気候変動クライシス

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気候変動クライシス
ジャンル
著者
ゲルノット・ワグナー マーティン・ワイツマン 山形昭夫(訳)
出版社
東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
2,592円
出版日
2016年09月08日
評点(5点満点)
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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レビュー

地球温暖化が騒がれるようになって、はや数十年が経過した。日本においても、二酸化炭素などの削減を定めた京都議定書が1997年に採択されたこともあり、この問題への認知度や関心は割合高いといっていいだろう。

だが、地球温暖化についての議論が今どこに向かっているのか、きちんと把握している人はそれほど多くないのではないか。それもそのはず、本書でも述べられているように、地球温暖化という問題を捉えるうえでは、不確実性の問題が常につきまとうからだ。気候変動の問題はあまりにも複雑で、なかなか実態を体感しづらいという事情もある。

それでも、この問題に無知であることは、地球という私たちの住処に無知であることと同義だ。気候変動について学ぶことは、単に教養を深めること以上の意味と意義を持っている。著者たちの言うように、事態は深刻で、手をこまねいているわけにはいかないのかもしれない。その時、自分たちに何ができるのかを考えたことがあるかないかで、その後のアクションは大きく変わってくるにちがいない。

たしかに気候変動に関する問題はわからないことだらけだ。だからこそ、現在までに何が判明しており、何が判明していないのかを、できるかぎり把握することが重要である。この分野の最新の知見をわかりやすいかたちで知りたい? それならばまず本書を手にとってみてほしい。

石渡 翔

著者

ゲルノット・ワグナー (Gernot Wagner)
ハーバード大学工学・応用科学リサーチ・アソシエイト、同大学環境科学・公共政策レクチャラー。ハーバード大学環境センターフェロー。1980年生まれ。2008年から2016年まで、米国の著名な非営利団体で、市場ベースの問題解決策を重視する環境防衛基金(EDF)のエコノミストを務める(2014年からは筆頭上級エコノミスト)。スタンフォード大学で経済学の修士号を、ハーバード大学でPEG (Political Economy and Government)の修士号と博士号を取得。

マーティン・ワイツマン (Martin L. Weitzman)
ハーバード大学経済学教授。1942年生まれ。マサチューセッツ工科大学(MIT)、イェール大学を経て現職。環境分野ではノーベル経済学賞に最も近い候補の一人であり、強い影響力を持つ経済学者。米国芸術科学アカデミーフェロー、エコノメトリック・ソサエティフェロー(終身特別会員)。スタンフォード大学で統計学・オペレーションズリサーチの修士号を取得。

本書の要点

  • 要点
    1
    気候変動は、(1)全世界的な現象であり、(2)長期間続き、(3)不可逆的であり、(4)不確実性がきわめて高いという点で、他のあらゆる公共政策問題とくらべても特異な存在である。
  • 要点
    2
    気候変動の問題に対応するための唯一の正しいアプローチは、炭素を燃やすことについて、適切な値付けをすることである。
  • 要点
    3
    このままだと、10%の確率で温度が今後6℃上昇すると予想される。その被害は莫大なため、そうならないよう防止策を講じるべきだ。
  • 要点
    4
    ジオエンジニアリングは一見安上がりだが、重篤な副作用をもたらす可能性があるので、慎重に行なわなければならない。

要約

【必読ポイント】 炭素に責任をとらせよう

気候変動問題の「ビッグ4」
Coldimages/iStock/Thinkstock

気候変動は、他の環境問題とはまったく異なるし、他のどんな公共政策問題とくらべても特異な存在だ。気候変動は(1)全世界的な現象であり、(2)長期間続くのが確実である。しかも、気候変動は(3)不可逆的であり、(4)不確実性がきわめて高い。これら4つの要因を「ビッグ4」と呼ぶ。

まず、(1)気候変動は世界的な現象だ。このことは、まともな気候施策の実施を妨げる大きな要因のひとつとなっている。たとえば、費用が地元の負担となるのに、その便益が全世界的となったら、有権者たちの多くは公害制限を導入したがるだろうか。

次に、(2)気候変動は長期性の点でも独特である。過去10年は、人類史上で最も暖かい10年間だったし、その前の10年は、2番目に暖かい10年だった。変化が最も露骨なのは北極圏で、北極海の氷は過去たった30年の間に、すでに面積の半分を失い、体積にいたっては4分の3を失っている。だが、それすらも最悪の影響のほんの始まりにしかすぎない。

さらに、(3)気候変動は不可逆的だ。炭素排出をいきなり止めたところで、これからさきの何十年にもわたる温暖化、そして何世紀にもわたる海面上昇を覆すことはできない。こうした変化は長期的であるだけでなく、止めることがほぼ不可能である。

そして最後に、最も大きな特徴として、(4)不確実性がきわめて高いことがあげられる。なにしろ、なにがわかっていないのかもわかっていないのが現状なのだ。

きわめて高い不確実性について

今ある最高の気候モデルによる温度予測では、海面が20メートルも上がるとは予測されていない。これには2つの重要な理由がある。

第一に、ほとんどの気候モデルは必要以上にわかっていることのほうに偏っており、あまりに保守的になっているからだ。ごく最近まで、気候モデルのほとんどは海面上昇を予測する際、主に海面の熱膨張だけに基づいており、氷床の融解の影響を含めていなかった。極氷冠の融解についての科学的理解があまりにとぼしかったのである。

第二に、気候モデルはたしかにさまざまな部分を正確に示しはするが、気候の動きについてはまだわかっていない根本的な問題がいくつもある。たとえば、世界平均だけの数字を見ていると、局所的に起こっている変化を見逃すことになりかねない。また、前述したように、そもそもわかっていないことすらわかっていないという問題も潜んでいる。

人類が排出する地球温暖化公害物質の量、排出と大気中濃度の関係、濃度と温度の関係、温度と物質的な気候被害との関係、物理的被害とその結果――それらのすべてで不確実な点が残されている。しかも、社会がそれらにどんな対応策をとり、それがどの程度の効果をもたらすかも未知数だ。

たったひとつの冴えたやり方
Viktor_Gladkov/iStock/Thinkstock

気候変動の問題に対応するための唯一の正しいアプローチは、炭素を燃やすことに対して、社会への真の費用を反映した適切な値付けをすることである。それを実現するためには、税金をかけるという手段と、二酸化炭素の排出量に上限を設け、人々にその範囲内での取引をうながすという手段(キャップアンドトレード方式)の2つが考えられる。どちらのアプローチがすぐれているかについては、議論の決着はついていないが、きちんと行なわれるならばどちらでもかまわないだろう。

問題は、どうやって現実世界でそれを実現できるかということだ。世界はいまだに二酸化炭素1トンあたり15ドルもの補助金を出している。むしろ、正しいやり方は、1トンあたり40ドルの負担を上乗せするべきなのにもかかわらず、である。そこには既得権益や、複雑な政治プロセスといった問題が、密接に絡みあっている。

本書では、そういった政治的な局面に深入りすることはせず、基本的な経済学に立ち戻り、2つのトピックに的を絞る。

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気候変動クライシス
未 読
気候変動クライシス
ジャンル
グローバル 政治・経済 サイエンス
著者
ゲルノット・ワグナー マーティン・ワイツマン 山形昭夫(訳)
出版社
東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
2,592円
出版日
2016年09月08日
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