イスラーム文化
その根柢にあるもの

未 読
イスラーム文化
ジャンル
著者
井筒俊彦
出版社
岩波書店
定価
712円
出版日
1991年06月17日
評点
総合
4.7
明瞭性
4.5
革新性
4.5
応用性
5.0
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イスラーム文化
イスラーム文化
その根柢にあるもの
著者
井筒俊彦
未 読
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ジャンル
出版社
岩波書店
定価
712円
出版日
1991年06月17日
評点
総合
4.7
明瞭性
4.5
革新性
4.5
応用性
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レビュー

本書は、司馬遼太郎から「20人くらいの天才らが1人になっている」と評された大学者、井筒俊彦によるイスラーム文化解説の決定版である。

昨今イスラームをめぐっては様々な情報が氾濫しているが、その中には信憑性の低いもの、偏見にとらわれてしまっているものも多い。しかし、この一冊は文庫で200ページほどとコンパクトでありながら、イスラーム文化の基礎をわかりやすく解説している。

かつて経団連の依頼により、グローバル化する時代に世界へ打って出ようとしているビジネスパーソンに向けて講演した内容は、理解の枠組みとして少しも古くなっていない。そして現在、同じ世界に住む隣人としてはもちろん、ビジネスの相手としても、イスラーム文化圏の人々と交流する機会は増え続けている。したがって、グローバル化が進展した現代に生きるものとして、本書に含まれている内容は必須の知識の一つであるといえるだろう。

しかし、イスラーム文化圏に関する知識は、これほど重要でありながら、欧米の文化圏に関する知識と比べ極端に浸透していない。それを逆手にとれば、本書を読むことで容易に大きなアドバンテージを得ることができる。また、すぐに実生活で役立つことがなくとも、こうした異なる考え方についてきちんと理解しておくことは重要である。異なるものへの理解こそが教養なのだから。ビジネスのためにも、そして教養のためにも強くお勧めしたい一冊である。

金松 豊

著者

井筒俊彦
1914-1993年。慶應義塾大学で西脇順三郎らに学ぶ。同大学教授、マギル大学教授(カナダ)、イラン王立哲学研究所教授などを歴任。哲学的意味論の分野で世界的評価を受ける。著書に『意識と本質』(岩波文庫)、『イスラーム哲学の群像』(岩波新書)、翻訳書に『コーラン』(岩波文庫)など多数。英文著作も多い。

本書の要点

  • 要点
    1
    イスラーム文化は、『コーラン』の解釈によってできあがっている。『コーラン』はイスラーム教徒にとって唯一無二の聖典であり、その解釈は日常の過ごし方から、法律や道徳、芸術に至るまで、生活すべてを覆っている。
  • 要点
    2
    イスラームの多数派、スンニー派の見解では、宗教は法律である。倫理的で善のみを行う神の意志が、イスラーム共同体の中で、体系として表現されたものがイスラーム法なのだ。
  • 要点
    3
    宗教を法として仕上げたスンニー派と対立するのが、理性では捉えられない宗教の精神性を重視するシーア派とスーフィズムである。この違いは『コーラン』の解釈の違いにも顕著に現れる。

要約

イスラーム世界を統一する一冊の本

イスラーム文化の源、『コーラン』
leolintang/iStock/Thinkstock

イスラームという文化は、ひとつの宗教を基盤として成り立つ、文化的枠組みといえる。イスラームはその地理的広がりからみても想像できるとおり、さまざまな伝統や慣習が絡み合う中で形成されてきた複雑な文化である。現在の時点でも、多数派であるスンニー派と、イランを中心とするシーア派の文化は根本的に違っている。しかし、このさまざまな要素を含んだイスラームはそれでもやはり一つの文化を形成している。その根底にあるのが、『コーラン』というただ一冊の本なのである。

『コーラン』は預言者ムハンマドが受けた神の啓示を記録したものであり、イスラーム教徒にとっての唯一無二の聖典である。イスラームを理解する上で最も重要なのは、イスラーム文化がこの『コーラン』の解釈によって出来上がってきたということである。「およそイスラーム的なものすべてが『コーラン』の解釈学にほかならない」のだという。

『コーラン』が対立と統一を生む
Zurijeta/iStock/Thinkstock

『コーラン』の解釈は、人間生活の全ての領域を覆っている。日本人が一般的に考える「宗教」と違うのは、イスラームは聖と俗を分けないという点である。たとえば、神社仏閣を聖なる領域として他と切り分けたりすることはない。イスラームでは「生活の全部が宗教」なのである。当然、政治や法律、あるいは道徳や芸術なども、すべてがそのまま宗教なのである。

このようにイスラーム文化は『コーラン』というただ一冊の本の解釈に根源があるとはいえ、テクストの解釈というものは本来的に自由であり、そのことがイスラーム文化の多様性につながっている。ときに真逆の意味にも解釈できてしまうというその自由さは、対立を生むことにもなる。現在に続くスンニー派とシーア派の対立はまさにそれなのである。

だが、多様性があり、対立があっても、メッカ巡礼の光景からも見てとれるように、イスラーム教徒の強烈な連帯意識は消えることがない。歴史的に、イスラーム共同体の指導者が、『コーラン』の解釈が許容範囲を越えてなされていると判断すると、異端宣告というかたちでそれを共同体から追放した。この異端宣告も、『コーラン』の解釈から生まれた制度であり、「神の敵」とみなされたものは死刑、全財産没収に処された。

つまり、『コーラン』がイスラームの対立を生み、また統一を生んできた。その繰り返しのなかで、イスラームの多層的文化構造ができあがったのである。

ユダヤ教、キリスト教との共通点と違い

イスラームの立場からすると、ユダヤ教、キリスト教、イスラームは根本的には一つの宗教であるという。『コーラン』の表現によると、それらはどれもひとつの宗教が形を変えて出現した「永遠の宗教」なのである。この考え方は、存在界を絶対無条件的に支配する唯一の人格神のほかは一切の神を認めない、一神教の伝統に基づく。

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