仕事と家庭は両立できない?
「女性が輝く社会」のウソとホント

未 読
仕事と家庭は両立できない?
ジャンル
著者
アン=マリー・スローター 関美和(訳)
出版社
NTT出版 出版社ページへ
定価
2,592円
出版日
2017年07月31日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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「女性が輝く社会」のウソとホント
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アン=マリー・スローター 関美和(訳)
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2,592円
出版日
2017年07月31日
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革新性
4.5
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レビュー

仕事と家庭の両立は、難しい。子育ては予測できないアクシデントの連続だし、突然親の介護が必要になったりする。この、現代の最重要課題の1つを理知的に考察して、全米で注目を集めた書籍の、待望の翻訳版が本書である。

著者は、オバマ政権のクリントン国務長官のもとで、女性初の政策企画本部長になった人物だ。しかし、2年後、著者はそのポストを降り、地元の大学の教授職に戻ることを決断する。思春期で問題行動を起こすようになった息子と過ごす時間を優先したためだ。

すると周りの、特に同世代の女性の目が変わったという。著者は、「家庭のために仕事を諦めた女」と見られ、それとなく格下げされたと感じた。そのときの考えをまとめた、女性と仕事についての記事は話題を呼び、その記事をもとに本書が執筆された。

本書を貫くのは、「家庭を大切にする女性や、男性が世間に認めてもらえないのは、おかしい」という著者の想いだ。そもそも「仕事と家庭の両立」というフレーズは、なぜ女性のみの肩に負わされているのだろう。育児に積極的な男性が、出世コースを外されてしまうのはなぜなのだろう。著者は、仕事と家庭の両立に関する偏見や、性的役割分担の思い込みなどを明らかにしつつ、育児や介護などの「人の世話(ケア)」をもっと社会的に評価すべきだと提案する。さらに、そのために個人や企業がとりうる行動や、政策によってできることを指し示している。本書は、働く親はもちろん、働きやすい職場づくりに取り組む人が多くの示唆を得られる一冊である。

河原 レイカ

著者

アン=マリー・スローター (Anne-Marie Slaughter)
プリンストン大学教授(国際法学・国際政治学)。ニューアメリカ財団CEO。女性初のプリンストン大学公共政策大学院院長、アメリカ国際法学会長を歴任。ヒラリー・クリントン国務長官のもとで政策企画本部長を務める。フォーリンポリシー誌が世界を代表する革新的なリーダーや知識人を選ぶ「世界の頭脳100」に2009年から4年連続で選出。2012年、女性の仕事と育児の両立の困難を訴えた記事「なぜ女性はすべてを手に入れられないのか」をアトランティック誌に発表し、全米で大きな話題を呼ぶ。フェミニズムの論客としても知られ、『リーン・イン』のシェリル・サンドバーグ(フェイスブックCOO)とともにその発言が注目されている。2児の母。

本書の要点

  • 要点
    1
    女性が仕事に打ち込み、結婚相手をいくら慎重に選んでも、仕事と家庭のバランスはあっけなくくずれることがあるという厳しい現実がある。女性にも、男性にも、職場にも、性別にしたがって役割が違うといったような根強い思い込みがあることが、この現実を生んでいる。
  • 要点
    2
    現状を変えるには、仕事と家庭の両立の問題を女性の問題とするのではなく、育児と介護の問題ととらえなくてはならない。「人の世話(ケア)」に社会的な価値を置くことが重要である。
  • 要点
    3
    「ケア」を重んじる社会に変わるためには、女性だけでなく、男性も運動を起こす必要があり、職場の変革も必要だ。

要約

女性神話のウソ

「必死に仕事に打ち込んでいれば」すべてが手に入る?
diego_cervo/iStock/Thinkstock

著者が、若い女性から必ず聞かれる質問がある。それは、「どうやって仕事と家庭を両立しているのか?」というものだ。

若い世代にかける決まり文句には定番がある。著者も自分に向かって唱えてきた決まり文句だ。それは次の三つである。必死に仕事に打ち込んでいれば、すべてを手に入れることができる。協力的な相手と結婚すれば、すべてを手に入れることができる。出産やキャリア形成の順番を間違えなければ、すべてを手に入れることができる。

これらはどれも間違いではないが、完全に真実というわけではない。

「必死に仕事に打ち込んでいれば」、ある意味では確かに仕事と家庭の両方を手に入れられるかもしれない。もしそのために子供にめったに会えなくてもいいと思うのなら。それが、経営の上層にいる男性たちのしてきたことだ。

しかし、ほとんどの場合、そうした男性の家庭では、配偶者が専業主婦になるか、少なくとも家事の大半を担っている。女性が彼らのやり方を真似ても、夫が家庭に入ったり、子育ての主導権を握ったりすることはほとんどない。現在の社会構造では、上をめざす女性が仕事に24時間365日打ち込んでしまえば、子どもの面倒を見る人が誰もいなくなってしまうのだ。

一方で、子育てや介護をうまくやりくりしている共働きのカップルは少なくない。けれど、子どもの病気、問題行動、配偶者が昇進して出張が増えるなど、慎重に調整した仕事と家庭のバランスは、突然の出来事であっけなく崩れてしまう。そのとき女性が、時間の融通の利かない職場から、自主的に「退場」することを余儀なくされてしまうことも多い。

「協力的な相手と結婚すれば」、「順番をまちがえなければ」、すべてが手に入る?

人生のパートナーを正しく選ぶことがキャリアにとって大切だという考えがある。結婚相手が平等に家事を分担してくれたら、仕事と家庭を両立できるという考えだ。

しかし、自分の人生がコントロールできるというのは幻想だし、正しい選択をしたつもりでも、独身に戻ってしまうこともある。それに、夫との家事の分担がフィフティ・フィフティでは、仕事で成功するためにはまだ足りない。現実には、仕事で成功を極めた女性には、半分どころかはるかに多くの家事負担を背負う配偶者がいる。なおかつ、たとえそのような夫を得たとしても、「子どもと一緒にいたい」という自然な欲求が沸いて、家庭に時間を割きたくなることもある。

さらに、キャリア形成に励んでから、「順番をまちがえずに」子育てにとりかかればうまくいくという考えも、現実的ではない。子供は計画どおりに授かるとは限らない。それに、たとえすばらしいタイミングで子供を授かったとしても、仕事のほうがタイミングに合わせてくれないということは当然ながら起こりうる。

男性神話のウソ、職場にひそむウソ

「男性だってすべてを手に入れられるわけではない」?

女性が仕事も家庭も「すべてを手に入れる」という話をすると、「男性だってすべてを手に入れられるわけではないのに」という議論が出てくる。そこには、真実の一片も、偏見も、両方含まれている。仕事をするだけでなく、もっと家族と時間を過ごしたいと思う男性は、周囲の人たちの冷たさに直面する。男性が子育てや介護のために休暇を申請すると、降格されるかクビになる可能性が高まるという研究結果もある。また、ほかの男性と比べて女々しいと捉えられ、職場では周囲の人からひどい扱いを受ける比率が高くなるという。だがしかし、こうした問題はあるにせよ、男性がアメリカ社会ではるかに権力と影響力を握っている立場にあることは否定できない事実だ。

「家族を養うのは男の仕事」?

「家族を養うのは男性の仕事」という思い込みも、改めて見つめ直さねばならない「神話」のひとつだ。そもそも、「養う」ということが、なぜ世話をすることでなく収入を得ることと捉えられているのだろう。

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