

「職場に苦手な人がいて憂鬱……」と悩んでいる人は多いもの。そんな人たちと自然体で付き合うにはどうしたらいいでしょうか? 本記事では『話し方すべて』(かんき出版)の著者・桐生稔さんが、苦手な人・嫌いな人とのコミュニケーションのコツをお伝えします。
「人の悩みの9割は人間関係によるもの」。
そんな言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか?そしてそのほとんどが、職場の人間関係であるということも――。
イライラしている上司、ダメ出ししてくる先輩、変にいじってくる同僚、言うことを聞かない後輩など、社内には色んな人がいます。
また、やたらとマウントを取ってくる人、陰口や噂話が好きな人、無表情で不愛想な人などが混在しているのが職場です。
そう考えると、職場に一人や二人、苦手な人や嫌いな人がいてもおかしくありません。いや、むしろ普通のことなのです。

ところが、その一人二人に振りまわされ、1日中気が滅入ったり、嫌な思いが消えなかったり、仕事がはかどらなかったり。最悪の場合、体調を崩す人もいます。
これは、他人の人生を生かされているようなもので、本当にもったいないこと。過ごしやすい幸せな職場環境を手に入れるには、苦手な人や嫌いな人との付き合い方を学ぶことが大切です。
今回の記事では、これまで10万人にサポートしてきたノウハウをもとに、職場の苦手な人や嫌いな人と自然に話せる2つのポイントをお届けします。
人間関係に疲れている人に、必ずすすめていることがあります。それは、「バウンダリー」という概念です。
バウンダリーとは、心理学で「自分と他者を区別する境界線」のことを言います。すごく親切な人、自分にとってなんの害もない人に対して「あの人嫌い!!」と思うことはないですよね。
あなたが「苦手」「嫌い」と感じる人は、あなたに危害を加えてくる人ではないでしょうか。そういった人とは真っ白のチョークで線を引くかのごとく、ハッキリ境界線を設けて積極的に会話に付き合わないことです。
境界線がうまく引けないと、陰口を強要されたり、言われる筋合いがないことまで言われたり、無理難題を押し付けられたり、危害が増大するからです。つまり「過干渉」といって、他者が侵入してくる状態になります。
そうすると危害を与える人に、いちいち時間を使わなくてはいけません。ですが、あなたが時間を使うべき人はきっと他にいます。

といっても、同じ職場なら無視するわけにもいかないですよね。
そこで具体的なアクションは以下のとおりです。
・陰口が好きな人がいたら聞き流す
・噂話が好きな人がいたら「そうなんですね」と受け流す
・「〇〇さんって基本顔色悪いよね(笑)」と小ばかにされたら、「かもしれないですね」と軽くあしらう
・マウントを取ってくる人には「すごいですね」と返し、放っておく
・イライラしている人に対しては、イライラに付き合わず、「何を指摘しているのか」という事実だけを確認する
・意見が合わない人とは、怒りをぶつけ合うことなく、意見が合わないままでよいか、ゴールをすり合わせるか、妥協し合える部分があるかを冷静に見極める
肝心なのは感情をぶつけ合わないことで、「心の境界線」はそのためにあります。
「自然に話せるコツ」というのは、苦手な人や嫌いな人と上手に話すことではなく、「自分が自然体でいられるコツ」のこと。そのためには、全員とうまくやる必要はないと決断することがスタートなのです。
では、直属の上司や、一緒に仕事をしなければいけない相手など、積極的に会話をしなければいけない人にはどんなアクションをすべきでしょうか?
2つ目のポイントは、レベルの低い行動からアタックする「系統的脱感作法(けいとうてきだつかんさほう)」です。
精神科医ジョゼフ・ウォルピ氏が提唱した行動療法の一つで、簡単にいうと、恐怖を感じるものに対して、段階的に抜け出していく方法です。
例えば、泳げない人は、まずは洗面器に水を入れて顔をつけるところから始めて、慣れてきたら足を水につけて、次に肩までつけて、浮き輪を使って泳ぎ、最終的には自力で泳ぐ。
こうやって階層表をつくって、レベルの低い順にアタックしていくことで不安を取り除いていくのです。
苦手な人、嫌いな人に対しても同じです。
例えば、会社の社長が苦手だったとしましょう。苦手というと言い過ぎかもしれませんが、萎縮してしまう場面もあると思います。そんな社長と突然会社の飲み会で隣の席になったら、何を話していいかパニックになります。
その突然の状態を回避すべく、普段から少しずつ慣れていくのが系統的脱感作法です。

まずは社内で向こうから社長が歩いてくるのがわかったら、会わないように通路変更したりせず、とりあえず挨拶だけはします。
もし遠目に社長がいることがわかったら、社長は気づかないかもしれませんがとにかく会釈だけはしてみます。エレベーターでバッタリ会ったら、「おつかれさまです」とひと声かけてみます。できればニコっとしてみます。
社長も参加する会議なら、できるだけ近くに座ってみます。会議で発言するときは、社長にチラッとアイコンタクトをしてみます。慣れてきたから会議の前後で少し社長と雑談してみます。それもほんの1、2分です。
これを行った上で、飲み会の席で社長が隣に座ったらどうでしょう。随分話しやすくなるのではないでしょうか。
段階を登っていくイメージでレベルの低い行動からクリアしていくと、徐々に自分の警戒心が薄れていきます。
そして、もう一ついいことがあります。「単純接触効果」です。
単純接触効果とは、繰り返し見たり会ったり、接触する回数が増えるほど、親しみや親近感を感じるという効力です。
社長が自分に対して親近感を感じてくれたらどうでしょうか。自分に危害を加えることが減るのではないでしょうか。その危害が減少するほど、自然に会話ができる機会が増えるはずです。

まとめです。
人の悩みの9割は人間関係によるものなら、逆も真なり。それが解決できれば、人の悩みのほとんどが解消できるということです。
今回お伝えした、
(1)苦手な人・嫌いな人にハッキリ境界線を引くこと
(2)その結界を解く必要があるときは徐々にステップアップしていくこと
にトライして、ぜひ働きやすい人間関係を築いてください。


桐生稔(きりゅう みのる)
株式会社モチベーション&コミュニケーション代表取締役、日本能力開発推進協会メンタル心理カウンセラー、日本能力開発推進協会上級心理カウンセラー、一般社団法人日本声診断協会音声心理士
1978年生まれ。新潟県十日町市出身。2002年、大手人材派遣会社に入社。営業成績がドベで新卒3カ月で左遷されるが、そこから一念発起し、全国で売上達成率No.1を獲得。その後、音楽スクールに転職し、事業部長を務める。
2017年、社会人の伝わる話し方を向上すべく、株式会社モチベーション&コミュニケーションを設立。全国40都道府県で年間2,000回、伝わる話し方セミナー・研修を開催。セミナーや研修では、60分に20回以上笑いが起き、会場が盛り上がり、最後には衝撃的な感動が走る「心震わすメソッド」をお届けしている。
具体的で分かりやすいメソッドは評判を呼び、日本経済新聞、プレジデント、東洋経済ONLINE、Yahoo!ニュース等に掲載される。テレビ朝日「マッドマックスTV論破王』ではディベートの審査員も務める。
著書に、『雑談の一流、二流、三流』『説明の一流、二流、三流』(共に明日香出版社)、『「30秒で伝える」全技術「端的に話す」を完璧にマスターする会話の思考法』(KADOKAWA)、『緊張しない「最初のひと言」大全』(Clover出版)、『話し方の正解』(かんき出版)などがある。