「戦争と平和」の世界史

日本人が学ぶべきリアリズム
未読
「戦争と平和」の世界史
「戦争と平和」の世界史
日本人が学ぶべきリアリズム
著者
未読
「戦争と平和」の世界史
著者
出版社
出版日
2019年07月14日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

本書がカバーするのは、石器時代の争いから近未来の冷戦の予想まで。地域も、まさに世界全体について記述しつつ、日本についても詳しく述べている。要約では、その中のほんの一部、ウェストファリア体制以降の諸国と日本の動きに絞った。

日本は、第一次世界大戦後には、国際連盟の常任理事国として世界の「四大国」の一つになった。しかし、わずか四半世紀後に国際的地位と海外領土をすべて失ったのはなぜか。その成り行きについて読みながら、歴史に「もしも」は禁句とはいえ、この言葉を繰り返さざるをえなかった。軍人・民間人300万人ともいわれる犠牲を出す前に、日本は踏み止まる道があったはずである。

平和な未来に向けて建設的な議論を進めるためには、過去の歴史を知ることが欠かせないのはいうまでもない。そのためには、ある程度網羅的で、事実に即した良質の歴史を学ぶことが欠かせない。本書はそのための最適な一冊といってよいだろう。

さらに、日本経済の「失われた30年」と呼ばれた時代は、ほぼ平成と重なり、GDP世界2位の地位から滑り落ちていく姿を第2の敗戦と呼ぶ人もいる。現在の日本の組織やリーダーのあり方、物事の進め方や決め方といったものについても、過去から学ぶ点が少なからずあるはずだ。リーダーを志す人にも、ぜひとも読んでいただきたい。

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しいたに

著者

茂木 誠(もぎ まこと)
東京都出身。駿台予備学校、ネット配信のN予備校で大学入試世界史を担当。iPadを駆使した独自の視覚的授業が好評を得ている。
世界史の受験参考書のほか一般向けの著書も多数。『経済は世界史から学べ!』(ダイヤモンド社)、『世界史を動かした思想家たちの格闘』(大和書房)、『世界史で学べ! 地政学』(祥伝社)、『ニュースの“なぜ?"は世界史に学べ』シリーズ(SB新書)、『学校では教えてくれない地政学の授業』(PHP研究所)、『マンガでわかる地政学』(池田書店)、『サバイバル世界史』(青春新書)、『世界史とつなげて学べ 超日本史』(KADOKAWA)、『日本人が知るべき東アジアの地政学』(悟空出版)など。
YouTubeもぎせかチャンネルで時事問題について発信中。
連絡先:mogiseka.com

本書の要点

  • 要点
    1
    世界は、戦争の被害を抑制するために、「国際法」を定めたり、軍事条約を定めたり、さまざまに努力してきた。だが一方で、領土問題や経済の問題など、自国の利益を確保するための戦争はなくならなかった。
  • 要点
    2
    現在は平和を実現するための組織として国際連合があるが、拒否権や旧敵国条項といったことを考えれば、現状の平和を過信することはできない。アメリカによる安定的な一極支配の時代も終わりつつある。日本における「戦争と平和」については、こうした現実をふまえて冷静かつ合理的に考えることが必要だ。

要約

国家と国際法の誕生

ウェストファリア体制
Nastasic/gettyimages

17世紀、神聖ローマ帝国(ドイツ)での宗教内乱に端を発した「三十年戦争」は、欧州の各国・地域を巻き込むことになった。その後、1648年に締結された「ウェストファリア条約」は、現在にも続く国際間の枠組みの基礎となった。

条約では、欧州の諸侯・都市が「主権国家」として独立を認められ、中世以来のローマ教皇や神聖ローマ皇帝といった超国家的な権威が否定された。「主権」とは、何者にも従属しない最高権力を意味する。条約以降、各国間の内政の不干渉と、対等な外交関係が大原則となった。これをウェストファリア体制という。

一方、インドのムガル帝国や東アジアの中華帝国(明・清)などでは、小国が帝国に朝貢し、帝国が小国へ莫大な金額の下賜や軍事援助を与えるという関係で、国際秩序が維持されていた。豊臣秀吉が朝鮮へ攻め込んだときも、朝鮮王からの要請に応えて明からも兵が派遣された。国際平和維持軍の役割を帝国が果たしていたのだ。

欧州の場合、超国家的存在を否定することで調停者も失ってしまい、ウェストファリア体制後も戦争は続くこととなった。そうしたことを見通していたオランダの法学者、フーゴー・グロティウスは、国家間の法の上に人間の生命や自由を保障する自然法があり、戦時にも自然法が守られるような国際的な取り決めをすべきだと説いた。

近代国際法の成立

ウェストファリア体制以降、欧州各国はさらに条約という形で国家間の関係を維持し、一定のルールのもとに戦争の被害を抑制しようとした。

18世紀のスイスの法学者エメリヒ・ヴァッテルは、グロティウスの考えを発展させ、著書『国際法』で近代国際法を具体的に構築した。ヴァッテルは、個人が自然権の一つとして生存権を持つように、国家も自衛権を持ち、自衛権の発動が戦争であると考えた。その上で、戦争の被害を最小化するためのルールを定めた。たとえば、戦闘員と非戦闘員を区別する、開戦と停戦を明確に宣言するといったことである。

さらに、ナポレオン戦争の終結で、1815年に「ウィーン議定書」が交わされたのを機に、条約の締結手続きや特命全権大使・公使の常駐などの外交儀礼がほぼ確立された。これを、アメリカのヘンリー・ホイートンが、1836年に『国際法原理』を著して集大成した。ただし、清朝と外交を結ぶための西欧の武力行使であったアヘン戦争からもわかるように、当時アジア・アフリカ諸国は「非文明国」であるために近代国際法の「適用範囲外」とみなされていた。アヘン戦争後、『国際法原理』は翻訳され、欧米諸国の脅威に直面した東アジア諸国で読まれるようになった。

日本が歩んだ、戦争への道

文明国をめざした日本

ペリー来航以来、欧米の圧力にさらされていた日本は、主権を持った「文明国」の一員として認められる必要を自覚した。そのために取った戦略が、第一に海軍力の強化であり、第二に近代国際法をマスターすることだった。

かたや欧州では、ナショナリズムの高揚とともにドイツ・イタリア諸国に革命が広がった。ドイツではビスマルクが外交交渉によって複雑な同盟関係を結び、ドイツ帝国が建設され、ヨーロッパの勢力均衡に変化が生じていた。

このビスマルクのもとを、

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要約公開日 2019.11.02
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