機会発見

生活者起点で市場をつくる
未読
機会発見
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生活者起点で市場をつくる
未読
機会発見
出版社
出版日
2016年09月25日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

これまでの枠組みを超えた発想をするためにはどうすればいいのか。

この普遍的な問いかけに対し、ここまで体系立てて解答を提示している書籍はけっして多くないだろう。著者は博報堂に勤めながら、これまで10年近くにわたって多くのプロジェクトに携わり、「いままでにない新しい製品・サービス・事業をつくるにはどうすればいいか?」を考えつづけてきた人物だ。

本書のタイトルにもなっている「機会発見」とは、その試行錯誤の末にたどり着いた、新しいモノを生み出すためのアプローチだ。そこでは「MECE」ではなく「枠外の視点」が、「定量情報」ではなく「定性情報」が、「分析」ではなく「統合」が重要視される。そして、人間理解とイノベーションをセットで捉え、生活者起点で市場をつくっていく。

従来、そうした能力は個人の思いつきや発想に依存するとされ、属人的で再現性が低いと見なされてきた。しかしたとえばアメリカのデザインスクールで、創造的な方法論の体系化が進んでいることからもわかるように、創造性は体系化して学習することが可能な、ひとつのれっきとした「能力」である。そして本書はその「能力」の性質を特定し、身につけるための方法を記した、きわめて質の高いマニュアルだ。ならば手にとらない理由はないだろう。何度も読みかえし、自らの血肉としていただきたい一冊である。

著者

岩嵜 博論(いわさき ひろのり)
株式会社博報堂
博報堂イノベーションデザイン ディレクター
ブランド・イノベーションデザイン局 イノベーションデザイン部 部長
博報堂において国内外のマーケティング戦略立案やブランドプロジェクトに携わった後、近年は生活者起点のイノベーションプロジェクトをリードしている。専門は、新製品・サービス開発、新規事業開発、UX戦略、ブランド戦略、マーケティング戦略、エスノグラフィ調査、プロセスファシリテーション。
国際基督教大学(ICU)教養学部卒業後、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了、イリノイ工科大学 Institute of Design 修士過程修了。
共著に『アイデアキャンプ――創造する時代の働き方』(NTT出版)、『FABに何が可能か――「つくりながら生きる」21世紀の野生の思考』(フィルムアート社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    機会発見とは、枠外の視点を探索し、見つけたものを統合・構造化することで、新たな市場の可能性を創出するためのアプローチだ。
  • 要点
    2
    機会発見における「機会」とは、いわば製品企画の「根拠」であり、「発想のジャンプ台」となるものである。
  • 要点
    3
    イノベーションの源泉は技術ではなく、生活者にとっての価値にある。
  • 要点
    4
    機会発見の具体的なステップは5つに分けられる。それらを順序通りに行なうか、同時進行させていくかを目的に応じて決めることができる。
  • 要点
    5
    機会発見プロジェクトでは、多様性をもった3~5人のチーム編成が最も望ましい。

要約

【必読ポイント!】 機会発見とはなにか

新しい市場を生みだすためのアプローチ
279photo/iStock/Thinkstock

機会発見とは、「枠外の視点を探索して、統合・構造化によって新しい市場の可能性を創出する」アプローチだ。残念ながら、MECEなどに代表されるような、既存の問題を分析的に解くアプローチが有効なケースはかぎられている。状況が明確で、データが取得しやすく、論理的意思決定によって大きな成果が見込めるときにしか、分析的アプローチは効果をうまく発揮できないのだ。

まだ存在しない新しい市場では、取り組むべき問題が不明確で、定量的なデータ収集が難しいことも少なくない。そうした場面において、機会発見アプローチは枠外の視点を探索し、定性情報を拾い集め、それらを統合的に操作することで、新しい市場を創造するための糸口を見出していく。

たしかに成熟化した市場においても、カイゼンを積み重ねることによって、「いまよりいいもの」を創りだすことは十分可能だろう。だが企業が大きく成長するためには、「いままでにないもの」、つまり革新的な製品・サービスの開発が急務である。そうしたとき、機会発見アプローチが役に立つのである。

発想のジャンプ台となる

機会発見における「機会」とは、これまでの常識にはない製品・サービス・事業を生み出すための「見立て」のことだ。そして、成熟市場において「事業領域の設定」と「製品の企画」の橋渡しとして、新しい機会を特定すること。それが機会発見である。

たとえば、今ではおなじみのノンアルコールビールも、「ビール製品といえばアルコール飲料である」というそれまでの常識を覆したものである。それを可能にさせたのは、「ビールの気分で飲めるノンアルコール飲料」という新しい機会を特定できたからに他ならない。

新しい機会を発見することは、新しい製品・サービス・事業を生み出す土台となる。機会とはいわば製品企画の「根拠」であり、「発想のジャンプ台」だ。ジャンプ台なき発想は、方向感が定まっていないため、レベルの低いものになりがちである。たとえば、単に「新しいビールを」という土台では、なんでもありになってしまい、うまくいく確率にバラつきがでてしまうだろう。「ビールの気分で飲めるノンアルコール飲料」というように、具体的に機会を特定するからこそ、不安定な市場でも安定した成果を求めることができるようになるというわけである。

くわえて、機会をきちんと特定しておけば、仮に製品の企画がうまくいかなくても、振り出しに戻ることなく、ふたたびその機会に立ち返って、製品企画をやり直すことができる。製品がうまくいくかどうかは、そもそも個別の事情に大きく左右されるものだ。確度の高い機会を捉えておけば、ふたたびその機会を土台にして別の製品を検討することができるようになる。

「技術」からではなく「生活者」から考える
Choreograph/iStock/Thinkstock

イノベーションという概念は日本に導入された際、「技術革新」と翻訳されていた。このことからもわかるように、イノベーションはこれまで、技術起点の文脈で語られることが多かった。だが近年、こうした状況が少しずつ変化してきており、イノベーションの源泉が「技術起点」から「生活者にとっての価値起点」へと移行しつつある。技術の進化が一定のレベルに達した結果、技術だけでは顧客にとっての価値創出に結びつかないケースが多いからだ。

実際、いま起きているイノベーションは、技術の革新性ではなく顧客体験の革新性を源泉としている。

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要約公開日 2017.03.17
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