教育格差
階層・地域・学歴

未 読
教育格差
ジャンル
著者
松岡亮二
出版社
定価
1,100円(税込)
出版日
2019年07月10日
評点
総合
4.0
明瞭性
5.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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教育格差
階層・地域・学歴
著者
松岡亮二
未 読
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定価
1,100円(税込)
出版日
2019年07月10日
評点
総合
4.0
明瞭性
5.0
革新性
3.5
応用性
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おすすめポイント

どのようにすれば公平な教育制度を築けるか、さまざまな議論がなされている。これまでの日本の教育は、受験競争のための詰め込み式であった。そのため、「ゆとりのあるカリキュラムで、多様な能力を評価できる教育が求められている」といったイメージが抱かれることも多かった。また近年では新自由主義的な政策により、社会全体の経済格差が広まることで、教育の格差も拡大していったと思われるかもしれない。

しかし本書で提示されているデータによると、そうした考えは幻想を含んでいたことがわかる。あるべき社会の姿を描くためには、まず目の前の現状を可能な限り正確に把握しなければならない。膨大なデータを冷静に検証し、実態を明らかにすることで、はじめて問題解決の出発点に立てるようになる。まさに社会学のお手本となる方法が、本書では鮮やかに実践されている。

本書によると、日本では高度成長期から現代に至るまで、ずっと教育格差があり続けたという。そしてそれは、義務教育や高校の教育制度によって再生産され続けてきた。もし自分が高等教育を受け、社会的な成功を収めることができたとしても、それは自分の努力だけでなく、「生まれ」による要因も大きかったことがよくわかる。

では今後、日本の教育はどうすればいいのか。著者の提案も合わせて、社会全体で教育改革を考えるための共通の土台として、本書を活用していってほしい。

ライター画像
大賀祐樹

著者

松岡亮二 (まつおか りょうじ)
ハワイ州立大学マノア校教育学部博士課程教育政策学専攻修了。博士(教育学)。東北大学大学院COEフェロー(研究員)、統計数理研究所特任研究員、早稲田大学助教を経て、現在同大学准教授。国内外の学術誌に20編の査読付き論文を発表。日本教育社会学会・国際活動奨励賞(2015年度)、早稲田大学ティーチングアワード(2015年度春学期・2018年度秋学期)、東京大学社会科学研究所附属社会調査データアーカイブ研究センター優秀論文賞(2018年度)を受賞。

本書の要点

  • 要点
    1
    出身階層・地域という、本人が選べない「生まれ」による教育格差は、戦後日本では高度成長期からバブル期、景気低迷期にかけて常に存在していた。
  • 要点
    2
    家庭の社会経済的地位(SES)の格差によって、教育関与への積極性は異なる。また、未就学段階から生じた学力の差は、高校まで縮まることなく拡がり続ける。公立校も地域によって格差がある。
  • 要点
    3
    日本は国際的に凡庸な教育格差社会であり、このままだと格差が再生産され続けるだろう。たしかなデータを継続的に収集し、研究を行うことで、それぞれが可能性を最大限に発揮できる教育の実現をめざすべきだ。

要約

日本の教育格差社会

変わらずに存在する格差
Youst/gettyimages

人には無限の可能性がある。どんな「生まれ」であっても、あらゆる選択肢を現実的に検討できる機会があるべきだ。だがこの社会では、出身家庭と地域という本人にはどうしようもない初期条件(生まれ)によって、教育機会に格差がある。それは最終学歴に繋がり、収入・職業・健康などのさまざまな格差の基盤となる。つまり20代前半でほぼ確定する学歴で、その後の人生が大きく制約される現実が、日本にはあるのだ。

戦後70年、日本社会が大きく変わってきたことに異論がある人はいないだろう。産業構造は大きく転換し、教育を長い年数受ける人も増え、4年制大学への進学率は2009年に50%を超えた。

一方で、生まれ落ちた社会階層によって人生が制限されるという点で、日本社会は大きく変わっていない。高度成長期、バブル経済とその崩壊、長期景気低迷と、社会が大きく変わっても、相対的な格差は基本的に変わらず存在している。

出身階層、地域による格差の再生産

出身階層、出身地域による格差が生まれるメカニズムのひとつとして、「教育熱」がある。SES(世帯収入、親学歴・文化的所有物と行動、職業的地位などの指標化によって表される社会経済的地位)が高いと、教育により大きな価値を置く傾向がある。実際に親が大卒者の場合、子どもに家庭教師をつける、塾に通わせるなど、学校外教育に積極的だ。こうした傾向は、三大都市圏の居住者にも同様に見られ、特に2000年代以降で顕著である。その背景として、階層が似た人が同じ地点に集まることで教育熱が高まること、教育熱が高い地域だと需要を見込んで学習塾チェーンが増えることなどが考えられる。

公立学校であっても、大卒割合の高い地域であれば、子供たちは大学進学を前提に勉強する。また親は進学に繋がる教育を期待するため、大卒である教師と共に協働して教育熱が高まる。これは、コミュニティから引き出せる資源に格差があることを意味する。

「生まれ」(出身階層・出身地域)による教育格差は、時代を超えて根強く存在する。戦後、日本社会は大きく変動したが、いつだって教育格差はあった。今後はどうなるのだろうか。ひとつのあり得るシナリオは、これまでと同じぐらいの格差の再生産である。この状況を改善するには、いまを生きる子供たちのために、大規模な介入を積極的に行うことが求められる。

【必読ポイント!】 格差の再生産を止められない教育制度

幼児教育・小学校段階
recep-bg/gettyimages

認知能力・非認知能力の格差は、小学校に入る前段階ですでに存在し、その後の学力格差の基盤となっている。家庭のSESによって、親子の会話の量・質に大きな差が生まれ、言語技能格差の要因になっていることが明らかにされている。利用する幼稚園、保育所、習い事の有無によっても経験格差が生じ、学力格差は未就学段階で発生していると考えられる。

テレビ視聴時間やゲーム時間を比べても、両親非大卒の子は両親大卒の子よりも長く、年齢が上がるにつれてその差は拡大する。これは両親大卒層が「意図的養育」の一貫で、望ましくないものを規制しているからだと考えられる。両親大卒層では他にも、本や絵本の読み聞かせをする、健康によくないものを食べさせない、食事中はテレビをつけないなどといった、意図的養育をする傾向が見られる。

このように未就学段階でさまざまな格差があるため、小学校の新1年生は入学式の段階ですでに異なる経験をしている。

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