純粋機械化経済
頭脳資本主義と日本の没落

未 読
純粋機械化経済
ジャンル
著者
井上智洋
出版社
日本経済新聞出版社 出版社ページへ
定価
2,300円 (税抜)
出版日
2019年05月23日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.0
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頭脳資本主義と日本の没落
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井上智洋
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定価
2,300円 (税抜)
出版日
2019年05月23日
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3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.5
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レビュー

コンピュータはもともと職業の名称だった、ということをご存知だろうか。日本では計算手(けいさんしゅ)と呼ばれ、電卓やコンピュータが普及する前に存在していた職業である。本書のカバーに用いられているのも、この計算手の職場の写真だ。

この写真は単なる歴史ではなく、失われゆく職場風景の象徴である。汎用AI(人工知能)が普及する2045年頃には、日本の労働人口は全体の1割に過ぎないと一部では予測されている。そうした未来を、著者は「純粋機械化経済」と呼ぶ。

純粋機械化経済において、生産活動はAIとロボットが担うようになり、人々の仕事はなくなるという。そのとき社会の格差を緩和し需要を支えるためには、ベーシックインカムとヘリコプターマネーが必須というのが著者の考えだ。また、いち早くそうした経済にテイクオフする中国が覇権国家となり、新しい世界秩序が生まれるとも予測している。

本書は500ページにもおよぶ大著であり、紀元前の農耕革命から次世紀に至る歴史を背景に、経済、技術、思想をまたいで、さまざまな事柄が縦横に論じられている。その視野の大きさと論理的な明快さは、ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』や、ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』を彷彿とさせる。極め付きの野心作であり、そしてそれが見事に成功している。

AIがもたらす未来は、私たちすべてに関わる未来だ。その覇権をめぐる前哨戦はすでに始まっている。いまなにをおいても、まず手にとるべき一冊ではないだろうか。

しいたに

著者

井上 智洋 (いのうえ ともひろ)
駒澤大学経済学部准教授。慶應義塾大学環境情報学部卒業、早稲田大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。2014年4月から現職。博士(経済学)。専門はマクロ経済学、貨幣経済理論、成長理論。主な著書に『人工知能と経済の未来』『ヘリコプターマネー』『人工超知能』『AI時代の新・ベーシックインカム論』などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    まもなく紀元前の「農耕革命」や18世紀の「産業革命」に匹敵するような人類の歴史的転換が、AIによってもたらされようとしている。
  • 要点
    2
    いち早く純粋機械化経済にテイクオフした国々は、爆発的な経済成長を享受し、乗り遅れた国々とのあいだで「大分岐」が生じる。
  • 要点
    3
    今後改めて国家の役割が重要になってくる。AIなどの研究開発を促進し、一刻も早いテイクオフを実現するとともに、財政・金融政策により家計の保有するお金の量を増やすべきである。

要約

これまでの大分岐

農耕革命
andipantz/gettyimages

紀元前9000年頃、農業が始まった。農業を取り入れた地域では、当時のGDPともいえる地域単位の総摂取カロリーの増大が始まり、狩猟採集社会とのあいだに格差が広がった。これが人類史上最初の「大分岐」である。

生産活動は、活動に必要な「インプット(投入要素)」と、活動によって生みだされる「アウトプット(産出物)」で説明できる。農業の主要なインプットは土地と労働であり、アウトプットが農作物だ。これは土地が広いほど、働く人が多いほど、より多くの農作物が収穫できることを意味している。

このように農耕社会では地域の生産量は上がるが、そのぶん子供が増え人口が増加するので、一人当たりのGDP(摂取カロリー)は変わらない。結果として、農耕民はいつまでたっても生活水準を向上させることはなかった。これを「マルサスの罠」という。

むしろ人々は農業を取り入れることにより、階級や戦争、飢餓、疫病、長時間労働、椎間板ヘルニアなど、さまざまな苦痛を引き受けることになった。かのジャレド・ダイアモンドは農耕の開始について、「人類史上最大の過ち」とすら表現している。

産業革命

1776年、ジェームズ・ワットが蒸気機関を発明した。この技術によってイギリスを先駆けとし、1800年ごろから第一次産業革命が始まった。これが人類史上2度目の大分岐をもたらす。今度は工業社会に移行した地域と、農耕社会に留まった地域とのあいだで分岐が生じたのだ。前者はヨーロッパ・アメリカであり、後者は日本を除いたアジア・アフリカである。

工業におけるインプットは機械と労働であり、主なアウトプットは工業製品だ。アウトプットのうち、家計が消費する以外の部分を投資にまわして機械を増やせば、より多くの工業製品を作り出せる。このような循環的なプロセスにより、機械(資本)は無際限に増殖し、生産量も無際限に増大していった。まさに産業資本主義の誕生であり、著者はこれを「機械化経済」と呼ぶ。

こうして人々は、マルサスの罠をついに抜け出すことに成功する。一人当たりのGDPが増大し、生活はどんどん豊かになっていった。人類ははじめて、時を経るごとに暮らしぶりが向上していくという経済の仕組みを手に入れたのである。

このように機械化経済に移行した欧米諸国は上昇に向かう。それに対してアジア・アフリカ諸国の経済は停滞し、欧米諸国に収奪され、むしろ貧しくなった。途上国と先進国、植民地と宗主国、貧しい国と富める国。現在まであとを引く二極化は、この2度目の大分岐が発火点なのである。

【必読ポイント!】 これからの大分岐

汎用AI
Feodora Chiosea/gettyimages

次の大分岐をもたらすのは「汎用AI」だろう。ここで本書における言葉の定義を確認する。

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グローバル 政治・経済 テクノロジー・IT サイエンス リベラルアーツ
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