「偶然」と「運」の科学

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「偶然」と「運」の科学
ジャンル
著者
マイケル・ブルックス 水谷淳(訳)
出版社
SBクリエイティブ 出版社ページへ
定価
1,836円
出版日
2016年09月12日
評点(5点満点)
総合
3.5
明瞭性
3.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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レビュー

宇宙や生命、そして人類が誕生したのは必然的なことだったのだろうか。運が良い人と悪い人とは、なぜ人生経験において大きな開きが生じてしまうのか。確実な未来を見通せないことは、はたして不幸なことなのだろうか。

本書はそのような「偶然」や「運」にまつわるさまざまな謎を、第一線のサイエンスライターたちが、宇宙論や物理学、生命学、コンピュータ科学、数学や統計学などの知見を踏まえながら解き明かしたオムニバス集だ。

「偶然」はいたるところに潜んでいる。そもそも、宇宙や地球の成りたちからして、「偶然」や「運」とはけっして無関係ではない。「偶然」は生命が地球に生まれる前から、私たちに密接に関わりつづけている、身近でありながらも深遠なトピックなのだ。

なかでも、多くの現代人にとって特に印象的に映るのは、「偶然」に対して私たちがどのように向き合うべきかというテーマかもしれない。現代の生活は、不確実性をなるべく排除する方向で最適化しつつあるが、一方でそれは私たちの生き方を窮屈なものにしてしまう。

そのような世界のなかで、冒険心を失わずにいきいきと生きるためにはどうすればいいのか。本書は楽しく読める科学本でありながら、毎日をポジティブなものにしてくれるヒントも詰まっている。宇宙、世界、そして自分とじっくり向き合いたいときに、ぜひ読んでいただきたい一冊だ。

下良 果林

著者

マイケル・ブルックス (Michael Brooks)
『ニュー・サイエンティスト』誌の顧問。13 Things That Don’t Make Sense(『まだ科学で解けない13の謎』楡井浩一訳、草思社)、The Secret Anarchy of Science, Can We Travel Through Time? の著者。量子物理学の博士号を持っており、さまざまな新聞や雑誌に定期的に寄稿している。

本書の要点

  • 要点
    1
    複雑な生命の誕生には「ミトコンドリアの獲得」という偶然が関係している。
  • 要点
    2
    人の運の良し悪しは、その人の考え方や行動の仕方の結果である。
  • 要点
    3
    未来が不確実だからこそ、遺伝子の不確実性が、種の生存に大きな役割をはたしているのかもしれない。
  • 要点
    4
    一見ランダムのように思える人間の行動にも、特定のパターンを見出すことは可能である。
  • 要点
    5
    テクノロジーの発達は我々の生活を最適化し、不確実性を排除する。しかし思いもよらない偶然の出来事が、私たちの生活に面白さや幸せをもたらしている側面もある。

要約

あなたはラッキー!

ミトコンドリアの獲得は偶然だった
wir0man/iStock/Thinkstock

宇宙の始まりに関するもっとも有力なモデルによると、誕生したばかりの宇宙はインフラトン場というもので満たされており、その作用により指数関数的に膨張していったという。

ここで興味深いのは、そのインフラトン場はほぼ一様でありながらも、ある場所では密度がわずかに高く、ある場所ではわずかに低かったという点だ。もし完璧に一様であったなら、生命は誕生しなかったはずである。そういう意味では、偶然の量子ゆらぎこそが、生命を生みだした源であるといえる。

また、たとえ生命誕生が必然だったとしても、複雑な生命が生まれたのは紛れもなく「ミトコンドリアの獲得」という偶然によるものである。およそ20億年前、1個の単純な細胞がなぜか別の細胞の中に入り込んだことからすべては始まった。ミトコンドリアはDNAに大きな影響を与え、複雑な生命の進化へつながる遺伝的な原材料がもたらされた。複雑な生命は、ひとつの単純な細胞が別の細胞を取り込むという、たった一度の偶然によって出現したのだ。

人類の誕生は偶然が重なった結果である

ヒトを現在のヒトたらしめたのは、進化上の6つの偶然だ。

まず、(1)筋肉タンパク質をコードするMYH16という遺伝子のたった一度の変異によって、顎の筋肉が落ちた。これにより、頭蓋骨が大きく成長したと言われている。

次に、(2)脳の大型化が促された。この脳の大型化は、雪だるま式に起こっていったと考えられる。脳にいくらかの変化が起こったことで、それがさらに新たな変化を起こしたのだ。

また、(3)エネルギー効率が改良された。ものを考えるにはエネルギーを要する。脳への血流が増えたのはDNA領域の進化も関係しているが、それだけではない。ある遺伝子の変異によって、ヒトはチンパンジーと比べて脳の主要なエネルギー源であるグルコースを多く届けるようになった。

くわえて、(4)いわゆる「言語遺伝子」の変異が起きた。言語能力に関係するヒトのFOXP2という遺伝子は、チンパンジーやマウスなどのほとんどの種と似ているが、ヒトのFOXP2には、タンパク質を構成する単数のアミノ酸のうちのたった1個が変化するという変異が2度起こった。これにより、ヒトは話せるようになった。

さらに、(5)手の進歩だ。道具を使う際の器用な動きに欠かせない、ヒトの他の指と向かい合わせになった親指の進化には、あるDNA領域の変異が影響したとされている。

最後に、(6)消化についての遺伝的変異だ。唾液アミラーゼと呼ばれる消化酵素は、デンプンを糖に分解し消化器官で吸収するうえで重要なものである。これが農耕の開始に寄与した可能性がある。農耕の始まりは、ヒトのライフスタイルを一変させた。そしてそれが後の文化の爆発的進歩、ひいては現代生活へとつながっていったと考えられる。

【必読ポイント!】 「運が良い」人の特徴

考え方や行動ですべては変わる
grinvalds/iStock/Thinkstock

自分のことを「運が良い」「運が悪い」と考える人をそれぞれ集めて調査したところ、それぞれのグループには注目すべき共通点があった。自分のことを「運が良い」と考える人たちは、きまって正しいときに正しい場所におり、多くの機会を得て、楽しい生活を送っていた。一方、自分のことを「運が悪い」と捉える人たちは、失敗や苦しみばかりに遭い、けっして抜け出せないと感じていた。

このことから、実は運のよさというのは、考え方や行動の仕方の結果として起こるものではないだろうかと推測できた。そこで、試しにコーヒーショップの前の道に5ポンド紙幣を置き、「運が良い」男性と、「運が悪い」女性をそれぞれ店に呼んでみた。

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未 読
「偶然」と「運」の科学
ジャンル
サイエンス
著者
マイケル・ブルックス 水谷淳(訳)
出版社
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定価
1,836円
出版日
2016年09月12日
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