旅の効用
人はなぜ移動するのか

未 読
旅の効用
ジャンル
著者
ペール・アンデション 畔上司(訳)
出版社
定価
2,420円(税込)
出版日
2020年01月28日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.0
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旅の効用
人はなぜ移動するのか
著者
ペール・アンデション 畔上司(訳)
未 読
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定価
2,420円(税込)
出版日
2020年01月28日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
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おすすめポイント

著者は20代の頃、夏は地元の新聞社でアルバイトをし、冬はバックパッカーとして世界各地を回るという生活をしていた。毎年11月1日には、格安のエアロフロートに搭乗してどこかに旅立つことを自分との約束にしていたという。そして1987年に、旅行誌『ヴァガボンド』を創刊。人の子の親となってから、生活スタイルは変化しつつあるものの、それでも旅が日常だ。本書は、そのような旅のベテランが著したエッセー集である。地元スウェーデンはもとよりヨーロッパ全土でベストセラーへの道をひた走っているそうだ。

本書において描かれている旅は、数日の観光旅行といったものではなく、何週間にもわたる滞在や半年にもわたる放浪であり、わたしたちの多くにとっては現実的なものではないはずだ。にもかかわらず、本書が多くの人に愛されているのは、わたしたちの中にある旅への憧れをかき立てるからだろう。

本書のタイトルにあるように、旅には効用もある。一つは世界の現実に触れられることだ。旅をする人は、新聞が日々報じているほど世界がひどい状態ではないことを知っている。歴史的な場所を訪れれば、過去にタイムスリップすることもできる。歩くことは最高のセラピーかもしれないし、列車の車窓を流れる風景はあなたを深い物思いへと誘ってくれる。

本書がビジネスの役に立たないとは言わないが、それ以上に豊かな読書の時間をもたらしてくれることは確かだ。

ライター画像
しいたに

著者

ペール・アンデション(Per J. Andersson)
スウェーデンのジャーナリスト・作家。1962年、同国南部のハルスタハンマル生まれ。同国で最も著名な旅行誌『ヴァガボンド』の共同創業者。過去30年にわたってインドを中心に世界各地をバックパッカー、ヒッチハイカーとして、あるいはバスや列車を利用して旅する。現在ストックホルム在住。2015年刊行の前著(インドからスウェーデンまで自転車旅をし、スウェーデン人女性と結婚したインド人についての伝記)がベストセラーになり、一躍人気作家となる。

本書の要点

  • 要点
    1
    旅に出れば、見知らぬ風景や人々の暮らしを知る喜び、人や過去との出会いなどといったさまざまな喜びを感じられる。
  • 要点
    2
    旅には、さまざまな社会的状況に適応できるようになる、思いやりが増すなど、人を成熟させる効用がある。
  • 要点
    3
    旅を通して、世界についてより良く学ぶことができる。異文化に対する偏見や、メディアが伝える悲惨な世界像からわたしたちを解放してくれる。旅に出れば、資金や資源が貧しい土地でも、目を輝かせて日々を過ごす人々がいることがわかる。

要約

【必読ポイント!】 旅の喜び

初めての景色

インドのある地方都市から別の地方都市へ。若き日の著者は、郊外を走るバスに一人乗っていた。次から次へと現れる初めて見る景色に、次第にうっとりとしてくる。感性が研ぎ澄まされ、周囲のモノたちが話しかけてくるような感じがする。

どうでもいいもの、見慣れたものなど一つもない。何もかもが、意味のある小さいメッセージを秘めているようだ。こうした陶酔の時間こそ旅のエッセンスだ。

成り行き任せ
OliverHuitson/gettyimages

放浪の旅は一人旅である。自力で旅をすると順応力が強化され、さまざまな社会的状況に適応できるようになる。

自分が来たいからここに来た。頼れるのは自分だけ。現実は予測がつかないし、絶えず変化する。昨日も今日も明日も、すべて当日の成り行き任せ。次に何が起きるのか、私が今どこへ行くか、そんなことは誰も知らない。

目的地に到着するのは日没前かもしれないし、真夜中寸前かもしれない。計画どおりになんていくわけもない。それでも平然としていられる。バスが10分遅れれば、別の場面を体験して、旅の本質を発見できるからだ。

一期一会

インドを1カ月も旅していると、第七感が身についてくるようだ。何かを売りたがっている人、一杯食わせようとしている人、仲間になりたがっている人、単に外国人に興味がある人……少し接しただけでそれらを見分けられるようになってくる。

旅における人との出会いは、ごく短いものだ。言葉を交わさないこともある。

北京に行ったときのことだった。大通りから一歩入ると、そこには昔ながらの低層の一軒家がたくさん建っている地区が広がっていた。茶器を売る店の前で足を止めた。

店の外には、おじいさんが座ってあたりを眺めていた。まるで誰かやって来て話し相手になってくれるのを待っているかのようだった。彼は著者に向かって顔全体でほほえみかけ、横にある小さな椅子におすわりになったら、と両手で合図した。

腰かけると彼はお茶を出してくれた。ふたりは一言も発しなかったが、それでも相手を理解しようと強く思い、その思いが互いに伝わって、忘れがたい印象を残した。およそ15分間、彼がお茶を注ぎ、著者がいただく、ただその繰り返しだったが、おじいさんの人間としての揺るぎなさに圧倒される思いだった。あれから何年も経っているが、彼の強烈な存在感はいまだに記憶に残っている。

旅の続きを楽しむ
aprott/gettyimages

人はやがて、初めての場所に訪れることをやめ、何度でも同じ場所に戻ってくるようになる。著者にとってそのような場所は、ギリシャのナクソス島とインドのムンバイだ。繰り返し訪れると、まるでジグゾーパズルのピースが埋まるように、少しずつその土地の全貌に近づいているという実感が湧いてくる。

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