科学革命の構造

未 読
科学革命の構造
ジャンル
著者
トーマス・クーン 中山茂(訳)
出版社
みすず書房 出版社ページへ
定価
2,800円 (税抜)
出版日
1971年03月05日
評点
総合
3.3
明瞭性
3.0
革新性
4.0
応用性
3.0
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科学革命の構造
著者
トーマス・クーン 中山茂(訳)
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定価
2,800円 (税抜)
出版日
1971年03月05日
評点
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3.3
明瞭性
3.0
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レビュー

「パラダイム」は、すでに日本でも定着している用語だ。最近では、「思考の枠組みの変化」というような意味で、「パラダイム・シフト」などと言ったりすることが多いのではないだろうか。

このパラダイムという言葉を学術用語として使い、学界に新風をもたらしたのが、他でもない本書の著者であるトーマス・クーンである。1962年にアメリカで原書が出版されると、瞬く間に科学史、そして隣接する分野において数多くの議論を巻き起こした。

パラダイムはもともと「模範」や「典型」といった意味だが、クーンはこれを、「後の科学者にとって手本となるような業績」と定義する。そして既存のパラダイムが淘汰され、新たなパラダイムへ取って代わられていく様子を、「科学革命」として描く。

あくまで本書は科学史・科学哲学の専門書であり、科学知識や難解な表現が多く含まれている。そういう意味では、けっしてやさしい本ではない。また、50年以上前に世に出され、その直後から数多くの批判を受けてきたこともあり、日本語訳の最後には1969年にクーン自身が追補した「補章」が50ページ近く収録されている。そのため、議論をきちんと追いかけるためには相応の労力が必要だ。しかし、これこそがまさに、科学における諸理論が多くの批判や反証に晒されながらも、発展してきた様子を示しているのではないだろうか。

本書のような古典的著作にじっくり向き合い、自分なりの思考を試みる経験は、今後の技術発展や変革について考えるさいに、大きな助けとなるにちがいない。

櫻井理沙

著者

トーマス・クーン (Thomas S. Kuhn)
1922年、アメリカのオハイオ州でドイツ系ユダヤ人の土木技師の子として生れる。ハーバード大学で物理学を学び、1949年Ph.D.を得る。ハーバード大学、カリフォルニア大学、プリンストン大学で教えた後、1979年からマサチューセッツ工科大学(MIT)科学史・科学哲学教授。著書には本書のほか『コペルニクス改革』(1957、 邦訳:常石敬一訳、講談社学術文庫、1989)『量子物理学史』(1967)『科学革命における本質的緊張』(1977、邦訳:安孫子誠也、佐野正博訳、みすず書房、1998)『構造以来の道』(2000、邦訳:佐々木 力、みすず書房、2008)『黒体理論と量子論的不連続性 1894-1912』(1978)などがある。1996年癌のために逝去、73歳。

本書の要点

  • 要点
    1
    一部の科学史家は、「累積による発展」という科学史観にもとづいていては、科学をとらえられないことに気がついている。
  • 要点
    2
    「パラダイム」とは、他の対立・競争する科学研究活動を棄てて、それを支持しようとするグループを集めるほどのユニークさを持ち、さらに彼らに解決すべきあらゆる種類の問題を提示してくれるという、二つの性格を持つ業績である。
  • 要点
    3
    新しいパラダイムの基本的発明を遂げた人はほとんど、非常に若いか、その分野に新しく入ってきた新人かのどちらかである。

要約

科学の発展と通常科学

科学の発展をいかにとらえるか

この本のねらいとするところは、研究活動自体の歴史的記録から生じる、科学の全く違った観念を描いてみせることである。

もし、科学というものが、現在の教科書に集められているような事実、理論、方法の群であるなら、科学者とはある特定の一群に、ある要素をつけくわえようと努力している人間を指すことになる。この場合、科学の発展とは、科学知識やテクニックの山をだんだん大きく積み上げていく過程にすぎない。また科学史も、この知識の積み重ねを数えあげ、その集積の障碍となるものをならべたてる年代記にすぎないことになる。

新しい科学観の必要性
eternalcreative/iStock/Thinkstock

近年、一部の科学史家たちは、こうした「累積による発展」という科学観にもとづいてやっているだけではダメだということにだんだん気がついてきた。そして実際、科学は個々の発見や発明の累積として発展するものではないのである。

同時に、科学史家たちは、たとえばアリストテレスの力学やフロジストン(燃素説)にもとづく化学などの過去の理論について、「科学的」要素と、「誤り」や「迷信」などとして切り捨てられた部分とを、区別することがますますむずかしくなってきたと感じている。つまり、それまでの文脈を無視して、個別の発明や発見をすることのむずかしさをわかっているにもかかわらず、「一つ一つの貢献が積み重なって、科学という一枚の完成図ができあがっていく」というとらえ方に、本質的な懐疑が生じているのである。

通常科学と教科書

本書における「通常科学」とは、特定の科学者集団が一定期間、一定の過去の科学的業績を受けいれ、それを基礎として進行させる研究を意味する。現在、そのような基礎的業績が載っているのが教科書だ。教科書には一連の定説の説明、その応用、さらにその通用例と観測・実験との比較が記載されている。

このような教科書類が普及したのは19世紀はじめのことであった。それまでは、アリストテレスの『自然学』、プトレマイオスの『アルマゲスト』、ニュートンの『プリンキピア』と『光学』、フランクリンの『電気学』、ラヴォアジエの『化学』、ライエルの『地質学』といった有名な古典が、教科書の役割を果たしていたといえる。

「パラダイム」とは
ALLVISIONN/iStock/Thinkstock

数多くの科学の古典が、後に続く研究者の世代にとって、その研究分野の正当な問題と方法を定める役割をしていた。それができたのは、それらが以下の二つの本質的な性格を持っていたからだ。

一つは、彼らの業績が、他の対立競争する科学研究活動を棄てて、それを支持しようとする特に熱心なグループを集めるほど、前例のないユニークさを持っていたことである。もう一つは、その業績を中心として再構成された研究グループに、解決すべきあらゆる種類の問題を提示してくれていることである。

これらの二つの性格を持つ業績を、以下では「パラダイム」と呼ぶことにする。共通したパラダイムにもとづく研究をする人々は、科学にたいして同じ規則、同じ規準をもっている。その規準の採用と、それから生ずるものについての意見の一致は、通常科学の派生と継続のための必要条件となっている。

パズル解きとしての通常科学

通常科学の性格

通常科学の目的には、新しい種類の現象を引き起こすことは含まれていない。むしろ通常科学的研究では、パラダイムによってすでに与えられている現象や理論を磨き上げる方向に向かう。

通常科学的研究、あるいはパラダイムに根ざす研究は、(1)事実の測定、(2)事実と理論の調和、(3)理論の整備という三つの要素によって構成されている。パラダイムにしたがって仕事をすればまっすぐな道を前進することになり、パラダイムを捨てれば科学をやめることを意味する。

解があるパズルを解くという魅力

通常科学においては、どういう結果が出るかはごく専門的なこと以外は前もって解っていて、期待の幅も限られている。そして、結果がこの期待された範囲に入らないような場合はふつう失敗だとされる。自然をありのまま表現しているのではなく、科学者側に誤りがあるのだと見なされるのである。

通常科学の問題を解きあかすということは、

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