【ビジネスパーソンのための 一生使える教養】
2000年前から時間は足りない!
明日からの仕事にちょっと前向きになれる名著3冊


最近「今日は充実していたな」と思ったのは、いつのことでしたか? 忙しい日々に流されて、「なんとなく」生きていることがデフォルト化していませんか?
「光陰矢のごとし」という言葉があります。
幼いころは、1日どころか45分程度の授業時間ですら、あまりに長く感じたものでした。
それがいつの間にか、1週間、1カ月、1年というまとまりで時が過ぎ去るようになりました。
時間は過去から未来に向けて一方向にしか進まないので、気づけばあらゆることがすぐに過去になってしまいます。
実は、遠い昔を生きた先人たちも同じようなことに悩んでいたのです。
フライヤーに蓄積されている「知」の名著から、社会や人生のヒントを探る新シリーズ。近寄りがたい古典的ベストセラーを、いまのあなたに活かしてみませんか? 名著の要約はその一歩を一緒に踏み出します。


古代ローマの哲人セネカは、いまから2000年ほど前に生きた人物ですが、そのころから「人々はいかに時間を無駄使いしているか」に頭を悩ませていました。そう思うと、「人生の無駄遣い」は人間の永遠のテーマと言えそうです。
人の一生は最初から短く儚いものなのではなく、「他人に時間を奪われて忙しくなっている」から、満ち足りた十分な長さに感じられないのです。誰が好きか嫌いかに一喜一憂し、他人のために苦労を重ね、人生が自分のものになっていない。不安定だから、しょっちゅう心変わりするし、退屈から逃げることもできない。
「過去を忘れ、現在をおろそかにし、未来を恐れる人たちは、きわめて短く、不安に満ちた、哀れな生涯を送る」
では私たちはどうすれば人生を豊かにしていけるのか。まずは、2000年の時を越えた哲学者の言葉に耳を傾けてみませんか。


人は生きがいを感じているとき、自分の命があったことに喜び、感謝する気持ちを心の底から抱くことができるに違いありません。『生きがいについて』の著者である神谷美恵子さんはその「生きがい感」を、「腹の底から湧き出る喜び」と表現しました。
みなさんはそれぞれにさまざまな人生を歩まれてきたと思いますが、立ち止まって振り返ると、そのような「喜び」をいつ、どんなときに得られたか、思い出すことができますか? それは、きっとあなたが「やりたいこと」につながっています。逆に、自分の足場が不安定になった瞬間を思い出すことはできますか? その経験をしてもなお、いまを生きているあなたは、自分の新しい「生きがい」に気づけているかもしれません。そうして自分の足下を振り返ってみることが、「腹の底から湧き出る喜び」に向けての第一歩です。
ハンセン病の療養所で患者たちに寄り添い続けた神谷氏は、どうすれば人は生きがいにたどりつけるのか、あたたかくやさしい言葉で綴っています。どんなに小さなものであっても、迷いを感じるそのたびに、ひもときたくなる一冊です。


生きがいをもつために考えたいのは、「我が人生を一体どう生きればよいのか」です。
2017年にマガジンハウス社からマンガ版が刊行されて、より多くの人の目にとまった『君たちはどう生きるか』。名編集者であった吉野源三郎氏の手による初版本が1937年に出てから、世代を超えて読み継がれている人生の書です。平和で喜び溢れる世の中を願い続けた吉野氏の思いが詰め込まれています。
「コペル」というあだ名で呼ばれる少年を主人公とするストーリーを追ううちに、ものの見方や社会の考え方、立派な人とは何か、人間として生きることの意味といったことが見えてきます。若者向けに書かれた平易な文章、構成によって、あたかもコペル君の人生を自分も生きているかのように読み進められることでしょう。
その先ではきっと、「どう生きていてよいのか」が見えてくるはずです。より豊かな人生は、コペル君と歩いて行った地点に花咲いているのです。
リベラルアーツの本は、なじみがないものも多く、近寄りがたいかもしれません。
でも、現代まで生き延びてきた「教養の言葉」たちには、私たちが生きていく意味に直結する、本質的な「人間」が描かれています。
フライヤーを使ってちょっとずつかじっていくところから、まずははじめてみませんか?