「20年以上の取り組みすべてが間違いだった」ハリガネロックの後悔と反省が詰まった『芸人迷子』
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ほんをうえるプロジェクト
芸人迷子
芸人迷子
著者
ユウキロック/著
出版社
扶桑社
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一日目の新人であっても先輩のフォローなくお客様の前に立ち、仕事の成果はその場の反応として瞬時に自分に返ってくる。まったくの他人から頼んでもいないのに批評をされる。毎日がむしゃらに働いても収入がほぼゼロのことも珍しくなく、長く続けたからといって状況がよくなるとは限らない。活躍できるのは実力と運を持ち合わせたほんの一握りの人だけ…。芸能界とは外から見ていても本当にシビアな世界です。元・漫才コンビ「ハリガネロック」のボケ担当、ユウキロックさんが初の著書『芸人迷子』で赤裸々につづったのも、そんな厳しい環境でのつらい日々でした。

「ハリガネロック」は1995年の結成から2014年の解散まで、数々の賞レースで優秀な成績を収め、ネタ番組やライブシーンで高い評価を得る一方、そこから一歩先に進むことができず「売れた」という実感をもてずに舞台から去っていきました。悲願だった「M-1グランプリ優勝」も叶わないまま。中川家やケンドーコバヤシなど、次々にブレイクを果たしていく同期の背中を見ながら、ユウキロックさんは自身の芸能生活をこう振り返ります。「俺の間違い。20年以上の取り組みすべてが間違いだった」。そしてその20年の迷走録は、こんな言葉で始まります。「書くのが辛い。思い出すのが辛い。そこに対して自分に向き合うことが本当に辛い。でも、俺はもう逃げない」。

本書の核となるのは何と言っても「M-1グランプリ」の存在。漫才師ならだれもがその頂点を目指す賞レースに「ハリガネロック」はいかにして挑んだか。そしてなぜ優勝を手にすることができなかったのか。大会に向けて審査基準や方法を徹底的に分析し、より高得点を得られるよう戦略的にネタを手直ししていく過程、そしてライバルたちが勝ち上がっていく様子が臨場感たっぷりに語られています。漫才が好き、漫才で成功したいという気持ちがとてつもなく純粋で、そのパワーだけで突き進んでいく文章はもつれながら、前後しながら、決して「美しくまとまっている」とは言い難いのですが、これこそがリアルだと感じさせてくれる強さがあります。

人が失敗して、落ち込んで、立ち直るまでの過程をこんなにも生々しい言葉で知る機会はほとんどないのではないでしょうか。多くの人なるべく隠したがる部分を、本書では潔いほどストレートにさらけ出しています。仕事についての失敗と後悔と反省をこんなにもストレートに綴られると、読んでいるだけで胸が締め付けられるようです。同時に自分自身はここまでの確固たる目標を持って働いているか?絶対に負けたくないライバルはいるか?今日の仕事ぶりを自分でどう評価しているか?とふと考えてしまいました。単なるタレント本ではなく、目標の前にくじけそうな人、くじけてしまった人、情熱を忘れてしまった人、たくさんの大人たちの心を熱くする1冊だと思います。

ほんをうえるプロジェクト 長澤麻央

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公開日:2017/08/04
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