「ポスト真実」時代のネットニュースの読み方

未 読
「ポスト真実」時代のネットニュースの読み方
ジャンル
著者
松林薫
出版社
定価
1,760円(税込)
出版日
2017年03月20日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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「ポスト真実」時代のネットニュースの読み方
「ポスト真実」時代のネットニュースの読み方
著者
松林薫
未 読
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定価
1,760円(税込)
出版日
2017年03月20日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
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おすすめポイント

ジャーナリズムは大きな転換点を迎えた。日本経済新聞の記者を務めていた著者は、「紙から電子への移行期」のさなか、ニュースのチェックにスマートフォンを活用する人が急増するのを目の当たりにした。かつては新聞やテレビが情報発信の大部分を担い、情報の流れは受け手への「一方通行」であった。しかし、SNSの発達もあって「双方向」の発信となり、ネットに配信された記事に読者がコメントをするなど、受け手の役割が大きく変化した。記事の内容に問題があれば批判が殺到し、逆に面白いとされる記事はどんどんシェアされていく。こうして報道に対する評価の可視化が進み、メディアは読者の反応を常に気にするようになった。

一方で、発信される情報の信頼性が大いに問題視されている。オックスフォード大学は、「真実がどうでもよくなった時代」を意味する「ポスト真実(POST TRUTH)」を「2016年の言葉」に選んだ。同年は、英国でのEU離脱の是非を問う国民投票や米大統領選で「フェイクニュース」が拡散され続けるという象徴的な1年だった。今や、サイトのチェック体制を強化するだけでなく、情報の受け手にもプロと同様の責任と情報リテラシーを求める時代が到来したといえよう。

本書には、ネットがもたらしたジャーナリズムの変化やネットニュースに接する際の注意点、ネット情報の高度な読み方・活用法などが体系的にまとめられている。玉石混淆のネットメディアから正しい情報を読み解くための「最前線」を知りたいのなら、この本を読まずにはいられない。

ライター画像
山崎裕介

著者

松林 薫(まつばやし かおる)
1973年、広島市生まれ。京都大学経済学部、同修士課程を修了し1999年に日本経済新聞社に入社。東京と大阪の経済部で、金融・証券、年金、少子化問題、エネルギー、財界などを担当。経済解説部で「経済教室」や「やさしい経済学」の編集も手がける。2014年10月に退社。2014年11月に株式会社報道イノベーション研究所を設立。2016年4月より関西大学総合情報学部特任教授(ネットジャーナリズム論)。著書に『新聞の正しい読み方──情報のプロはこう読んでいる!』(NTT出版)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    ユーザーは、SNSなどを利用して情報配信の一端を担うようになった。それが「フェイクニュース」の拡散要因にもつながっており、情報リテラシーの向上が求められている。
  • 要点
    2
    ネットでの情報発信は同じフォーマットで行われるため、発信者の区別がつきにくい。引用や転載が容易なネット情報は、事実とは異なる内容に変質することがある。
  • 要点
    3
    各メディアには強みと弱みがある。これらを組み合わせて活用し、弱点を補っていく「相互補完」の視点を要する。「これだけ押さえておけばよい」というメディアは存在しない。

要約

ネットとジャーナリズムの変化

一方通行から双方向へ

インターネットによってジャーナリズムのあり方は大きく変化した。パソコンがあれば、新聞やテレビと同じ規模のユーザーに向けて情報配信をすることが可能になり、輪転機やスタジオのような大がかりな設備を必要としなくなった。

そして、情報の流れは紙や電波による「一方通行」から、SNSによる「双方向」に変化した。記事がネットに配信されればSNSによって拡散され、ユーザーが内容についてレスポンスをする。もはやユーザーは単なる「受け手」ではなく、コンテンツの作成や流通、すなわち情報配信の一端を担っている。

その一方で、集めた情報の取捨選択や真偽の判断など、ジャーナリズムにおけるプロとしての責任やスキル、倫理観が、受け手にも求められる時代になった。2016年は、英国でのEU離脱の是非を問う国民投票や米大統領選といった重大な局面で、「フェイクニュース」と呼ばれるデマ記事が猛威をふるった。今後は、報道する側だけに限らず、受け手である市民も自覚をもって情報リテラシーの向上に努めていかなくてはならない。

報道と市民の関係
zakokor/iStock/Thinkstock

ジャーナリズムと世論の間には、ジャーナリズムが「世論を広める」、「世論を動かす」、「世論に動かされる」という3つの関係が存在する。インターネットは、マスメディアが世論を広めたり動かしたりする力を弱めた。その理由はマスメディアによる情報の独占が崩れたことにある。例えば、役所のプレスリリースは配布だけでなくネットに配信されることが多い。記者と同じタイミングで一般市民が情報を得られるようになり、自前のメディアがあればすぐに情報を広めることができる。

逆に、メディアが世論に動かされる側面は大幅に強まったといえる。市民がSNSを通してメディアに直接働きかけることが容易になり、メディアもSNSでの反応を常に意識するようになった。

こうした変化は、世論のチェックを受けて報道の信頼性が高まっていくという利点をもたらしてくれる。しかし、報道が市民を恐れて大衆迎合的になる危険性があり、この場合は報道するニュースの選択にまで影響が及ぶ。本来、報道する側は批判を浴びたからといって自粛するのではなく、なぜそういう報道が必要なのかを市民に説明しなければならない。一方で、市民には、自分たちの行動がメディアを動かしているという自覚のもとに、良い報道は支持し悪い報道は正していくという態度を醸成することが求められる。

【必読ポイント!】 ネット情報の注意点

情報の見た目と活字離れ
grinvalds/iStock/Thinkstock

インターネットという空間は、様々な情報の発信者を同じプラットフォームに並べた。これによって記事が同じフォーマットで発信され、発信者の違いがわかりにくくなっている。例えば、ネット上の記事を集めて掲載するキュレーションメディアの場合、新聞社が発信した記事でも、そのメディアが発信者であるかのように誤解されることが多い。特に物心ついたころにはネットが普及していた「デジタルネイティブ」の世代において、この傾向は顕著である。

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