これからの都市ソフト戦略

未 読
これからの都市ソフト戦略
ジャンル
著者
藤後幸生
出版社
定価
1,600円 (税抜)
出版日
2019年07月26日
評点
総合
3.3
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
3.0
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これからの都市ソフト戦略
これからの都市ソフト戦略
著者
藤後幸生
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定価
1,600円 (税抜)
出版日
2019年07月26日
評点
総合
3.3
明瞭性
4.0
革新性
3.0
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レビュー

人口減少の一途をたどり、「都心回帰」「東京一極集中」の流れが止まらない日本で、いま「街づくり」が大きな課題となっている。

本書は「都市設計」「地方創生」といったキーワードに関心をお持ちの方に、「最初の一冊」として手に取っていただきたい一冊だ。戦後の日本の都市設計の歴史を紐解くとともに、いまの日本の都市に求められる街づくりのコンセプトが語られている。

本書の前半部では、従来型の都市開発が生み出した課題が、平易な文体でまとめられている。著者があるべき都市の姿として提唱するのは、「ハードからハート」という言葉で表現されるような、ソフト戦略にもとづいて設計された街だ。「400メートル以内ですべてが揃う」、徒歩圏内で作るコンパクトシティである。ソフトの魅力によって住民や観光客を惹きつけ、これによって富国強街(ふこくきょうがい)を実現し、補助金頼みの地方行政からの脱却を行うべき、というのが著者の主張である。

本書の後半部では、国内外における地方創生の成功事例が複数紹介されている。民間主導での都市開発には、常に逆風が吹くものだ。たとえば東京ディズニーランドも、当初は批判を浴びていた。しかし最終的には地元経済に貢献し、自治体の大幅な税収向上に貢献している。

街づくりを成功させるためには、行政と住民、民間企業の連携が必須だ。私たちも一人の当事者として、これからの街づくりを考えていきたい――そう思わせてくれる一冊である。

狩野詔子

著者

藤後 幸生(とうご さちお)
株式会社タフ・コーポレーション代表取締役社長。三重県出身。大学卒業後、松坂屋(現・株式会社大丸松坂屋百貨店)を経て渡米。米流通業のノウハウや街づくりを日本に紹介する米国法人を設立。日米往復の中、森ビル株式会社・故森稔と出会い、アークヒルズ、六本木ヒルズ、ヴィーナスフォートなどの商業における都市開発を成功に導く。その傍ら、地方都市の中心地再開発に携わり、民官一体の地方創生を説く。森ビル株式会社、日本マクドナルド株式会社、株式会社読売新聞東京本社、株式会社ポケモン、タリーズコーヒージャパン株式会社等顧問、みえの国観光エグゼクティブ・アドバイザー。

本書の要点

  • 要点
    1
    アメリカの後追いによる無計画な都市開発の結果が、日本全国どこを切っても同じ「金太郎飴」のような風景や、都市中心部の空洞化、商店街の衰退に繋がっている。
  • 要点
    2
    かつて日本は、人口増加に対応すべく街を拡張していた。しかし人口が減少している現代においては、徒歩で暮らせる街「コンパクトシティ」を築いていくべきである。
  • 要点
    3
    いま街づくりに取り組まなければ、自分の街が消えてなくなるかもしれないということを、住民も認識する必要がある。行政・住民・民間企業が連携し、各都市独自の魅力ある街づくりを実践していかなければならない。

要約

戦後日本の暮らしと街の激変

アメリカ文化を取り込み、形成された日本の都市

日本全国の街なかや郊外の風景の中には、アメリカ文化が当然のように浸透している。しかしこれは過去数十年で形成された風景だ。いまの日本の街やライフスタイルの成立には、戦後のアメリカ文化との関わりが大きく影響している。

日本全体がアメリカに憧れ、それが経済成長の原動力となった時代があった。日本企業も米国流のシステムを取り入れ、清涼飲料業界や外食産業といった第三次産業が大きく成長した。これらの企業で働く人の地位や収入も向上し、日本のめざましい経済成長の一翼を担った。

大阪万博を号砲に始まった日本人の外食元年
Geber86/gettyimages

1970年に大阪万博が開催された。経済成長のただ中に開かれた大阪万博には、77カ国が参加した。万博のパビリオンのひとつ「アメリカ館」では、アメリカ最大のファミリーレストランであるハワード・ジョンソン社が出店を予定していた。

しかし1970年、アメリカ経済は悪化の一途をたどっていた。ベトナム戦争の戦費がかさんだことが影響し、日本には「ファミリーレストラン」という概念も存在しなかったこの時期、すでにアメリカのファミリーレストランは終焉の時を迎えようとしていたのだ。大阪万博に出展予定であったハワード・ジョンソン社も経営が破綻しかかっており、業績不振のために大阪万博に出展できなくなってしまう。

そこで白羽が立ったのが、のちにファミリーレストラン「ロイヤルホスト」を運営することになる日本のロイヤル社(現・ロイヤルホールディングス株式会社)だ。大阪万博に出展したロイヤル社の4店舗は大繁盛し、大阪万博を境に、日本にはアメリカ方式のシステムを取り入れた外食産業が次々と上陸、日本人にとっての外食の時代が幕を開けた。

チェーン店の多店舗展開で変わった街の景観

外食文化の浸透に伴って、日本の街の景観も変わっていった。モータリゼーションによる道路の開発と時を同じくして、フランチャイズ・チェーン・システムを取り入れた外食店舗が、次々と出店攻勢に打って出た。

これにより周囲の景観との調和よりも、集客効果を重視した鮮やかなカラーの看板が林立し、日本全国どこを切っても同じ「金太郎飴」のような風景が見られるようになった。同時に、かつての街の賑わいの中心であった商店街の衰退が始まった。

アメリカの後追いによる無計画な都市開発の結果が、いまの日本の都市構造にあらわれているといえる。

街はどうして壊れたのか――街と商業

アーケード商店街の始まり
ilbusca/gettyimages

現代の地方都市には、かならずと言っていいほど商店が立ち並んでいる。近代的な商店街が成立したのは、200年ほど前のことだ。

18世紀後期のヨーロッパの都市は、多くの通行人と馬車でごった返していた。交通手段として主に利用されていたのは馬車であったが、馬の糞尿のために街は悪臭を放っていた。馬糞を避けるために生まれたのが、車両通行禁止のアーケード商店街であった。世界初のアーケード商店街といわれるロンドンのバーリントン・アーケードは1819年に建造され、現代でも人気のショッピング街だ。

欧米における百貨店の誕生

19世紀末になると工業化に伴い、都市の賃金労働者の生活は安定し、中流家庭が増加した。生活に余裕が生まれた人々は、街に出てお金を使うようになる。

こうした人々の消費意欲に応えるように誕生したのが百貨店だ。

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