なぜ、カフェのコーヒーは「高い」と思わないのか?
価格の心理学

未 読
価格の心理学
ジャンル
著者
リー・コールドウェル 武田玲子(訳)
出版社
日本実業出版社 出版社ページへ
定価
1,760円(税込)
出版日
2013年02月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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価格の心理学
なぜ、カフェのコーヒーは「高い」と思わないのか?
価格の心理学
著者
リー・コールドウェル 武田玲子(訳)
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定価
1,760円(税込)
出版日
2013年02月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
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レビュー

本書は、個々の商品やサービスに対してどのようにプライシング(値付け)したら最も適正な利益をあげられるか、架空の新商品「チョコレートポット」を軸に価格戦略について解説するものである。

要約者にとって印象的だったのは、「他人のお金」を使うとき、人は合理的で費用対効果の高い買い物をすることができるという話だ。たとえば、会社の費用で商品やサービスを購入するケースなどがそれにあたる。一方、自分のお金で購入するとなると、どんな商品かわからないまま購入しているのではないかといった心の葛藤によって判断が狂ってしまう。ここに、「購買心理学」と「行動経済学」という科学が登場する余地がある。

本書を読むと買い物という行為がいかに複雑なものか改めて驚かされる。たとえば「無料」は、無料だからそれ自体がありがたいのではなく、無料は購買者にとって考える(悩む)プロセスをひとつ減らしてくれるからこそ意味があるのだという。このように、この本は一買い手にとってもたくさんの示唆を与えてくれるだろう。

要約では多くの人がイメージを浮かべやすいエピソードを中心にまとめているが、本書はじつは本格的な価格戦略の教科書でもある。もし読者が商品開発や販売などプライシングに関わる仕事をしているのであれば、なおさら読まないという選択肢はないと思う。本書では、BtoCの商品のほかに、BtoBの会計サービス、コンサルティングのような無形の取引の価格戦略についてもしっかり解説されている。

ライター画像
しいたに

著者

リー・コールドウェル(Leigh Caldwell)
価格リサーチの専門家。認知・行動経済学者。数学者。18歳で数学の学位を首席で取る。1994年、価格リサーチのコンサルタント会社Inonを設立。行動経済額と心理学をベースに最適な価格を解析する。価格コンサルティングに従事するかたわら、ビジネス解説者としてBBC Newsを含む多数のメディアに頻繁に出演する。
*著者ブログ http://www.pricingrevolution.com/
*本書の参考サイト http://www.psyprice.com/

本書の要点

  • 要点
    1
    価格は、企業側の費用ではなく、顧客にとってのベネフィットを基準に設定する。
  • 要点
    2
    まず顧客の購入の理由と考えられるものをひとつずつ書き出してみる。それぞれの購入理由ごとに、異なる競合相手がいるし、顧客がそれぞれのニーズを満たすための選択肢も複数ある。
  • 要点
    3
    競合相手が変われば、戦う価格領域も異なる。競合相手の選択と、それに合わせたポジショニング次第では、まったく違う価格設定ができる。単価が最も高い競合相手に合わせてポジショニングができれば、理想的な価格設定が可能になる。

要約

【必読ポイント!】 価格とポジショニング

価格は状況次第

新しい商品やサービスに初めて出会ったとき、それが自分にとってどれぐらい価値があるのか判断するのは簡単ではない。そこで、過去の同じようなものと比較して、それを基準にしようとするだろう。

たとえば、遠く海外から来ている友人が、ふるさとのお酒を飲めるパブを近所で見つけたとする。その友人に一杯おごるとして、その金額はいくらと予想するだろうか。

ボトルからワイングラスに注がれて提供されたとしよう。するとワインを基準に560円と見当をつけるだろう。シャンパングラスに注がれると、980円かもしれない。それに対してハーフパイント(285ml)のジョッキ売りだと、おそらくビールを基準に280円が妥当と思うだろう。ショットグラス(25ml)で出てくると、リキュールと見なしてその量に280円支払うのも抵抗ないはずだ。容量に換算すれば価格には10倍以上の開きがある。

このように売り手側は、できるだけ高価な商品と類似しているように仕向けて、想定価格を操作する。

顧客にとってのベネフィット
AndreyPopov/gettyimages

価格を決めるときに考えるべきは、顧客にとってのベネフィット(便益としての価値)である。原価をベースに価格を考えても、それが適正価格とは限らない。

ベネフィットは、顧客が自社の商品やサービスを購入するときの理由となる。そこで、まず購入の理由と考えられるものをひとつずつ書き出してみよう。たとえばチョコレートティーという商品について、「特徴的な甘い味」「のどの渇きをいやす」「カフェインを摂取する」「仲間と一緒に楽しむ」などがあげられるだろう。ついで、それぞれの理由の根源的な動機を探っていく。甘さによって思い出が連想されたり、疲れがとれたり。

どんな価値も最終的には、「楽しさ」と「苦しさの回避」という2つの基本的な感情と、「時間」と「金銭」という2つの現実的な利便性から派生していることが見えてくる。

最適なポジショニングを考える

それぞれの購入理由ごとに、異なる競合相手がいるし、それぞれのニーズを満たすための選択肢も複数ある。競合相手が変われば、戦う価格領域も異なる。競合相手の選択と、それに合わせたポジショニング次第では、まったく違う価格を設定できる。

購入理由ごとに同じ価値を提供する商品やサービスをリストアップし、単価が最も高いものに合わせてポジショニングを考えれば、一番高い価格が設定できる。このような価値分析は、心理効果を利用した価格設定やマーケティングを理解するための基本になる。

先ほどのチョコレートティーの例でいえば、「のどの渇きをいやす」ためであれば家庭の水道水が競合相手になるかもしれない。「仲間と一緒に楽しむ」社交ツールとして考えるなら、カフェでコーヒーを飲むこと以外にも、パブでワインを楽しむ、映画館に出かけるといったことも含まれるので、より高いポジショニングが期待できるだろう。

顧客の価格イメージとは

市場調査の落とし穴

「顧客は自分の考えをわかっていないし、自分がわかっていることを言わないし、言ったとおりに実行しない」――これは、広告会社オグルヴィ・アンド・メイザーの創業者であるデイヴィット・オグルヴィが語った言葉である。

質問の仕方や質問場所を変えれば、調査に対する答えは簡単に変わる。市場調査でわかることのひとつは、質問の答えではなく、意見を変えることの簡単さなのだ。

潜在顧客の支払許容限度額を知り、抵抗なく支払う価格帯によってセグメンテーションをすることは、価格戦略上の重要な作業である。しかし、「この商品にいくら払いますか?」という直接的な質問はリスクが高い。相手は、価格を下げてもらおうという思いから、意識的に低い金額を答える。

こうした先入観や主観を排除するためには、できる限り実際の状況を再現しながら質問するように心がけるとよい。たとえば本人だったらどうするかではなく、友人だったらどうするかを聞く。そうすれば当事者の利害というバイアスがかからない。

98円戦略の理由
stickerside/gettyimages

一般的に価格は、98円、198円、180円など8や9、80で終わっていることが多い(註:原著では「99ペンス」だが日本語訳の本書では日本市場にあわせて表現が変更されている)。車の価格も330万円ではなく328万円に設定されていたりする。それによって売上に違いがあることは調査によって実証されているが、その理由について納得のいく心理的な説明がある。

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