本書の要点

  • 人生には「逃げなければいけない」局面がある。可能性がない戦いからは、何もかも失ってしまう前に撤退すべきだ。

  • 負ける経験をしていないと、敗北に向き合えない。若いうちに敗北をたくさん経験し、負けることに免疫力をつけておくべきだ。

  • 逃げる決断ができなければ、徹底的に損得勘定で考えてみよう。そうすれば、合理的な判断を下せるようになる。

  • 戦うか逃げるかを決めるためには、幸せの絶対的基準を持つ必要がある。幸せの絶対的基準が確立していないと、自分の生き方に対する判断を下すことができない。

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積極的逃走のすすめ

優先順位を見誤るな

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2016年、「逃げるは恥だが役に立つ」というテレビドラマが人気を集めた。この言葉はハンガリーのことわざで、直訳すると「恥ずかしい逃げ方だったとしても生き抜くことが大切」という意味だそうだ。現代社会においては、会社のために自分を追い込み続けた結果、死を選ぶ人が少なくない。そうしたニュースを見ると、多くの人が「なぜ、会社を辞めなかったのか」と感じるのではないだろうか。人は追い詰められると、思考力が低下する。その結果として、「逃げ出す」という選択肢が消えてしまうのだ。すると、現状に耐え続けるか、死を選ぶかという2択のなかからどちらかを選ばなければならないと思い込んでしまう。判断力が低下する前に命が最も大事だということを見定め、戦うか逃げるかを選んでほしい。命に限らず、本来大切にするべきものよりも、さほど重要でない仕事や人間関係を優先してしまうこともあるだろう。そうしたときには、優先順位を冷静に見極めるようにしたいものだ。

可能性がない戦いからは撤退せよ

人生には「逃げなければいけない」局面があり、その見極めを誤れば、再起不能になることもある。たとえば、会社の経営が傾いたときのことを考えてみよう。そのままだと倒産の可能性が高いとしても、多くの経営者は、立て直しのために多大なコストや時間をかけてしまう。しかし実は、いさぎよく諦めて会社を整理したほうが損害が少なくてすむケースも多い。あがけばあがくほど状況が悪化し、損失が拡大してしまうのだ。株式も同じで、損が出ると思ったら素早く損切りすることが重要である。そうでなければ、投じた資金以上の損失を出してしまうだろう。もちろんあきらめず粘り強く頑張ることも大切だし、逆転勝ちの可能性もないわけではない。しかし可能性がない戦いからは、何もかも失ってしまう前に撤退すべきだ。

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【必読ポイント!】「逃げる達人」になる

負けた原因と向き合え

誰しも、勝負を避けて通ることはできない。ライバル会社とのコンペやスポーツの試合などはもちろんのこと、仕事のノルマや学校のテスト、恋愛さえも勝負と呼べるだろう。すべての勝負に勝つことはできないのだから、誰でも負ける経験をすることになる。負けることにおいて最も重要なのは、「負けを素直に認めること」だ。「今回は調子が悪かった」「自分に不利な条件があった」「運が悪かった」などと、自分以外に負けの原因を求めてはならない。負けたことを素直に認め、負けた原因と向き合おう。さもないと、何度も同じパターンで負けることになりかねない。

一流の探検家の「退却する勇気」

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登山家や探検家は、生きて帰るために「逃げること」の大切さを熟知している。資金と時間をかけて準備して登頂に挑み、もう少しで頂上にたどり着けるとしても、「これ以上進んだら生きて帰れない」と感じたら撤退するのだ。これは、極めて高度な精神力が必要な逃げ方だと言えよう。アルピニストの野口健さんの例を紹介しよう。彼は25歳のとき、エベレスト登頂に挑んだ。エベレストに上るには、登山許可料が1万ドルかかる。彼はスペイン隊とともに書類を提出し、彼らに登山許可料を支払うことで費用を節約した。野口さんの体調はすこぶる良かった。標高8848メートルのエベレストに順調に登り続け、やがて標高8000メートルの最終キャンプに到着したという。しかし

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要約公開日 2018.10.13
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