「王室」で読み解く世界史

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「王室」で読み解く世界史
ジャンル
著者
宇山卓栄
出版社
日本実業出版社 出版社ページへ
定価
1,836円
出版日
2018年12月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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レビュー

今上天皇の生前退位を前にし、日本中がそれを粛々と受け止め、新しい世に思いを馳せている。日本人にとって、天皇陛下の存在は、国の象徴として存在し続けることが当たり前なのではないだろうか。そして、その存在が「ない」という発想は、まず思い浮かばないだろう。

しかし世界を見渡してみると、これが稀有なことだとわかる。日本の皇室のように、1000年以上も万世一系でつながっている王室は、世界中どこを探しても見つからない。世界史上では、王室が突然断絶したり、誰かに乗っ取られたりすることは当たり前。しかもそれが百姓や異民族の場合すらあるのだ。

現在、世界には27の王室がある。18世紀にはほとんどの国に王がいたが、市民革命や植民地支配、共産主義化などで、その多くが途絶えた。また、アメリカのように、もともと王のいない国もある。本書では、世界各国の王室の歴史と現状が、わかりやすく解説されている。

著者は代々木ゼミナールで世界史の人気講師として活躍し、『「民族」で読み解く世界史』などのヒット作を生み出している宇山卓栄氏だ。範囲が広く、ともすれば散漫になりがちな世界史だが、著者のテンポのよさと切り口の面白さで、思わずページをめくっていることだろう。

王とは何か。皇帝とどう違うのか。王室が残った国とそうでない国は、何が違ったのか。世界史に苦手意識を持っている人でも、上質のエンターテイメントとして十分に楽しめる内容である。王統から人類の軌跡を知る新しい世界史の旅が始まる。

矢羽野 晶子

著者

宇山 卓栄(うやま たくえい)
1975年、大阪生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。代々木ゼミナール世界史科講師を務めたのち、著作家となる。テレビ、ラジオ、 雑誌など各メディアで、時事問題を歴史の視点でわかりやすく解説。おもな著書に、『世界一おもしろい世界史の授業』(KADOKAWA)、『世界史は99%、経済でつくられる』『朝鮮属国史-中国が支配した2000年』(以上、扶桑社)、『「民族」で読み解く世界史』(日本実業出版社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    王とは王の血筋を引く者であり、血統の正当性が原則である。王室の安泰は社会秩序を作り、国の安泰につながる。それを最も理解してきたのは日本だ。日本の皇室は、1500年もの間、王統の一貫性を保っている世界唯一の王室である。
  • 要点
    2
    ヨーロッパにおける皇帝とは「カエサルの後継者」を指す。王のような血筋の正統性は問われない。
  • 要点
    3
    中国では力があれば誰もが王朝を興し、君主になることができた。王朝を覆すことは「易姓革命」と呼ばれ、正当化された。そのため何度も王朝が変わり、異民族による王朝も数多く誕生した。

要約

【必読ポイント!】 万世一系の日本の皇室

王室とは何か
TonyLomas/gettyimages

王とは血筋そのものだ。王が王であるためには、王の血を引くことが原則となる。そして王の血統は、王の自己満足ではなく民衆に必要なものでもある。もし誰もが王になれるなら、戦争の絶えない世の中になる。王の血統は秩序と等しい。

「王室の安泰=秩序維持の根幹」という原則を最も理解していたのは、日本人である。日本には、万世一系の天皇家がある。系譜を約1500年辿ることのできる王室で、王統の一貫性を有するのは、世界中で日本だけだ。

日本では源平の時代から数百年にわたり、武家が政権を握ってきた。だが、いかなる武人政権も天皇の地位を侵すことはなかった。武人は天皇の血統が神聖不可侵であることを理解し、天皇から委託された政権を預かることを前提として政治を司っていた。日本では、この「正統主義」を政治の原則とすることで、国家の安定を維持できたのである。

では、王の血統が失われるとどうなるか。歴史上、最も正統主義がないがしろにされてきたのは中国だ。王の血統は顧みられず、農民や異民族でも、力さえあれば王朝を興すことができた。その端的な例は、14世紀に明王国を建立した朱元璋だ。彼は貧農から身を起こして天下を取った。しかし、その背景から疑心暗鬼に陥り、人心の荒廃を招くこととなった。

中国では王朝が頻繁に変わったせいで、人民に国という意識が根付かなかった。国の意識がないと、公共意識も育たない。自分さえよければよいという考えは、現代まで綿々と続いているのだ。

「男系天皇」に秘められた日本の知恵

日本の『皇室典範』第一条には「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」とある。「皇位継承権を男系男子の皇族に限るのは、女性差別だ」という批判があったが、それは見当違いだ。そもそも『皇室典範』は、女性差別を意図するものではない。

まず、「男系」とは、「皇族の父親と一般女性」の間に生まれたという意味であり、性別は問わない。我が国にはかつて「女性天皇」が8名いたが、いずれも「男系天皇」である。歴史的に「女系天皇」を認めたことはない。

ではなぜ、男系継承の維持が必要なのか。もし、女性天皇が民間男性と結婚したら、生まれた子は民間男性の家系の子になる。その子が皇位継承すれば、その民間男性の家系の新王朝が興ることになる。つまり、女系天皇を認めるということは、民間人に皇室が乗っ取られることを意味する。野心的な男が皇族に近づき、自分の子を天皇にして自らの王朝をつくることも可能なのだ。女系天皇を歴史的に認めてこなかったのは、国を守るための防御策なのである。

一方ヨーロッパでは、このような規定がなかったため、女系王の即位によって国が乗っ取られた例が多数ある。その有名な例がスペインだ。スペイン王国の王女ファナは、ハプスブルク家の皇子フィリップと結婚し、カール5世を産む。スペイン王国には男子の世継ぎがいなかったため、カール5世はスペイン王位を継承した。こうして、スペイン王国は合法的にハプスブルク家に乗っ取られたのである。

王と皇帝の違い
Crisfotolux/gettyimages

では皇帝(エンペラー)と王(キング)はどう違うのか。ローマ帝国の例をもとに説明しよう。

ヨーロッパでは、皇帝はローマ帝国の「カエサルの後継者」という意味を持つ。ローマ帝国は西暦395年、東西に分裂し、西ローマ皇帝と東ローマ皇帝が並び立つようになった。しかし、西ローマ帝国は476年に滅亡。その後300年以上の空白の時期を経て、800年、フランク族のカール(大帝)が西ローマ皇帝の座に就く。西の皇帝位を962年に引き継いだのは、カールの血を引くオットー1世。彼は神聖ローマ帝国を樹立した。これは15世紀に、オーストリア貴族出身のハプスブルク家に引き継がれていく。

一方、現在のイスタンブルに首都が置かれた東ローマ帝国は、1453年にオスマン帝国に滅ぼされるまで、約1000年にわたり存続した。1480年、ロシア貴族のイヴァン3世が東ローマ皇帝位の後継者に名乗り出る。子のイヴァン4世の時代に帝位継承を認められ、以降、ロシア人が皇帝を引き継いでいく。

このように、王は血統・血脈の正当性を前提とするのに対し、ヨーロッパの皇帝は基本的に概念的・政治的なものと言える。

ところで、大英帝国(British Empire)には皇帝がいないのに、なぜ帝国と呼ばれるのか。帝国は「複数の地域や民族を含む広大な地域を支配する国家」を指し、国家の形態を表す。したがって、イギリスのように、君主が皇帝である必要はないのだ。

ヨーロッパの王室

国王を処刑したイギリスとフランス
galdzer/gettyimages

歴史上、民衆の意思により国王が処刑された例が2つある。イギリス国王チャールズ1世とフランス国王ルイ16世だ。

両国とも、革命後に王制が復活している。復活後、イギリスの王制は存続中だが、フランスでは再び廃止され、共和制のまま今に至る。両国の違いは何なのか。

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ジャンル
政治・経済 リベラルアーツ
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1,836円
出版日
2018年12月20日
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