人を動かすマーケティングの新戦略
「行動デザイン」の教科書

未 読
 「行動デザイン」の教科書
ジャンル
著者
博報堂行動デザイン研究所 國田圭作
出版社
すばる舎
定価
2,750円(税込)
出版日
2016年08月19日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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 「行動デザイン」の教科書
人を動かすマーケティングの新戦略
「行動デザイン」の教科書
著者
博報堂行動デザイン研究所 國田圭作
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ジャンル
出版社
すばる舎
定価
2,750円(税込)
出版日
2016年08月19日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
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レビュー

右肩下がりの国内市場では、「他社より良い商品を作る」「広告を増やす」といった既存の戦略では商品が売れなくなっている。世の中に商品が溢れており、例え良い商品でも他社商品との差別化が難しく、買ってもらえないことが増えているからだ。

著者は、商品という「モノ」から発想するのではなく、人の「行動」から発想する「行動発想」が重要だと主張する。「行動デザイン」は、行動発想を基盤に、買う、使うなどの行動を誘発する仕掛けをつくるものだが、これは右肩下がりの市場の突破口となりうる戦略だ。

本書は、まず「行動デザイン」の基盤となる「行動発想」の考え方や用語を詳細に解説。「意識が高くても、実際の行動にはつながらない」「人の行動は、コスト意識やリスク感で左右される」など、人の行動の特性に関わる話題は、マーケティング等に関わっていない人にとっても興味深いものだろう。

「行動デザイン」のつくり方は、「行動のゴールを設定する」「ターゲット顧客を設定する」「行動観察から行動チャンスを発見する」「行動をつくり出す仕掛けを設計する」「全体のシナリオを構築し、実行する」「成果を評価し、PDCAを回す」という6つのステップで解説されており、簡潔で分かりやすい。タイトルどおり「教科書」と呼ぶのにふさわしく、特に商品・サービスの企画や戦略に携わるビジネスパーソンの手元にあると役立つに違いない。

ライター画像
河原レイカ

著者

博報堂行動デザイン研究所
行動デザイン研究所は(株)博報堂が「人を動かすマーケティング」を研究・実践する新組織として2013年に設立。国内外の膨大な事例から抽出した「人を動かす」知見を活用し、生活者のリアルな行動を促す「行動デザイン発想」のプランニングを支援している。「事業収益を生み出す顧客行動」をゴールとして明確化することで、クライアントのビジネス成果に直結したプランニングを提供することがミッション。

國田圭作(くにた けいさく)
博報堂行動デザイン研究所所長。1959年生まれ、1982年東京大学文学部卒業後、㈱博報堂に入社。以来、一貫してプロモーションの実務と研究に従事。2013年より現職。
大手ビールメーカー、大手自動車メーカーをはじめ、食品、飲料、化粧品、家電などのブランドマーケティング、商品開発、流通開発などのプロジェクトを手掛ける。
2006年に行われた第53回カンヌ国際広告祭の部門賞(プロモライオン)で審査員を務める。共著に『幸せの新しいものさし』(PHP研究所)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    モノ(商品・サービス)から捉える「モノ発想」ではなく、行動から捉える「行動発想」を持つことが、右肩下がりの市場でビジネスを伸ばすために必要である。
  • 要点
    2
    「思ったほど人は動かない」ことを前提に、意識レベルの変化よりも行動レベルの変化をダイレクトに作り出すのが「行動デザイン」の基本的な考え方である。
  • 要点
    3
    目に見えない人の意識を探るより、手掛かりとなる「行動」の事実から、人がなぜ、その行動をしたのかを探っていくほうが行動デザインを考える上で確実なアプローチといえる。

要約

「モノ」ではなく、「行動」から発想する

右肩下がりの市場と「モノ発想」

ここ30年くらいの間に、多くの商品やサービスで「ゆるやかな右肩下がりのグラフ」を描いて縮小しはじめている市場が少なくない。このような市場を回復基調にのせるには、どのように考えるべきなのか。

例えば「デジカメ市場が縮小しているのは、スマホのカメラが高性能になったから」や「日本酒市場が減っているのは酎ハイやワインがのびているから」という説は、代替品で説明する発想である。この発想は市場を「モノ=商品カテゴリー」で規定し、その中でマーケティングを考える「モノ発想」といえる。

ビールと紙オムツが一緒に売れる
Jupiterimages/Creatas/Thinkstock

イギリスのあるスーパーが顧客データを分析したところ、ビールと紙オムツを一緒に買う顧客が多い、という興味深い結果が出た。

この買い合わせの理由はつぎのようなものだ。赤ちゃんができるとお父さんは子育てを手伝う。すると仕事の後にパブに寄り道せず早く家に帰り、自宅でビールを飲むようになる。なので帰り道にスーパーでビールと紙オムツを一緒に購入するのである。

一見、無関係なモノが一人の生活行動の中では有機的につながっているのである。「モノ発想」で考えている限りはこうした「気づき」を得るのは難しいはずだ。

「行動」で市場を考える

私たちが「〇〇市場」と言うときには「モノ」で考える癖が染みついている。また売り場も卸問屋も監督官庁も統計データも全てモノ単位で構成されている。

ところが実際にモノを買うときには生活者はそこまで「モノ発想」なわけではない。例えば、ヨーグルトはサラダの代替品で、飲料の代替品、お菓子の代替品の時もある。ヨーグルト、シリアル、卵、スープはモノで考えるとそれぞれ異なるカテゴリーだが、実際にはどれも朝食に登場する食品である。これが「行動で市場を括り直す」新しいアプローチである。

右肩下がりの市場の処方箋はない?

モノで規定される市場が右肩上がりで伸びている時には、余計なことを考える必要はなかった。単純に市場の中の「シェア」を伸ばせばよかったからだ。自社に有利な市場を標的としてその中で戦えば勝率は高かった。

しかし市場が縮小すると細分化した市場ではビジネスが成立しなくなってしまう。いまのところ、この問題に対する「教科書的な処方箋」は存在しないのである。

右肩下がりの市場こそ「行動発想」に転換するチャンス

現状では「モノ発想」で考え続けること自体が大きなリスクになりつつある。なぜなら、もはやモノのなかに「解決策」がないからである。

例えばデジカメの品質やデザインを向上させ、価格を安くすることは「デジカメ市場」の中の競争では有効である。しかし自撮り写真を撮ってすぐにSNSでシェアする、今どきの「写真行動」の中では有効な解決策とはならない。

「行動」がモノとモノをつなげる
VioricaIonescu/iStock/Thinkstock

日本酒の場合で考えると、ワインが伸びているのは食生活の洋風化にともなう食中酒として日本酒よりワインが選ばれているのだ。食中酒とはモノの名称ではなく、「食事中に食事を楽しむために飲むお酒」という行動をとらえた名称である。この「食中酒行動」に対しては、例えばメニューに「脂の乗ったカルパッチョに合う吟醸酒」などの提案を行うことで、消費者に新しい選択肢が生まれるのである。

人の行動を誘発する「行動デザイン」の考え方

人は動かない

新商品の開発にあたって、海外のトレンドまで研究し、テストも重ねて、ネーミングもデザインも好評だった。しかし、いざ発売すると最初はまずまずだったが次第に失速し、残念な結果に終わる。このような「期待の新製品」は少なくない。なぜ思うように人は動かなかったのか。

じつは「そもそも人は動かない」ものなのだ。つまり、今の行動を変えたくないのである。これは認知心理学でも裏付けられている人間の性質である。なぜなら今の行動を変えると、今の行動をつづけるより、大きなエネルギーコストを必要とするからである。

リスクの緩和が行動につながる

コストには「お金」だけでなく、「手間」や「時間」も含まれる。また例えば「他人からケチだと思われる」などの印象も、コストに影響を与える。つまりリスクはすべて、コスト要因となる。従ってコストを節約するためにはリスクを低減させなくてはならないのだ。

アメリカに「1年間返品OK」を売りにして成長した靴の通販会社がある。初めて行動するときのリスク感は非常に大きいため、返品自由にすることでリスク感を緩和して、行動を喚起させる手法である。

このように意識と行動のギャップを前提に「思ったほど人は動かない」と認識し、意識レベルの変化よりも行動レベルの変化をダイレクトに作り出すのが「行動デザイン」の基本的な考え方である。

【必読ポイント!】 「行動デザイン」のつくり方

意識は見えないが、行動は見える

行動デザインの基本思想は「実際に行動しやすい、したくなる環境」を整備して行動を誘発することである。行動を基準に考える利点は、行動は意識と異なり客観的に目に見えることだ。

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