新・所得倍増論
潜在能力を活かせない「日本病」の正体と処方箋

未 読
新・所得倍増論
ジャンル
著者
デービッド・アトキンソン
出版社
東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
1,620円
出版日
2016年12月22日
評点(5点満点)
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
5.0
応用性
3.0
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レビュー

従来の日本型資本主義は、もはや時代遅れである。

著者デービッド・アトキンソン氏は、これまでもさまざまな場で、日本変革のための主張を続けてきた人物だ。本書はその集大成といえる一冊である。

著者によれば、日本型資本主義はもはや正常に機能しておらず、その結果、日本の生産性や所得が先進国で最低レベルになってしまったという。その結果、他の先進国に類を見ないほど、極端な貧困率を抱え込んでしまっているというのだ。

なぜそうなってしまったのか。著者は2つの主原因をあげている。ひとつは、日本人が見せかけの世界ランキングに酔いしれて、実態を把握できていないことだ。具体的な数字は本文に譲るが、1人当たりの日本の生産性を見ると、そのランキングの低さはまさに衝撃的である。

もうひとつの要因は、人口減少問題である。かつてもてはやされた日本型資本主義は、人口激増による人口ボーナスの恩恵を受けながら伸びてきた経済モデルというのが、著者の主張だ。そのため、人口減に転じた時点で、日本経済のあり方を全面的に変える必要があったのだが、いまだにその意識が足りていないのだという。

著者による日本再生の提言は鋭く、手厳しい。しかし本書を読みすすめていけば、それが著者の日本人に対する、高い期待の裏返しだとわかるはずである。「本来、日本はこの程度の国ではないはず」という著者の思いに応えるためにも、本書を読み、現状を捉えなおしてみてはいかがだろうか。

石渡 翔

著者

デービッド・アトキンソン (David Atkinson)
小西美術工藝社代表取締役社長。奈良県立大学客員教授。三田証券社外取締役。元ゴールドマン・サックス金融調査室長。裏千家茶名「宗真」拝受。
1965年、イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くレポートを発表し、注目を集める。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。同社での活動中、1999年に裏千家に入門。日本の伝統文化に親しみ、2006年には茶名「宗真」を拝受する。2009年、創設300年余りの国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社に入社、取締役に就任。2010年に代表取締役会長、2011年に同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ、旧習の縮図である伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。2015年から対外経済政策研究会委員、京都国際観光大使、2016年から明日の日本を支える観光ビジョン構想会議委員、行政改革推進会議歳出改革ワーキンググループ構成員、二条城特別顧問、日光市政策専門委員などを務める。著書にベストセラー『デービッド・アトキンソン 新・観光立国論』(山本七平賞、不動産協会賞受賞)『国宝消滅』(共に東洋経済新報社)、『イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る』『イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」』(共に講談社+α)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本人1人あたりの生産性は世界第27位であり、ギリシャよりわずかに高い程度である。
  • 要点
    2
    日本経済がここまで大きく成長したのは、1億以上の人口という「量」があったからだ。
  • 要点
    3
    諸外国ともっとも生産性で差があるのはサービス業の分野である。
  • 要点
    4
    生産性を追求しないのは、高度経済成長期の思い出を引きずった甘えである。
  • 要点
    5
    政府は経営者に対して、時価総額を上げるようにプレッシャーをかけていくべきである。

要約

なぜ日本人の生産性は低いのか

日本人の生産性はギリシャよりわずかに高い程度
jes2ufoto/iStock/Thinkstock

テレビや新聞では毎日のように「日本文化はすごい」「日本の技術は世界一」「世界が憧れる日本」といった情報が伝えられている。たしかに、さまざまな経済指標で日本は世界のトップクラスに位置している。GDPや製造業生産額、研究開発費では第3位、輸出額ランキングでも第4位だ。ノーベル賞受賞者数でも、2000年以降で見れば世界第3位である。これだけを見れば、日本が高い潜在能力を発揮しているととらえてもおかしくはない。

だが、日本が潜在能力を十分発揮できているかといえば、答えは「否」である。実際、日本はその高い潜在能力を、ほとんど発揮できていないといっても過言ではない。

驚くべきことに、1人あたりの生産性に目を移すと、日本は世界で第27位だ。この数字はイタリア、スペインよりも低く、ギリシャよりわずかに高い程度である。また、アメリカの州別の生産性と比較してみても、アメリカ全50州のなかで第49位と第50位の間、つまりミシシッピ州より少し高いだけだ。

世界第4位の輸出額も、1人あたりで見ると世界第44位にまで落ちるし、研究開発費も1人あたりの場合、世界第10位にとどまる。「1人あたりノーベル賞ランキング」も第39位なのが現実だ。

「失われた20年」のおそろしさ

事実を述べよう。先進国のなかで、日本は相対的にもっとも後退している国である。だが、日本国内では「失われた20年」と言われているわりに、何をどれほど失ってしまったのか、正しく認識されていない。

世界的には、生産性が急上昇している途上国は言うにおよばず、人口がそれほど増えていない先進国でも、経済成長は止まっていない。つまり、経済が20年も伸びていない日本は、どちらのカテゴリーにも当てはまらない「異常」な国なのである。

日本経済が後退し、さらに日本経済が伸びる見通しもなくなってしまうと、日本の国際社会における影響力も低下してしまう。当然、輸出にも悪影響が出る。今後、経済の優位性が揺らぐことで、日本の技術輸出はさらに不利な立場に立たされることになると予想される。

さらに、経済成長の鈍化は、「安全保障」にも支障をきたす可能性がある。日米同盟は先の戦争の遺産ではあるものの、アメリカにとっては、世界第1位と第2位の経済大国間の同盟という意味合いもあった。だが、このまま日本経済が低迷していくと、アメリカにとっての「同盟」の価値も下がることになりかねない。

日本経済が大きくなった理由は人口である
bowie15/iStock/Thinkstock

日本は世界第2位の経済大国だった時代から、ROE(自己資本利益率)がきわめて低く、経済成長が停滞しているという特徴があった。

それでも日本経済がここまで大きくなったのは、他の先進国と比較しても圧倒的優位な、1億以上という人口の数に支えられていたからだ。だからこそ、効率の悪い制度が多少あり、生産性が低くても、世界第2位というポジションを維持することができたのだ。しかし人口減少に傾いた現在、これまでと同じやり方は通用しなくなっている。

業界別に見る日本の生産性

日本は「ものづくり大国」ではない

生産性を業界別に分解して、くわしく見てみよう。まず、「ものづくり大国」日本の基幹産業となる製造業だが、絶対額で見れば、日本の製造業の総生産は1.3兆ドルで、先進国のなかでは第2位という地位を誇っている。しかし、1人あたり製造業総生産額だと1万0009ドルだ。

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未 読
新・所得倍増論
ジャンル
産業・業界 政治・経済
著者
デービッド・アトキンソン
出版社
東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
1,620円
出版日
2016年12月22日
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