【ベストセラーのポイント解説】
できる人はちゃんと「聴いて」いる〔後篇〕
『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』

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石田翼
できる人はちゃんと「聴いて」いる〔後篇〕

「つまらないギャグを言う人は、大抵人の話を聞いていない」

「『アドバイスをしよう』と思って聞くと失敗する」

「孤独をいちばん感じるのは、『よいことが起こった』のに誰にも気づいてもらえないこと」

一つでも引っかかった気持ちになるなら、この本を手に取りましょう。

この記事では、本書の内容を適宜引用しながら、「聴くこと」の大切さと本書の魅力をお伝えできればと思います。

前篇の記事はこちら

「聴くこと」が変えること

filadendron / gettyimages

人生で一番話を聴いてもらえたと感じた場面を思い返してみましょう。

受け入れられてあたたかな気持ちになり、涙を流しそうになるほどうれしかったのではないでしょうか。そのあとしばらくは、どのようなことが起きてもがんばれそうだと感じませんでしたか?

「自分の話に耳を傾け、自分が親近感を抱く誰かが人生にいると、外の世界へ出て行って他の人と交流するときに安心していられる」、これを本書では「安全基地(セキュア・ベース)」(p.101)をつくることだと書きます。心理的安全性という言葉をよく耳にしますが、仕事の関係でも親しい間柄でも、自分が誰かの「安全基地」になるように行動できることは、とても大切な能力といえるでしょう。傾聴は、その最も重要なスキルなのです。

本書は、その具体的な事例をいくつか紹介しています。

もっとも生産性のあるチームは、メンバーの発言量がだいたい同じくらいになるそうです。この「会話での平等な話者交代」は、お互いに聴き合う環境ができていないと実現しません。そうした環境では総じて、「社会的感受性の平均値が高い」ようです。声のトーンや顔の表情など非言語的な手がかりをもとに、お互いの感情を直感的に読みとる能力に長けていたのです(p.231)。ただ言葉を聞いているだけではないのがわかります。

「聴き手が注意を向け続ければ、人は心の内を打ち明けてくれるでしょう」(p.449)。どれだけ仲のよかった友だちでも、少し離れてしまうと疎遠になることはよくあります。気にかけていることが必要十分に伝わっていれば、いつでも親しい関係に戻れます。

「よく『聴く』とは、相手の頭と心の中で何が起きているのかをわかろうとすること。そして、『あなたを気にかけているよ』と行動で示すことです」(p.86)。「誰かと『連絡を取り続ける』とは、その人が何を考えているかに耳を傾けるという行為以上の何物でもありません」(p.142)。こうしたことの積み重ねによって、人はあなたを「安全基地」と感じるのです。

人の話を聴いていると、「愛されたい」「目標がほしい」といった似たような悩みを、誰もが抱えているのだという理解につながる、と著者はいいます。「自分の視野の外側で展開する世界」に気づけるのです(p.459)。


あなたも「話を聴ける」ようになる!

AntonioGuillem / gettyimages

では、「優れた聴き手」はいったいどのようなことをしているのか。本書はもちろん、素晴らしいヒントをたくさん教えてくれます。これまでの話の裏返しで見えてくるものもあるかもしれません。

「もっとも優れた聴き手は、聴くことに意識を集中させ、聴くために他の感覚も動員します」

「ここでつかんだ『意味』が、創造性、共感、洞察、知識へとつながる扉を開きます」(p.71)

五感のすべてを使って、とにかく聴く。そうすれば「意味」をつかむことができる。もう少し具体的に見てみましょう。

心理学者のカール・ロジャーズは「アクティブ・リスニング(積極的傾聴)」という方法を提案しました。これはつまり、「受け入れるモードでいる」ことだと著者は書きます(p.149)。

「優れた聞き手なら、声色や非言語的なヒントに気づき、ひとつふたつ問いかけをして理解を深めたうえで、もっと繊細かつ具体的に反応できます」(p.151)。ここには五感をフル稼働して聴くことが表されています。少し調子が悪そう、いつもより鼻に手を当てる回数が多い、額に汗をかいている。いろんなことがサインになります。

「受け入れるモード」すなわち「受け止める対応」とは、自分の話にトピックをずらしていくのではなく、自分の意見をそっと押しつけるのでもなく、「真摯な好奇心」によって相手のことをたずねていくことです(p.302)。「私の経験だと……」などと、つい自分に引きつけたことを言ってしまいがちですし、「そんな対応は私は嫌だな」と感情的な答えを差し出してしまうこともよくあります。

そうではなく、「恋人とケンカしたって、どういうこと?」のように、会話のなかでの相手の視点を維持したままで、相手が自由に答えられるような問いかけをしていくことが大事である、と本書では述べられています。

自分の話に持っていくことは「ずらす対応」です。難しいのは、「動揺している人や悲嘆に暮れている人の話を聞いたとき、自分が相手の感情を苦痛に感じてしまうために、その問題を解決してあげようとしたり、安心させようと説得してしまうとき」にも、そうした「ずらす対応」が起きてしまうことだ、と著者は書きます。

あくまで、自力で解決策を見つけられるようにする。そのためには、「自分にも気持ちがわかる」「その問題についてどうすべきかを言う」「相手の心配事を矮小化する」「相手の強さを称賛する」「無理やりポジティブな視点や陳腐な言葉を使って違う見方をさせようとする」といったことを伝えてはいけないのです(pp.312-313)。

「自分にも経験があるからわかる」「大したことないよ」「あなたなら大丈夫」「この先起きるかもしれなかった悪いことを先取りしたと思えば」。私も言ったことがあります。反省しました。

優れた聴者は「間や沈黙を受け入れる」ともあります。「話し手が、とまったところから話を再開できる」ようにして、「考えをまとめるための時間と余白を相手のために確保すれば、やりとりからもっと多くを得られる」(p.401)のです。声をかけることだけが相手に寄り添うことではありません。



このように本書は、聴かないことがいかに危険か、聴くことで何が変わるかを教えてくれるだけでなく、どうすれば聴けるようになるのかまで身につけられる優れものです。

科学的な実験や具体的なシチュエーションがたくさん紹介されているので、納得感を得やすく、自分に引きつけて考えられることも特徴です。

たとえば、2倍速、3倍速再生のようなものに慣れると、普通の速度で話す相手の言葉に意識を集中させるのが難しくなることを示した実験には、思わずうならされました。「会話の中のわずかな陰影に気づいたり味わったりする能力も失われてしまいます」(p.375)と書かれており、恐怖すら覚えます。

私は本書を読んで、とても多くのことを振り返りましたし、自分の「傾聴の姿勢」を深く見直すきっかけにもなりました。みなさんにも、ぜひ「Listen」の世界に触れることを強くお勧めします。

LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる
LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる
ケイト・マーフィ 篠田真貴子(監訳)(その他) 松丸さとみ(訳)
日経BP
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LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる
LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる
著者
ケイト・マーフィ 篠田真貴子(監訳)(その他) 松丸さとみ(訳)
出版社
日経BP
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公開日:2022/03/22
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