目からウロコが落ちる
奇跡の経済教室【基礎知識編】

未 読
奇跡の経済教室【基礎知識編】
ジャンル
著者
中野剛志
出版社
KKベストセラーズ 出版社ページへ
定価
1,600円 (税抜)
出版日
2019年04月30日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
4.5
応用性
3.5
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目からウロコが落ちる
奇跡の経済教室【基礎知識編】
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中野剛志
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定価
1,600円 (税抜)
出版日
2019年04月30日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
4.5
応用性
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レビュー

これまでの日本の経済政策を、あなたはどう評価しているだろうか。著名な経済学者など権威ある立場にいる人の発言に惑わされず、経済政策の適否を判断できるかといえば、ほとんどの場合それは疑わしいだろう。

本書はいま注目を集めるMMT (現代貨幣理論)をわかりやすく解説したものだ。MMTでは次のような、主流派の経済学では考えられないような主張が次々に登場する。「貨幣を創造することは負債を発生させること」「デフレ下ではいくら財政赤字を拡大しても大丈夫」「日本の財政破綻はあり得ない」「財政健全化はやっても無駄」……こうした主張を頭ごなしに否定するのは簡単だろう。しかし一度よく考えてみてほしい。はたして既存の経済学の理論が、この国の経済動向をうまく説明し、ポジティブな方向へ導けているかどうかを。

経済政策について語るうえで特に重要なのは、貨幣に関する理論だと著者は語る。貨幣の正しい理解が欠如していれば、デフレ脱却は望めない。「いまさら貨幣のことなど言われなくてもわかっている」と思われるかもしれないが、経済政策に関わる重要なポジションにいる人たちですら貨幣についてしっかり理解していないから、いつまでたっても日本はデフレから抜け出せていないのではないか――著者にそう指摘され、目からウロコが落ちた。

日本経済の再生は、貨幣を正しく理解することから始まる。貨幣理解について総点検するうえで、本書ほど適したものはない。

金井美穂

著者

中野 剛志(なかの たけし)
1971年、神奈川県生まれ。評論家。元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。96年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。01年に同大学院にて優等修士号、05年に博士号を取得。論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    「需要不足/供給過剰」でお金の価値が上がっていく現象がデフレだが、これに対して実際に経済政策として実行されたのはインフレ対策だった。
  • 要点
    2
    貨幣は負債の一形式であり、貨幣の創造は負債の発生を意味する。
  • 要点
    3
    貨幣の創造は銀行の貸出しによって行われる。貨幣供給量の増大に十分な民間の資金需要がないなら、政府が代わりに負債を増やせばよい。
  • 要点
    4
    デフレ下で財政赤字を拡大しても、日本の国債が返済不能になることはあり得ない。財政赤字の拡大は、インフレ率により制約を受ける。
  • 要点
    5
    日本が目指すべきは「財政健全化」でなく「経済健全化」である。

要約

日本の経済成長が止まったワケ

デフレが経済成長に与える影響
Rawpixel/gettyimages

日本の経済成長が停滞した最大の原因は、デフレ(デフレーション)にある。デフレとは一定期間にわたり物価が下落し続ける現象を指し、経済全体の需要が供給を下回ることで引き起こされる。需要とは消費と投資から成る。モノが売れなければ企業は赤字になり、労働者の賃金は下がる。すると買い控えによって消費が抑制され、企業は投資を差し控えるようになり、需要がさらに縮小する。この負のスパイラルがデフレを長期化させる。

別の見方をすると、デフレとはお金の価値が上がっていく現象だ。そのため人はモノよりカネを欲しがるようになり、個人では消費より貯金、企業なら投資より内部留保が増える。銀行の融資は借りたときより返すときのほうが、実質的に金額は膨らむ。そのため融資を必要とする大型投資などは行われなくなる。デフレになると経済成長が止まってしまうのは、こうしたワケがある。

デフレを脱却する方法

デフレが経済成長の阻害要因になるのであれば、逆にインフレになれば万事解決するかというと、一概にそうとは限らない。需要の増大が招くインフレはよいが、そうでないインフレはむしろ景気を悪化させるからだ。

たとえば1970年代の石油ショックがそうである。原油を生産する企業が国内にほとんどなかったため、輸入原油の価格上昇は企業や消費者の家計を圧迫しただけで、国内企業の儲けにつながらなかった。これではインフレが起きたとしても、景気悪化の方向にしか働かない。

「需要不足/供給過剰」のデフレから脱却するには「需要」、すなわち消費と投資を拡大する必要がある。しかしデフレで賃金が低下しているにもかかわらず、消費を増やす人はいないだろうし、設備投資を拡大する企業もないだろう。それが経済合理的な行動というものだ。しかしそれが結果的に需要をますます縮小させ、景気悪化をもたらすのも事実である。このように個々としては正しい行動でも、全体として好ましくない結果がもたらされることを、経済学用語で「合成の誤謬」という。

政府が経済政策を行う意義はここにある。ミクロレベルで調節できないことを、マクロレベルで調節して「合成の誤謬」を回避する。それが政府の役割だ。それができていないのは、ひとえに政府の経済運営の失策にあると言える。

平成の経済対策は実はインフレ対策
bee32/gettyimages

デフレは「需要不足/供給過剰」の状態なので、需要を拡大して供給を抑制することがデフレ対策になる。

需要を拡大するには、公共投資などの財政支出を拡大し、政府みずから需要を増やして「大きな政府」にしたり、減税で消費や投資の増大を図ったりすることが肝要だ。金融政策面では、金融緩和を実施することで、個人や企業が融資を受けやすくする。また供給を抑制するため、企業間競争を抑制して、生産性向上に歯止めをかける。供給力強化となるグローバル化は制限すべきだし、国内市場の保護も供給過剰を抑制するデフレ対策として有効である。

だが平成不況の下、実際に実施された「構造改革」はどのようなものだったか。

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