大人が愉しむウイスキー入門

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大人が愉しむウイスキー入門
出版社
出版日
2019年01月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

芳醇な香り、美しい琥珀色。伝統を感じさせるラベル、そして複雑で豊かな味わい。ウイスキーというお酒の魅力は言葉にし尽くせない。だが、これら一つ一つの特徴にふれるだけでも、奥が深い、大人が楽しむリッチなお酒であることを再認識するだろう。

そんなウイスキーの市場は日本において、1980年代以降長らくダウントレンドにあった。今は再び盛り返しているが、その火付け役となったのは、ハイボールである。一方でウイスキーを作る側としては、市場展開を読んでの生産は至極難しい。急な増産や減産もまずできない。なぜなら、ウイスキーはつくり始めてから製品化されるまでに10年単位の時間がかかるからだ。普通10年といえば、他の多くの製品では流行り廃りが一巡する期間であろう。しかしウイスキーにとっては、この長い時間こそが、独特の奥深さ、リッチ感を醸し出す上で欠かせないのだ。

ではウイスキーは、どのようにつくられているのか。ウイスキーでよく聞くシングルモルトとは何か。どんな飲み方が一番よいのか。

本書はサントリーで45年間にわたりウイスキーづくりに携わり、うち27年間はウイスキーづくりにおいて重要なブレンダーの仕事を務め上げた著者による、ウイスキーの楽しみ方「虎の巻」だ。ウイスキーづくりへの思い入れの強さが随所からにじみ出ており、「ものづくりの精神」にも感銘を受けることまちがいなしだ。本書を読めば、ウイスキーをより深く味わえるようになるだろう。

ライター画像
三浦健一郎

著者

輿水 精一(こしみず せいいち)
1949年山梨県生まれ。山梨大学工学部発酵生産学科卒業後、1973年サントリー株式会社(当時)入社。山崎蒸溜所での品質管理・貯蔵部門などを経て、1991年ブレンダー室へ。1999年チーフブレンダーに就任。世界的な酒類コンペティションInternational Spirits Challenge(ISC)で、最高賞であるトロフィーを3年連続4回受賞した『響30年』をはじめ、様々なサントリーウイスキーの開発・ブレンドに携わる。2018年現在、サントリースピリッツ(株)名誉チーフブレンダー。2004年にISCの審査員に、2015年にはWhisky Magazine社のHall of Fame(ウイスキーの殿堂)に、いずれも日本人で初めて選ばれた。著書に『ウイスキーは日本の酒である』(新潮新書)、共著書に『日本ウイスキー 世界一への道』(集英社新書)、『ジャパニーズウイスキー』(新潮社とんぼの本)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    ウイスキーの美味しさの秘密はブレンドという工程にある。
  • 要点
    2
    日本には世界の中でも多種多様なウイスキーの飲み方がある。ウイスキーはそもそも水や炭酸、氷などを自由自在に加えて飲むものであるため、食べ物との組み合わせの幅も広い。繊細な和食にもピッタリな食中酒という飲み方が発達した。
  • 要点
    3
    ウイスキーはバーや家など、それぞれに応じた楽しみ方が可能だ。

要約

ウイスキーはどんなお酒か

ウイスキーと熟成
Givaga/gettyimages

まずは多々あるお酒の中でのウイスキーの位置づけや特性について解説していく。

お酒の種類は醸造酒、蒸留酒、混成酒に大別される。醸造酒の代表はワインやビール、日本酒である。醸造酒の持つ芳醇な香りを、蒸留という工程によって選択的に濃縮したのが蒸留酒だ。ウイスキーやブランデーはこの蒸留酒にあたる。ジン、ラム、テキーラ、ウォッカもこの仲間だ。また、混成酒の仲間はリキュール、みりん、合成清酒である。

それぞれのお酒は、つくられる土地の気候風土や農産物をもとに、長い歴史の中で磨き上げられてきたものだ。しかし、製造方法や品質の観点に立つと、ウイスキーには他のお酒にはない際立った特徴がある。

それは熟成する酒であるということだ。10年、20年、時には30年以上もの長期間、樽で寝かすうちに熟成という現象が起こる。その結果、香味が豊かでまろやかなウイスキーが誕生するのだ。

つくり手のこだわりが光るブレンドという工程

ウイスキーの美味しさの秘密は、ブレンドという工程にあるといっていい。ウイスキーは、10、20種類、時には30種類以上の個性の異なる原酒の組み合わせによって生まれる。このブレンドの原酒の多さが、他のお酒との大きな違いである。ブレンド素材の多様さによって、表現できるウイスキーの世界は格段に広い。

ウイスキーは、つくり手の想いやこだわりをもとに、ブレンドによってめざす味わいを実現していくお酒だ。つまりウイスキーの美味しさには、他のお酒に比べて、人の関与が大きいといえる。そこには自ずと、メーカーによる各ブランドの品質に対するこだわりが強く現れていくことになる。

世界の五大ウイスキー

ウイスキーはアイルランドが発祥の地といわれているが、その歴史的な記述は残っていない。その後、スコットランド人の手によって今日の形まで進化し、世界中でつくられるようになった。代表的な産地は「世界の五大ウイスキー」という名で知られている。

一つ目がアイルランドだ。味わい的には口当たりのよい、穀物的風味の豊かな飲みやすいタイプのウイスキーが多い。

二つ目はスコットランド。香味が豊かで重厚、個性的なものが多く、蒸留所ごとの特色あるウイスキーづくりが魅力だ。

三つ目はアメリカ。代表的なのは、トウモロコシを主原料とするバーボンウイスキーである。穀物の風味が豊かで、バニラ香を中心に甘く華やかな香りを特徴とする。

四つ目はカナダ。香り立ちが甘く軽快で、飲みやすいタイプのウイスキーが多い。

五つ目が日本だ。香りが複雑で繊細、まろやかでバランスのよいタイプのウイスキーが多い。スタンダードクラスの製品の品質が高いのも特徴の一つだ。

ただし近年は、各地で製法に様々な試みがなされたこともあり、これら五大ウイスキーの特徴の差は小さくなりつつある。

ウイスキーづくりを知る

ウイスキーができるまで
marvlc/gettyimages

ウイスキーには、麦芽を原料とするモルトウイスキーと、トウモロコシや小麦などの発芽していない穀類を主な原料とするグレーンウイスキーの二種類がある。ただし、市販されているものの大部分は、モルトウイスキーとグレーンウイスキーを組み合わせたブレンデッドウイスキーだ。

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要約公開日 2019.03.20
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