教養としての社会保障

未 読
教養としての社会保障
ジャンル
著者
香取照幸
出版社
東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
1,728円
出版日
2017年06月01日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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教養としての社会保障
教養としての社会保障
著者
香取照幸
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定価
1,728円
出版日
2017年06月01日
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3.8
明瞭性
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革新性
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レビュー

本書は、長年に渡り社会保障に携わってきた著者が、身近な問題でありながらも全体像の理解が難しい社会保障の本質を明らかにしたものである。まず、社会保障とは何かという制度体系の説明から始まり、マクロから見た社会保障、社会保障と日本社会・経済・財政との関わりについて非常にわかりやすく解説されている。「社会保障=理解が難しい」という図式を覆してくれるだろう。

多くの人は、自分自身が年金・保険料を納める場合、そして自分の身に何かあった場合にどれだけ給付が得られるか、子育てにどれだけの支援が得られるかといったミクロな側面から社会保障を考えがちである。しかし、少子高齢化を迎え、社会構造が変化してきている時代においては、マクロな側面からも制度を見直すという考え方が求められる。

今後は持続可能な社会に向けて、人口減少が進むことを前提に、女性の社会進出と、それを支えるための「身を切る改革」が企業に求められていく。しかし、著者の見解を読み進めるにつれ、社会保障が単なる負担でなく、大きな市場であることにも気づかされるだろう。また、社会保障改革の方向性、年金と雇用、医療や福祉などのサービス保障についての示唆に富む提言が盛り込まれており、日本の未来に対する漠然とした不安を解消してくれる。

大きな曲がり角に差し掛かっている日本の社会保障制度を理解することは、ビジネスパーソンにとって欠かせない「教養」の一つといえよう。生きた教養を本書で身につけていただきたい。

武田 与史記

著者

香取 照幸 (かとり てるゆき)
1956年(昭和31年)、東京都出身。東京大学法学部卒業。1980年厚生省(現厚生労働省)入省。1982年在フランスOECD(経済協力開発機構)事務局研究員、1990年埼玉県生活福祉部老人福祉課長、1996年厚生省高齢者介護対策本部事務局次長。2001年内閣官房内閣参事官(総理大臣官邸)、2002年厚生労働省老健局振興課長、2005年厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課長。2008年内閣官房社会保障国民会議事務局参事官、同安心社会実現会議事務局参事官、2010年厚生労働省政策統括官(社会保障担当)、内閣官房内閣審議官(社会保障・税一体改革担当)、2012年厚生労働省年金局長、2015年厚生労働省雇用均等・児童家庭局長等を経て2016年6月退官。2017年3月より在アゼルバイジャン共和国日本国特命全権大使(現職)。

本書の要点

  • 要点
    1
    社会保障とは社会不安を解消するために始まった制度であり、現在の日本では、国民の安心や生活の安定を支えるセーフティーネットとされている。社会保障の議論ではマクロとミクロ両面から考える必要がある。
  • 要点
    2
    社会保障の充実は、医療、介護、保育などの分野で雇用を創出することにつながる。
  • 要点
    3
    自立と連帯をもとに競争から共生へと社会を変革し、持続可能な社会をつくるという改革の方向性が望ましい。

要約

教養としての社会保障

本書の目的

社会保障には市民一人ひとりに関わるミクロな面と、経済学者などの専門家が関心をもつマクロな面とがある。しかも専門家の間でも、社会保障に関する見解は異なっている。医療や介護の現場にいる人や社会保障の学者は「給付」を中心に、経済学者はファイナンスを中心に考えてしまう。

そもそも社会保障の全体像を理解することは大変難しく、正しい理解が不十分なのが現状だ。そこで、長年社会保障に携わってきた著者が、社会保障をある種の「一般教養」として人々に理解してもらうために書いたのが本書である。

第Ⅰ部 社会保障の基本を理解する

社会保障の始まり

国家が担う近代社会保障は、産業革命と軌を一にして始まった。産業革命により、資本家と多数の労働者という階級が生まれた。労働者と資本家の階級対立は、社会の不安定化を招いていった。

この社会不安を解消するために生まれたのが近代社会保障制度である。その後、イギリスでは第二次大戦後に、国家の普遍的な機能として福祉国家の理念が語られるようになり、日本では1961年に国民皆保険・皆年金が達成された。

セーフティーネットとしての社会保障
Ildo Frazao/iStock/Thinkstock

現在の日本では、社会保障は「国民の『安心』や生活の『安定』を支えるセーフティーネット」であると定義される。現行制度は自助を中心に共助が支えるという仕組みである。

セーフティーネットの目的は、リスクを取ることを可能にすることである。経済活動は常に競争にさらされる。そのため、人々が思い切った決断ができ、失敗してもやり直しができるというように、自己実現に向けた挑戦を支える存在が必要だ。こうした役割を果たしてくれる社会保障は、社会の発展の基盤といえる。

第Ⅱ部 マクロから見た社会保障

マクロな視点からとらえる

一般的に社会保障の議論では、年金額、保険額、介護、子育てなど、国民一人一人の目から見たミクロな面にフォーカスすることが多い。一方、今後の国の社会保障をどのように維持するかということを、マクロな面からとらえることも同様に重要である。現在、人口減少・少子高齢化が進んでいるため、これまでと同じように考えていたのでは、問題を正しく議論できない。

女性の社会進出と子育て

社会保障は経済・財政と密接不可分な関係にある。財政再建と経済成長と社会保障の機能強化をトータルで考えなければならない。人口が減少しているため、これまでと同じ経済活動をしていたのでは、自動的にマーケットが小さくなる。よって、新たな需要をつくり出すなど、少ない労働力で生産性を上げることが急務である。

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