ヒットの崩壊

未 読
ヒットの崩壊
ジャンル
著者
柴那典
出版社
定価
880円(税込)
出版日
2016年11月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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ヒットの崩壊
著者
柴那典
未 読
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定価
880円(税込)
出版日
2016年11月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
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レビュー

「最近のヒット曲って何?」と聞かれても、すぐに答えが思い浮かばない時代になった。シングルCDの売り上げランキングはAKB48が独占し、CDではなくダウンロード配信で音楽を買うのも当たり前になった。しかもそのダウンロード配信すらも、いまやストリーミング配信に取って代わられようとしている。

かつてはヒット曲の数々が時代を彩り、ヒットチャートを見れば、何が流行っているのか一目瞭然だった。しかし、今はシングルCDの売り上げ枚数を並べたランキングを見ても、それが何を示しているのか判然としない。流行歌の指標がどこにあるのかわからない。それが今の日本の音楽シーンの実情なのだ。

本書は、「CDが売れなくなった現在の状況は本当に『音楽不況』なのか?」という問いに始まり、10年代のヒットチャートに起きた変化とその原因、そして「ヒット曲」が必要なくなった状況を分析。さらに、日本の音楽シーンのこれからを論じている。

「モノ」から「体験」へと消費が移り変わった現在、かつての「ヒットの方程式」は成り立たなくなった。ただ、ヒットが生まれなくなったのは音楽の分野だけではない。「ヒットの崩壊」は、人々の価値観が根本的に変化したことでもたらされたと著者は分析している。そしてそれはおそらく正しい。

ヒットチャートが機能不全に陥った今、「ヒット」とは何を意味し、これからどうなっていくのか。今の時代を読み解くためのカギが満載の一冊である。音楽に興味がない人にとっても、十分に読む価値があるといえよう。

池田明季哉

著者

柴 那典 (しば とものり)
1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経て独立。雑誌、ウェブ、モバイルなど各方面にて編集とライティングを担当し、音楽やサブカルチャー分野を中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手がける。主な執筆媒体は「AERA」「ナタリー」「CINRA.NET」「MUSICA」「リアルサウンド」「ミュージック・マガジン」「婦人公論」など。「cakes」と「フジテレビオンデマンド」にてダイノジ・大谷ノブ彦との対談「心のベストテン」連載中。著書に『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)がある。
ブログ「日々の音色とことば」http://shiba710.hateblo.jp/
Twitter:@shiba710

本書の要点

  • 要点
    1
    CDの売り上げが流行と分断され、ヒットは目に見えづらい形に移行している。ソーシャルメディアの普及により「お茶の間」は消滅し、個々が自分の興味に没頭する「島宇宙化」が進んでいる。
  • 要点
    2
    「生の体験」が重視されるようになり、アーティストはCDの売り上げよりもライブで収益を上げている。その結果、より息の長い活動が可能になり、バンドもアイドルも長く生き残れる時代になった。
  • 要点
    3
    日本の音楽は多様性が魅力だ。今後の課題は、その多様性をどのように世界に伝えていくかである。

要約

【必読ポイント!】 「ヒット」なき時代

「音楽不況」は本当か?

「音楽が売れない」と言われ続けて20年近くが経つ。史上最もCDが売れた年である1998年(6074億)に比べ、2015年の音楽ソフトの生産金額はその40%(2544億円に過ぎない。つまり、この17年でおよそ3500億円が失われた計算になる。

しかし、アーティストたちが「生き残れない」時代になっているかというと、かならずしもそうではない。むしろ音楽不況が叫ばれるようになった00年代以降のほうが、アーティストが着実にキャリアを重ね、息の長い活動を続けられるようになっている。

10年代の音楽シーンは、アイドルもアーティストも当たり前のように「現役でキャリアを重ね、ステージに立ち続けられる」時代なのだ。

「CDバブル」だった90年代
Tanya Constantine/Blend Images/Thinkstock

90年代は、100万枚を超えるセールスを果たしたミリオンヒットが続々とあらわれ、音楽産業が最も好景気を謳歌していた時代だった。小さなライブハウスに立っていたバンドマンがある日突然スターとなり、訪れたブームに舞い上がる。そしてある日突然、波が引くようにそのブームが消滅する。90年代において、ヒットは一過性の熱狂でしかなく、「人気はいつまでも続かない」というのが当時の常識だった。

また、90年代には「ヒットの方程式」というものが存在した。ドラマのタイアップや音楽番組への出演を仕掛け、とにかくアーティストをテレビに頻繁に露出させる。そこで認知を高めて話題を作れば、CDが飛ぶように売れていく。そういう仕組みが90年代におけるメガヒットを生み出していた。

しかし現在、その方法論はもはや通用しなくなっている。多くの音楽関係者も、むしろ「90年代のCD売り上げが異常なだけだった」と口をそろえている。

バンドもアイドルもライブで稼ぐ

なぜ「音楽は売れない」のに「バンドもアイドルも生き残れる」時代になったのか。そこにはひとつのシンプルな解答がある。CDが売れなくても、ライブで収益を得ることができるようになったのだ。

音楽業界の構造は変わりつつある。縮小が続く音楽ソフト市場に比べ、ライブ・エンタテインメント市場は好況だ。10年代初頭から、動員数も売り上げも右肩上がりで拡大が続いている。SNSの普及により、そこでしか経験することのできない「生の体験」の価値が増しており、実力あるアーティストはむしろタフに活動を続けることが可能になったのだ。

「ヒット」の崩壊
ktsimage/iStock/Thinkstock

90年代のヒットがテレビでの露出による「刷り込み」でつくられていたのに対し、10年代はマスメディアの影響力に頼らずとも、アーティスト自らがファンに向けて情報を発信し、その濃密なコミュニティの中で盛り上がりを生むことができるようになった。

その一方、ヒット曲のあり方は大きく変わり、

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