことで、心を開きやすくなり、マインドフルネスへの道を踏み出せるのではないでしょうか。
いかがだったでしょうか。今度こそマインドフルネスを実践したい方におすすめしたい2冊のご紹介でした。