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ChatGPTの時代に必要なのは、「問いのアイデア会議」だ

ChatGPTの時代に必要なのは、「問いのアイデア会議」だ

アイデアが溢れる会議の秘訣は「お題のデザイン」にあり!

インタビュー

「企画書を書かなきゃいけないけれど、良いアイデアが出てこない」 「アイデアの泉のようになりたいけれど、ネタをどう探せばいいのだろうか?」 こんな悩みを解決し、アイデアを考えることは誰でも気軽に楽しめることだと教えてくれるのが、『1日1アイデア』(KADOKAWA)です。

著者は「趣味がアイデア」という高橋晋平さん。おもちゃクリエーター、アイデア発想ファシリテーターという肩書を持ち、「∞プチプチ」をはじめとするヒット商品を数多く世に送り出しています。「アイデアの泉」のような場をつくるためのファシリテーションについて尋ねると「ヒントはカプセルトイにある」と言います。その真意とは? ChatGPTの時代に、よい問いを生み出すための秘訣をお聞きします。

ライター・松尾美里

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「心にぶっ刺さるもの」が1つでもあれば、人は変われる

── 『1日1アイデア』を執筆された背景は何でしたか。

もともと、Voicyの「高橋晋平の『1日1アイデア』」という番組でアイデアを語っていたので、ネタはかなり蓄積されていました。それを文章にして整理したいと思っていたところ、編集者の方が、1日1アイデアで365日分紹介する本はどうかと提案してくださり、そのスタイルで執筆しようとなりました。

本書で伝えたかったのは、「アイデアを考えるのは難しいことじゃなく、趣味のように楽しいもの」というメッセージ。このメッセージが伝わるよう、構成にはこだわりました。

事業のつくりかたや生活の知恵など、多様なトピックをあえてランダムに紹介したのも、その一環です。「第1章は仕事に関するアイデア」などとまとめると、「仕事に役立てたいから仕事の章だけ読もう」となりますよね。バラバラに書かれていれば、多種多様なアイデアに出合えるような「セレンディピティ的な読み方」ができると思いました。また、意識的にさまざまな出来事やたとえ話を織りまぜています。読者がその内容に共感したり、疑いをもったりしながら読み進めて、アイデア発想力が自然と養われるような構成をめざしました。

僕はビジネス書の価値の1つは、読んだ人が何かしら変わるきっかけを得られることだと思っています。1つでも心にぶっ刺さる言葉や、「やってみたらこう変わった!」というものが見つかったら嬉しいし、読者それぞれの運命の1ページを見つけてほしい。そんな思いで執筆しました。

1日1アイデア
1日1アイデア
高橋晋平
KADOKAWA
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1日1アイデア
1日1アイデア
著者
高橋晋平
出版社
KADOKAWA
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よいアイデアは「記憶に焼きつくアイデア」

── 高橋さんは『1日1アイデア』やVoicyでも、多種多様な本を紹介してくださっています。ご自身の人生や価値観に影響を与えた本について教えていただけますか。

1冊目は、仕事で非常に影響を受けた大好きな本、『アイデアのちから』です。

著者は、よいアイデアは「記憶に焼きつくアイデア」だと表現しています。記憶に焼きついたとしたら、その人は決して忘れないし、何らかのタイミングで行動に駆り立てられます。「あの本あったな」と覚えているから、書店でその本を見て購入するというように。

では記憶に焼きつくアイデアの条件とは何か。著者は、「単純明快である」「意外性がある」「具体的である」「信頼性がある」「感情に訴える」「物語性がある」の6つにまとめています。これはアイデアを選ぶ際の基準にもなります。

特に「単純明快である」と「意外性がある」は、色々なシーンで応用できます。商品開発でもSNS発信でも話題になるのは、趣旨が一言でわかり、かつ「その手があったか!」と思わせるものです。シリーズ累計820万部を突破した「うんこドリル」は、まさにその好例でしょう。

アイデアのちから
アイデアのちから
チップ・ハース ダン・ハース 飯岡美紀(訳)
日経BP
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アイデアのちから
アイデアのちから
著者
チップ・ハース ダン・ハース 飯岡美紀(訳)
出版社
日経BP
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次に影響を受けた本といえば、サイエンスライター鈴木祐さんの『最高の体調』。まず、現代人に特有の不調を「文明病」と表現するなど、言葉選びが秀逸なんです。流れるような文章で、一冊の本を読むという旅が、こんなにも楽しいものなのかと気づかせてくれました。この本では、自然にふれることの大切さが書かれていて、自然と一体化したいという気持ちが生まれました。いまでは自然のなかでの散歩が習慣になっています。

最高の体調
最高の体調
鈴木祐
クロスメディア・パブリッシング
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最高の体調
最高の体調
著者
鈴木祐
出版社
クロスメディア・パブリッシング
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デール・カーネギーによるロングセラー『人を動かす』も、訳者の言葉選びがすばらしく、学びの多い一冊です。一例ですが、完全版では、「非難は、相手のプライドと自尊心を傷つけ、かえって反発を招く」といった趣旨の内容を、「蜂蜜が欲しければ、蜂の巣を蹴るな」という表現で端的に示しています。『1日1アイデア』の執筆で、言葉にこだわったのも、この本の影響が大きいですね。

新装版 人を動かす
新装版 人を動かす
デール・カーネギー,山口博(訳)
創元社
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新装版 人を動かす
新装版 人を動かす
著者
デール・カーネギー山口博(訳)
出版社
創元社
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アイデア発想ファシリテーターとして全国で講演やセミナーをおこなう高橋さん。

創造性は、感覚の問題ではなく、態度の問題である

── 発想力や企画力を高めたい方におすすめの本は何ですか。

アイデアの選び方や研ぎ澄まし方の指針としては、先ほど述べた『アイデアのちから』がおすすめです。一方、アイデアの発散という観点でおすすめといえば、『アイデアがあふれ出す不思議な12の対話』という本です。舞台は真夜中のおしゃれなバー。「アイデア」について考え続けている酒の強い女性と、ちょっと保守的な男性。ふたりが酒を酌み交わしながら「アイデア」の本質を明らかにしていくという内容です。

僕はこれまで、「アイデアとは」みたいな話は小難しい印象を与えるので雑談のトピックにはなりえないと思っていました。でも、この本で「アイデアについてバーで楽しく語り合えるのか」と、思い込みが覆されました。心に強く残ったのは、「アイデアなどの創造性は、感覚の問題ではなく、態度の問題である」といった内容です。これは僕自身が考えてきたこととまさに同じでした。人と会話するときも、何を話すか考えるのはアイデアの発想と同じ。それに自分ですべて思いつく必要もない。人に話すとまた新たなアイデアをもらえます。「アイデアを考えるのって楽しい」という態度が身についたら最強だなと改めて思いました。

アイデアがあふれ出す不思議な12の対話
アイデアがあふれ出す不思議な12の対話
キム・ハナ 清水知佐子(訳)
CCCメディアハウス
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アイデアがあふれ出す不思議な12の対話
アイデアがあふれ出す不思議な12の対話
著者
キム・ハナ 清水知佐子(訳)
出版社
CCCメディアハウス
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カプセルトイのすごさは、「アイデア無限増殖機」

── 高橋さんは様々なワークショップでファシリテーションをされています。職場の会議をアイデアがもっと出やすい場にしたいと考える方に向けて、ファシリテーションのアドバイスをいただけますか。

1つめのポイントは、ちょうどよいお題をデザインすることです。「何でもいいから新規事業を考えて」みたいなお題だと、めざすべき方向性がわからない。逆に、問いの対象がピンポイントすぎると広がりがでない。ちょうどよい制約条件のお題を設定できれば、勝手にアイデアが集まってきます。

参考にしてほしい好例は、カプセルトイのお題です。カプセルトイ (ガチャガチャ)と呼ばれる自販機で売られている商品アイデアの制約条件は次の3つです。1つは、カプセルに入るサイズであること。2つめは、数百円の値段に収まるものであること。そして3つめは、ひとりのお客さんが何度も回したくなるラインナップであること。この条件なら、値段とサイズをイメージしてラインナップを考えるだけなので誰でも簡単に商品アイデアをつくれます。まさに「アイデア無限増殖機」なんです。

ファシリテーションというと、会話のデザインが注目されがちですが、それよりも、ちょうどよいお題をデザインできるかどうかが、アイデアが出やすい場をつくれるかを大きく左右します。僕は大喜利が大好きですが、大喜利が面白くなるかどうかの決め手も、司会が誰かではなく、お題が答えやすいかどうかですよね。会議の参加者目線に立つと、もし発想が広がりにくいお題が出されたときは、「こういう条件はどうか?」と制約を提案してみるのも手です。

ファシリテーションの2つ目のポイントは、参加者一人一人が考えやすいスタンスを尊重することです。企画会議のファシリテーションというと、盛り上げなきゃと思うかもしれません。ですが、参加者全員がどんどん発言しなければいけないということはまったくありません。「もっと発言していこう!」はNGワードです。僕が尊敬するアイデアパーソンは、公開アイデア会議を開催した際、議論中に「ちょっといなくなりまーす」とミュートにするんです(笑)。そして終了間際にそっと現れて、めちゃめちゃよいアイデアをいって帰っていった。会議中も同様に、黙々とメモを取りながら熟考して最後に一つアイデアを出す人がいてもいい。ファシリテーターは、参加者一人一人との関係性を築いておき、その人たちの得意な参加スタンスを尊重することが大事です。

よい問いに出合いたいなら、「問いのアイデア会議」をやろう

── アイデアが出やすい場をつくるには、問いの力も求められると思います。ここ最近、ChatGPTのような生成AIが一気に日本でも広がり、的確に問いを投げかける力はますます大事になります。よい問いを思いつけるようになるにはどうしたらよいでしょうか。

たしかに今後は、AIを上手く使える人が価値ある人材といわれるようになり、問う力はますます重要になると思います。よい問いを増やすには、アイデア企画会議をする感覚で、「問いのアイデア会議」を実施することがおすすめです。

1人で問いを考えようとすると、誰も答えられなかったり結果が出にくかったりする。たとえば、数年前のIoTブームの時代には、上司から「ネットにつないで、サブスク課金ができるおもちゃを考えられないか?」といった問いが出されるシーンをよく耳にしました。この問いに真正面から答えようとするのは少し厳しい。

そんなとき、「問いについて整理したいんですが」と上司に相談できるコミュニケーション力がカギになります。「アナログのおもちゃだと制限があるので、ネット上の文章や動画コンテンツも広義の“おもちゃ”と見なしませんか?」などと、みんなが考えやすいように問いをずらしてみる。このような「問いのアイデア会議」をおすすめします。

── なるほど。問いのつくり手の立場に立つと、一人でよい問いをつくらなくてはと気負わずに、「もっとよい問いはない?」と周囲に相談するほうがいいのですね。

僕は、「問い」は、「Toy(おもちゃ)」であるとよく表現しています。問いを、こねくりまわして遊べるToyとしてとらえて、何人かで問いをつくることを楽しんでみてはいかがでしょうか。

よい問いとは、自分の欲求が実現し、行動できる問いです。自分や周囲の人が「ぜひ実現したい!」と思える問いをつくるには? 解けたときに自分も幸せになれる問いなのか? そんな基準をもっておくと、よい問いをつくりやすくなります。数学の難問も、多くの数学者が魅せられるような問いだからこそ、なんとかして解こうと数学者たちを駆り立てたのだと思います。

僕自身も、「これを考えた人、変態かな?」と思われるようなアイデアを考えたいという強い欲求があるからこそ、問いを考えることに夢中になるんです。「おもちゃをつくりたい」というより、「おもちゃになりたい」と思っている節があります。自分自身がおもちゃのように、みんなに楽しまれて笑いが生まれていくような、そんな仕事を続けられたら嬉しいですね。

1日1アイデア
1日1アイデア
高橋晋平
KADOKAWA
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1日1アイデア
1日1アイデア
著者
高橋晋平
出版社
KADOKAWA
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高橋晋平(たかはし しんぺい)

おもちゃクリエーター、アイデア発想ファシリテーター。秋田県生まれ。2004年に株式会社バンダイに入社。第1回日本おもちゃ大賞を受賞し、発売初年度にシリーズで国内外累計335万個を販売した「∞(むげん)プチプチ」など、玩具・ゲームの企画開発やマーケティングに携わる。2014年に株式会社ウサギを設立。製品や働き方、社会課題解決などを「遊び化」するプロであり、各種企業と事業を共同開発する。企画アイデアの発想セミナーやワークショップも全国で実施中。TEDxTokyoで行ったアイデア発想法のスピーチ動画は累計200万回再生。『1日1アイデア』(KADOKAWA)など著書多数。

文責:松尾美里(2023/04/10)