後世への最大遺物・デンマルク国の話

未 読
後世への最大遺物・デンマルク国の話
ジャンル
著者
内村鑑三
出版社
岩波書店
定価
583円
出版日
2011年09月17日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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後世への最大遺物・デンマルク国の話
後世への最大遺物・デンマルク国の話
著者
内村鑑三
未 読
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ジャンル
出版社
岩波書店
定価
583円
出版日
2011年09月17日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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レビュー

後の世に何か遺すことができないか。こうした考えは多くの人が持つところである。だが何を遺すべきかは決して簡単な問題ではなく、正面から向き合って考えると非常に広く深い問題を含んでいる。

この本の著者である内村鑑三は日本を代表するキリスト教指導者であり、『代表的日本人』や『余は如何にして基督信徒となりし乎』など多くの古典的著作がある。その中でも代表的なものの一つとされる『後世への最大遺物』は、明治27年に箱根で行われた講演をもとにした書籍である。その講演の中で内村は、後世へ何を遺すべきかという問題について明快に語っている。

『後世への最大遺物』というタイトルは一見難しくも思えるが、中身は語り口も平易であり、ところどころに冗談も織り交ぜた読みやすいものだ(講演内容を文字にしているため、「満場大笑」や「拍手喝采」などその当時の様子も伝わってくる)。ページ数も少なく、短時間で読了できるだろう。しかし、100年以上にわたって読み継がれてきた本書の内容は決して軽いものではない。重要な問題を軽やかに切り分け、その核心を鮮やかに提示する著者の力量がここで発揮されている。

この本の中で示される思想は現代においても全く輝きを失っていない。そして、大きな内容を持ちながらも容易に読み通すことができる本書はまさに古典中の古典というべきものであり、これからの100年も読み継がれていくことは間違いないであろう。

金松 豊

著者

内村 鑑三
(1861~1930)
明治大正期のキリスト教伝道者、思想家。無教会主義の創始者。
高崎藩士の息子として江戸に生まれる。札幌農学校入学後、W.S.クラークに感化され、洗礼を受ける。卒業後渡米し、アマースト大学、ハートフォード神学校に学ぶ。1890年、第一高等中学校講師に着任するが、翌年、教育勅語奉戴式で勅語に敬礼をためらい、不敬事件として職を追われる。以降、著述の生活に入り、『基督信徒の慰め』『求安録』(ともに1893年)、『余は如何にして基督信徒となりし乎』(1895年)などを著す。1897年「万朝報(よろずちょうほう)」記者になり、1900年雑誌「聖書之研究」創刊。
足尾鉱毒事件では、社会正義を追求する立場から反対運動に加わった。日清戦争で義戦論を説いたことを恥じ、日露戦争時は非戦論を唱えた。キリスト教に関しては、聖書の研究・講解と信仰そのものに重きを置く無教会運動を展開した。

本書の要点

  • 要点
    1
    後世に何かを遺したいという欲は、どういうものなのか。ひとりよがりの自己顕示欲としてではなく、「清い欲」としてそれを位置付けていく。
  • 要点
    2
    何を遺すのが良いのか。お金、事業、思想を代表的なものとして取り上げて論じていく。そのどれもがそれぞれに素晴らしい価値を持っていることが語られる。
  • 要点
    3
    境遇や才能に恵まれなければ何かを遺せないわけではない。結論として誰にでも遺せる最も素晴らしいものを提示する。それは生き方である。

要約

後世へ何を遺すべきか

後世へ何かを遺すということ

明治27年の夏、箱根で行われた本講演のテーマは、「後世への最大遺物」であった。後の世に何かを遺したいと思う気持ちは多くの人に共通するものであって、内村鑑三も学生の頃には歴史に名を遺す人間になりたいと考えていた。しかし、キリストの教えを学び、その考えがなくなってきたと言う。そうした欲望は、見方によっては単なる自己顕示欲にも感じられるからである。

ただ、ここで内村はもう一度自分に問いかけた。安らかに天国へ往けばそれで十分なのかと。そこで、自分に命をくれたこの地球、この国、この社会に何も遺さずに死にたくはないと思い、「清い欲」がわいてきたのだと言う。つまり、「私がドレほどこの地球を愛し、ドレだけこの世界を愛し、ドレだけ私の同胞を思ったかという記念物をこの世に置いて往きたい」と考えるに至ったのだ。

では、何を遺すべきなのだろうか。

後世へお金を遺すということ
solvod/iStock/Thinkstock

遺すものとして内村は3つの例を語る。お金と事業と思想である。このどれも後世への素晴らしい遺産であると言う。

まずお金であるが、これを遺すことはともすれば卑しいと考えられがちである。しかし、それは違う。現実に起きている様々な問題は、それが社会問題であれ教育問題であれ、突き詰めて考えると金銭の問題が深く関係している。自らの子どものみならず、社会のためにお金を遺すという考えこそが重要であり必要なのだ。ここで、著者はアメリカの実業家たちの例を紹介する。生涯かかってためたお金を世界一の孤児院設立に捧げたジラード、黒人の子供たちの教育に私財を費やしたピーボディーといった人物である。

ジラードはフランスからアメリカに移住した商人で、妻に早くに先立たれ子供もなかった彼は、「ドウカ世界第一の孤児院を建ててやりたい」という目的だけで金を溜め、その資産の大半をニューオリンズとフィラデルフィアの2か所に孤児院を建てるために寄付した。

ピーボディーは貿易と銀行業で成功した実業家であった(要約者注:彼が設立したピーボディー銀行は現在のJPモルガンやモルガン・スタンレーのルーツとなった銀行である)。彼は貿易を行っていたイギリスのロンドンで貧困者への援助を行い、アメリカでは南部の子供たちの教育に尽力した。アメリカが大きく発展したのは、こうした「清き目的」を持った金持ちたちがいたことが大きいと内村は考えている。そして日本にもこうした実業家が出てきてほしいと願う。「百万両を国のために、社会のために遺して逝こうという希望は実に清い希望」なのである。

後世へ事業を遺すということ
roobcio/iStock/Thinkstock

お金は確かに「後世への最大遺物」の1つであるけれども、誰でもがお金をためて遺せるわけではない。内村自身も「私はとうてい金持ちになる望みはない」と言う。では、他に遺すべきものがないか。金よりもよい遺物は何だろうか。

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