【要約の達人が選ぶ、今月のイチオシ!】
未来からあなたの〈いま〉を再設計する
2021年3月号


先が見えない不確実性の高い時代といわれます。コロナショックに直面し、1年先の状況すら予測するのが難しいなかで、「本当はこうあってほしい」という理想の未来を、現実に変えていくために何ができるのか。「未来を予測し、いまを再設計する力」を高めてくれるおすすめの本を紹介します。



「知っている人だけが悲劇を避けられる」
本書の帯の言葉にドキリとさせられた。南海トラフ地震に富士山噴火の恐れ。静岡県に住む身としては、こうした自然災害のリスクと隣り合わせといえる。しかも、新型コロナウイルスの流行のように、私たちの生活様式をガラリと変えてしまう出来事も起きる。過去からの積み上げによって論理的に未来を予測しても、それは想定外の出来事で覆されるのではないか――。
そんな感情を抱いていた私に、「未来予測をあきらめるべきではない」と語りかけてくれたのが『2040年の未来予測』だ。
現在の知識を使って、「未来にこんなことが起きるかもしれない」と仮説を立てる経験は、不測の事態が起きたときの対応力につながっていく。著者の成毛眞氏は、未来予測にとどまらず、「そうした未来を見据えてどんな一歩を踏み出せばいいのか?」を個々人が考えるための切り口も提示している。さらに読み進めていくと、5G・6Gなどのテクノロジーの加速度的な進展により、どんなことが可能になるのか、未来図が少しずつクリアになっていく。一方で、医療や年金、教育などの観点から、厳しい未来も突きつけられる。読み終える頃には、冷静に現状を観察しようと背中を押された。
未来予測は、「自分はどう行動するのか?」をシミュレーションし、いまをより良く生きるためのものではないかと感じた。「危機」を「機会」に変えるための冷静さと、具体的な知恵を授けてくれる大事な一冊だ。


『2040年の未来予測』からは、新たなテクノロジーによって社会がどう変わっていくのかを学ぶことができる。ただし、新たなテクノロジーを生み出す側にとっては、テクノロジーを社会に適合させる「社会実装」のプロセスを知ることが重要になってくる。ではテクノロジーを社会に普及させて、希望する未来を実現していくには、どうしたらいいのか。そこでおすすめしたいのが、社会実装を成功に導く原則を体系化した『未来を実装する』である。
SDGsやESG投資の流れを受けて、ビジネスの本流でも社会貢献が求められるようになってきたが、社会課題解決につながる製品やサービスの普及には、人々の共感や納得感を得ることが欠かせない。そこで脚光を浴びるようになったのがソーシャルセクターの考え方である。起業家支援に携わってきた著者の馬田隆明氏は、遠隔医療、マネーフォワード、加古川市の見守りカメラといった多様な事例を通して、どうすればソーシャルセクターの考え方をプロダクトやサービスに実装できるのかを解説してくれる。
自分のいまの仕事は、社会へのどんなインパクトにつながるのだろうか。本書は、そんな本質的な問いを投げかけてくれる。社会に与えるであろうインパクトに心から共感できるのか。その共感の輪を広げるために、微力ながらも自分には何ができるのか。「社会の変え方」のイノベーションというテーマは、奥行きが深いものなのだと気づく。自分の使命についても思いを馳せるように促してくれた本書を、より多くの方に手に取ってもらえたらと願う。