お金をドブに捨てないシステム開発の教科書
なぜ、要件定義がうまくいっても使えないシステムができてしまうのか?

未 読
お金をドブに捨てないシステム開発の教科書
ジャンル
著者
中川充
出版社
技術評論社
定価
1,880円 (税抜)
出版日
2016年01月25日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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お金をドブに捨てないシステム開発の教科書
お金をドブに捨てないシステム開発の教科書
なぜ、要件定義がうまくいっても使えないシステムができてしまうのか?
著者
中川充
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出版社
技術評論社
定価
1,880円 (税抜)
出版日
2016年01月25日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
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レビュー

60億円――これは、上場会社の2年間の有価証券報告書などを検索した著者が、「システム開発中止」による損失額として算定した額である。驚くべき数字だが、「鳴り物入りで始まった新システムの開発が途中で頓挫した」「気がつけば、当初の目的とはまるで違う、使い物にならないシステムができあがっていた」といった経験をした読者も多いのではないか。システム開発の中止や失敗によって、多くのお金がドブに捨てられているというのは、残念ながら実感値としてもその通りといえよう。

本書は、この状況に危機感を抱いた著者が、「どうしたらシステム開発がうまくいくのか?」を考え抜いて書き下ろしたものである。「システム開発の教科書」と銘打たれてはいるが、難解なシステムの専門書ではなく、むしろ門外漢の人間でもシステム開発にどのような姿勢で臨めばよいかがわかる内容となっている。

著者は、システム開発の肝は「業務改革」と「システム構想」の2つであるというシンプルな結論に行き着いた。そしてこの2つを成功させるには、システムの視点だけでは不十分で、経営・会計・業務・システムの4つの視点が不可欠だという。

本書を読めば、役に立つシステムを作るためには、経営者の当事者意識や、現場の積極的な関与がキーとなることが理解できるだろう。会社の新システム導入や業務改革プロジェクトが始まる前に、ぜひ熟読していただきたい。

北山 葵

著者

中川 充(なかがわ みつる)
システムコンサルタント・公認会計士。公認会計士中川充事務所代表。1969年生まれ。北海道出身。小樽商科大学商学部卒。システム・業務・会計を統合し、企業経営のしくみを改革することを得意とする。上場会社、中堅企業、ベンチャーへのシステム開発や業務改革のコンサルティング実績は全国50社以上。そのほか、システム選定委員やパッケージ製品の開発助言なども行う。

本書の要点

  • 要点
    1
    システム開発が失敗に終わるのは、システム構想が不十分だからである。「経営」「会計」「業務」「システム」の4つの視点で考えれば、「稼げるシステム」を作り出せる。
  • 要点
    2
    システム構想においては、経営者が明確な目的やビジョンを持ち、ぶれない基本方針を打ち出すべきである。基本方針にこそ経営者の「決意の重さ」が現れる。
  • 要点
    3
    システム開発を成功させるには、業務改革が不可欠である。業務を「キープ」「チェンジ」「ストップ」の3つに仕分けし、シンプルなしくみを再構築することで、改革が成功しやすくなる。

要約

なぜシステム開発はうまくいかないのか?

「稼げるシステム」と「稼げないシステム」の分かれ道

どの企業も、高い理想を掲げ、高額の経費をかけてシステム開発をスタートさせるものだ。しかし実際にはなかなか思い通りにはいかない。収益アップどころか、逆に競争力を落としてしまうケースもある。

お金をドブに捨てる結果になるのは、システム開発の典型的なパターンに陥ってしまっているからだと著者はいう。製造業N社を例にとろう。情報システム部は、生産本部での入力の負荷が増える旨の了承をとっていた。それなのに、導入が進んでから生産本部現場の猛反発に遭い、結局開発中止となった。

また、管理業務の電子化をめざした建設業F社では、現行業務を守る声に耳を傾けすぎた結果、数億円かけて現状とほとんど変わらないシステムをつくることになってしまった。つづいて小売業H社では、各店舗へのヒアリングが不十分だったせいで、システムが導入されてからクレームの嵐となり、追加開発で莫大な資金を費やすはめになったという。

カギは「システム構想」にあり
ismagilov/iStock/Thinkstock

3つの事例に共通するのは、開発の前に明確な「システム構想」がなかったという点だ。システム構想があいまいだと、途中で出てきた意見や不平不満によって簡単に方向性がぶれ、「稼げるシステム」からは遠ざかってしまう。

システム開発では要件定義が重要だといわれているが、要件定義は細かな要求を実現するためのものであり、大きな変更をする場面ではない。新しいシステムを導入する際は、構想の段階で、「現場の作業時間がどのくらい変わるのか」「作業はどの部署が担当するのか」というところまで検討し、「これなら導入できる」という確信が得られてから開発を始めるべきだ。

もちろん、開発に携わる人はみなシステム構想の重要性を理解している。しかし、複雑化した業務に対応するには、高機能で大規模なシステムが必要なため、情報システム部の知識や経験だけでは、すべてを網羅できないのである。

システム構想づくりを成功させるために、著者は「経営」「会計」「業務」「システム」の4つの視点で考えることを提案している。これらを押さえれば、システム視点に偏りがちな開発のバランスを取り、「稼げるシステム」を生み出せるのだ。要約では、「経営」「業務」の視点を取り上げる。

経営の視点――先んずれば人を制す

「攻め」をおろそかにしない
g-stockstudio/iStock/Thinkstock

優れたシステム構想は、「何をどこまですべきか」という目標やビジョンが明確なものだ。この基本方針がないと、開発は理想と現実の間で揺れ動き、結局現状の業務にのっとった代わり映えしないものになってしまう。

システムには、素早い意思決定や売上増を可能にする「攻め」の要素と、作業の効率化やコスト削減を実現する「守り」の要素がある。「稼げるシステム」は攻守ともに優れているものだが、特に「攻め」をおろそかにしないことが重要だ。

日本の従来型のシステムは「守り」に片寄ったものが多い。しかし、ビジネスの基本は売上を立てることであり、売上さえあれば、多少のコスト高は回収できる。だからこそ、システムを単なる道具ではなく収益を高めるための「武器」として考え、「攻め」と「守り」のバランスのとれた基本方針を打ち出すべきだ。自社に不足しているものや、強化すべきポイントを洗い出し、あとでぶれないような明確な方針を作成しよう。

基本方針で「決意の重さ」を伝える

システム構想の基本方針をつくるのは、ほかでもない経営者である。システムのことはわからないからと尻込みしてしまう経営者もいるが、細かい内容にまで踏み込む必要はない。今後の事業の方向性や、いつまでに何を達成するかといった事業戦略がしっかりしていれば、それがそのまま基本方針になるはずだ。「ライバル企業に勝つため、納期を30%短縮する」「業務改革による管理部門の人件費3割削減」というように、数字とその根拠を核にしたものが望ましい。

しかしもっとも大切なのは、基本方針が単なるお題目でなく、

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テクノロジー・IT
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出版日
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