ポジショニング戦略[新版]

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ポジショニング戦略[新版]
出版社
出版日
2008年04月14日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

広告業界のルールを劇的に変えたポジショニング戦略。あのマーケティングの父、コトラーに「今も威力を発揮する革命的コンセプト」と言わしめた、この戦略の端緒は、1972年に著者たちが発表した論文にさかのぼる。数十年前の理論と侮ることなかれ。その効力はP&Gやジョンソン&ジョンソンなど、あらゆる企業で実証され、現代でもマーケティングにおいて不動の地位を占めている。むしろ、情報社会を制する法則としてうまれた本理論は、ネットが広告やマーケティングの主戦場と化した現在こそ、その威力を遺憾なく発揮するといえよう。

2001年に刊行された原書の新版である本書では、ポジショニングの詳しい定義や特徴、その戦略の立て方と実践法か網羅的に紹介されている。例えば、商品のネーミング一つとっても、それが長期的成功を大いに左右する。たかが名前、されど名前。そう思わずにいられない。また、広告予算が少ない中小企業や、企業以外の組織、さらには一個人の売り出し方、ブランディングの展開の実例が豊富であるため、自分や組織を売り出したいすべての人にとって学び多き一冊だといえる。もちろん本書に登場するのは、ポジショニング戦略の本質が伝わる、選りすぐりの事例ばかりだ。

世界で読み継がれる本にはそれなりの理由がある。古くて新しいマーケティング戦略のバイブルを何度も読み返し、その知恵の数々を血肉にしていただきたい。

ライター画像
松尾美里

著者

本書で「ポジショニング」という新しい概念を提唱し、マーケティング界に一大旋風を巻き起こして以来、ともに世界屈指のマーケティング戦略家として活躍。共著に『マーケティング戦争』(翔泳社)、『マーケティング22の法則』(東急エージェンシー出版部)など。

アル・ライズ
現在、ライズ&ライズを経営。娘との共著に『ブランディング22の法則』、『インターネット・ブランディング11の法則』(ともに東急エージェンシー出版部)、『ブランドは広告でつくれない』(翔泳社)など。

ジャック・トラウト
現在、トラウト&パートナーズ社社長。著書に『大失敗!』(ダイヤモンド社)『大魔神が教えるマーケティングの極意』『無敵のマーケティング』(ともに阪急コミュニケーションズ)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    情報社会で商品やブランドを成功させるには、消費者の頭の中に商品を位置づけるという「ポジショニング戦略」が有効となる。
  • 要点
    2
    消費者の頭に刷り込み、確固たるポジションを築くには、そのセグメントで「一番乗り」をしなければならない。
  • 要点
    3
    業界のリーダーは、自分たちオリジナルのコンセプトを強調すべきだ。一方、リーダーを追う立場にあるものは、高価格や低価格といった、自分たちにしか埋められない「穴」を開拓する必要がある。

要約

【必読ポイント!】 マーケティング界を一変させた「新ルール」

ポジショニング戦略とは何か?

情報過多の時代において、コミュニケーションがうまくいかないのは、それに費やす時間や量のせいではない。問題は、「どのように」コミュニケーションをとるかである。

ポジショニングとは、情報があふれかえる現代社会で、人々にメッセージを届けるという難題を解決する、最も有効な考え方である。商品特性や価格、販路、広告宣伝などの切り口により、消費者の頭の中に商品を位置づける(ポジショニングする)というものだ。

広告コピーの世界においても、情報社会を制するのは現実に即した直球勝負のコピーだといわれる。新奇なイメージをつくり出すのではなく、消費者の頭の中に既にあるイメージを操作し、それを商品に結びつけるのだ。

人々の頭脳は、広告や本、テレビ、新聞などさまざまな形で情報の集中砲火を浴びている。その中で消費者の頭の中に食い込み、長きにわたって何かを印象づけたいのなら、ターゲットを絞り込み、細分化すること、つまりポジショニングが欠かせない。そのうえで、シンプルでエッジの効いたメッセージを発信するとよい。

一番手で頭の中に忍び込め
Melpomenem/iStock/Thinkstock

現代社会で効果的な広告を打つには、自分たちの耳を消費者の周波数に合わせなければならない。消えないメッセージを消費者の頭に刷り込むには、「一番乗り」がダントツ優位である。一番高い山、一番の会社。その道の一番なら、人の頭の中に確固たるポジションを築ける。

逆に、一番乗りできなければ、ポジショニング戦略では不利となる。今日、市場でのノイズはあまりにも大きい。いくらユニークな商品であっても、潤沢な資金を投入し、クリエイティブなキャンペーンを打っても、メッセージは消費者には届かない。だからこそ、「鶏口となるも牛後となるなかれ」と肝に銘じなければならない。

市場開拓では「小さなはしご」を見逃すな

人の頭脳は処理しきれない新しい情報を拒否する性質を持つ。情報社会では人の頭脳は容れ物として小さすぎる。そのため、商品の爆発的増加に対処するために、人々は商品やブランドを頭の中でランク付けするようになった。

新たな商品分野を開拓したいのなら、広告人は新しい「はしご」を持ってくる必要がある。つまり、新製品は必ず既製品に対抗する形でポジショニングしなければならない。すでに頭の中にあるものと関連づけることではじめて人は新しいものを受容できるからだ。例えば自動車が初めて発売されたとき、馬なし馬車というネーミングによって、既存の輸送機関に対抗するものとして、自動車は認知の足場を固められた。

もし自社が市場でトップシェアを占めていなければ、ナンバー2に一番乗りすればよい。

ポジショニング戦略を正しく実践するために

業界リーダーになるための必勝パターン
sunabesyou/iStock/Thinkstock

どの市場を見ても、リーダーはナンバー2のブランドを大きく引き離している。この圧倒的優位性を長期的に維持するには、「ザ・リアル・シング(本物)」にこだわることが欠かせない。「私たちはナンバー1」という自明の事実を繰り返すのではなく、自分たちオリジナルのコンセプトを強調するのだ。そうすれば、「私たちこそが本物であり、他はすべて真似である」という印象を消費者に与え、特別なポジションを維持できる。

また、リーディング・カンパニーの多くは、次々と別のブランドを導入し、マルチ・ブランドをカバーしている。

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要約公開日 2017.04.06
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