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本書の要点

  • 横浜DeNAベイスターズは横浜スタジアムを友好的TOB(株式公開買い付け)を実施することにより、球団・球場の一体経営を実現し、経営の健全化を達成した。

  • プロ野球ビジネスのマーケット拡大のために、プロ野球観戦を「野球をつまみに友人や恋人、家族と楽しい時間を過ごす」ための場と再定義した。

  • 2016年の新ビジターユニフォームは企業名を外し「YOKOHAMA」の文字を配した。このユニフォームは反響を呼びベイスターズが親会社依存から脱却し、より地域に密着した横浜の球団となったことを強く印象付けた。

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ベイスターズはどう変わったか

球場は連日満員、チームは最下位争い

2012年シーズン、チームは「横浜DeNAベイスターズ」として初めての開幕をむかえた。その前年110万人だった年間来場者数は、2015年には約180万人にまで増えた。4年で65%増の実績だ。観客増に伴い、長年の赤字体質も改善されている。2011年には年間24億円の赤字であったが、2015年には年間3億円の赤字と75%も赤字が改善されたのである。

しかしこの間のチームの成績は低調そのものだった。2011年から5年間、ずっと5位と6位を繰り返し、低空飛行を続けているのだ。

経営者が「コントロールできる領域」に注力する

corachaos/iStock/Thinkstock

プロ野球において、試合の勝敗や天候は経営者がコントロールできない要素である。特に勝敗は来場した観客の満足度を大きく左右する重要なものだ。しかしプロ野球ではどんなに強いチームでも年間を通じて3回に1回は負けることになる。チームが負けるたびにリピーターを失いかねない状態といえる。

そこで球団経営者は、コントロール可能な領域に徹底的に注力する必要がある。球場を訪れたこと自体に満足できるような「ボールパーク」を目指すのが集客の王道といえる。試合に勝っても負けても、観客が100%の確率で楽しかった気持ちをもって帰ってもらうのが目標である。

勝敗や天候に左右されない空気をつくる

球団社長就任後、著者はまず、チームが弱いときでもベイスターズを応援していたのはどんな人たちかを知り、逆にどういう人たちがチームの低迷によって来場しなくなったのかを探った。初年度の新球団誕生特需の来場者、ハマスタ周辺や横浜市のマーケットについても調査・分析し、今後どういう層にアプローチすべきかを考えた。いわゆるマーケティングの始まりである。

だが、どんなに数字の検証だけを続けても、有効な戦略や戦術は生まれない。勘やひらめき、実績に裏打ちされたセンス、感性などのプラスアルファの要素が必要となる。

世の中に漂う空気を嗅ぎ取り、その先の空気をつくり出すことが重要なのである。

年間稼働率90%のハマスタ

2015年にはホーム球場の横浜スタジアム(通称ハマスタ)の年間稼働率は約90%に達していた。現状のキャパシティではこれ以上の大幅な観客動員増は見込めない。

人気を活かし、チケットの価格を上げて売上を伸ばす考え方もあるが、ファンの理解を得るのは難しい。球団グッズには売上を伸ばす余地があるが、ドラスティックな改善方法とはいえない。この状況を見据えて著者が準備していたのがハマスタを友好的TOB(株式公開買い付け)することによる、球団、球場の一体経営の実現である。

ハマスタの友好的TOBによる球団・球場の経営一体化

Kritchanut/iStock/Thinkstock

著者が球団球場の一体経営の必然性を認識していた理由は以下の3点である。

(1)ファンサービスのため

自分たちが野球をする場所でお客様にハード面、ソフト面ともに最高のファンサービスを提供するため。

(2)黒字経営のため

「全主催試合で満員でも赤字」という球団単体経営の限界を打破するため。

(3)チーム強化のため

選手の年俸アップや補強などにしっかり投資し、安定した強いチームにするための経営基盤・財政基盤を整えるため。

ハマスタは2015年、約4億円の黒字を計上している。同年のベイスターズが3億円の赤字なので単純計算で黒字化となる。健全経営が実現し、経営が安定すると、空気の好循環が生まれ、強く安定したチームをつくることができる。

この友好的TOBは2016年1月に成立した。これまでの賃貸から持ち家を購入したことになり、ベイスターズが「今後も横浜に根付いていきます」という強い意思表明でもある。

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顧客の空気を知る

感性・直感・ひらめき・創造力の前提としてのデータ分析

顧客の中に新しい空気をつくるには、まず顧客の心理や行動パターンのほか「今何を求めているのか」という本質的な欲求を知り、顧客を取り巻く空気を正しく理解することが必要だ。

その基礎となるのがデータである。

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要約公開日 2017.01.06
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