ゼロからの経営戦略
シリーズ・ケースで読み解く経営学1

未 読
ゼロからの経営戦略
ジャンル
著者
沼上幹
出版社
ミネルヴァ書房 出版社ページへ
定価
2,000円 (税抜)
出版日
2016年12月05日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.5
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ゼロからの経営戦略
ゼロからの経営戦略
シリーズ・ケースで読み解く経営学1
著者
沼上幹
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定価
2,000円 (税抜)
出版日
2016年12月05日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.5
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レビュー

すべては「ことば」から始まる。

私たちの世界の見方は、「ことば」によってかなりの部分が規定されている。逆に言えば、新たに「ことば」を知り、駆使することができれば、これまで見えてこなかった「現実」も生みだせるはずだ。

これは企業経営においても同様である。すぐれた戦略を知ることは、企業を成長させることに直結する。戦略とは単なるあとづけの理論ではなく、何もないところから望ましい「現実」を生みだすための、きわめて実践的な道標なのである。

本書は、経営戦略を組み立てるうえで基本となる「市場のつかみ方」から始まり、「成長シナリオの組み立て方」「経営資源」「ニッチ戦略」「業界を取り巻く環境」「イノベーション」へとテーマを展開させていく。本書のすばらしいところは、理論を出発点にして個々の事例を紹介するのではなく、生きた事例を手がかりにしながら理論を解説している点である。そのほうが、より直感的に戦略的思考を学べるからだ。「現実の企業に関するケースを読み解きながら、経営戦略の基本概念とその使い方を学び、その上、社会科学の面白さが伝わるような本を書きたい」と著者は冒頭で述べているが、その狙いはまさに成功していると言える。

私たちの多くは、企業の一員として日々を過ごしている。だからこそ、企業を語るための「ことば」を身に着けていないままでは、あまりにももったいない。本書を通して、経営学が培ってきた叡智にもっと耳を傾けてみてはいかがだろうか。

石渡翔

著者

沼上 幹(ぬまがみ つよし)
1960年 静岡県生まれ。
1985年 一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。
1988年 一橋大学員商学研究科博士後期課程単位取得退学の上、成城大学経済学部専任講師。91年から一橋大学商学部産業経営研究所専任講師、同助教授、一橋大学商学部助教授を経て、
現在 一橋大学大学院商学研究科教授/国立大学法人一橋大学理事・副学長。ミスミグループ本社取締役。
主著 『一橋MBA戦略ケースブック』東洋経済新報社、2015年
『わかりやすいマーケティング戦略 新版』有斐閣、2008年
『組織戦略の考え方――企業経営の健全性のために』筑摩書房、2003年。

本書の要点

  • 要点
    1
    戦略を考える際には、「常識」を疑って考え抜くクセをつけるべきだ。そのためには、目の前で起きている事象ではなく、その「背後にあるメカニズム」を掘り下げる必要がある。
  • 要点
    2
    戦略を立てるうえで最も重要なのは「顧客」だ。顧客の分類(セグメンテーション)を戦略策定の出発点とし、需要に供給を合わせることを徹底すべきである。
  • 要点
    3
    製品にはライフサイクルがある。市場が成熟期に入ったら、戦略の切り替えをしなければならない。そのためには、さまざまなデータを集め、市場のメカニズムを解明することが求められる。

要約

戦略的思考のすすめ

2つの不確実性
badmanproduction/iStock/Thinkstock

「不確実性の高い時代になった」と耳にする機会は多い。しかし、「不確実性」とは具体的に何を意味しているのか、しっかり考えている人は多くないはずだ。

不確実性は、(1)「自然の不確実性」と、(2)「人々が相手を出し抜こうとするが故に発生する不確実性」の2種類に大きく分けられる。このうち、ビジネスにおける不確実性は後者、すなわち、複数の人々の意思と行動が入り乱れた結果、事前に予測できない現象が起きることを指している。

ビジネス環境において何が起きるかを予測しにくい最大の理由は、「世の中には、自分の視野の外側に自分と異なる意思を持つ人間がいる」からである。自分の視野の外で努力している人がいて、その人の活動が自分にも影響を及ぼすような社会システムになっているのだから、予測していなかった事態と直面することは原理的に避けられない。

現代社会で、このような意味での不確実性が高まってきている原因として、インターネットや物流のスピードアップが挙げられる。これらによって、世界中の人々が緊密に結びつけられたことで、自分に影響を及ぼしうる人が増えたのだ。

特に日本企業について言えば、近くにいる競争相手のレベルが上がったことも、不確実性が高まった要因である。中国、韓国、台湾、インドの企業の成長は著しい。日本企業を脅かす新しいビジネスがどこから出てきてもおかしくはない。このままでは、多くの企業が国内の需要減少と海外との激しい競争に耐えられず、徐々に衰退していくことになるだろう。

「戦略」を考える思考力を武器にせよ

そのような時代を生き延びるためには武器が必要だ。その武器とは、「戦略」を考える思考力である。

ここでの「戦略」の定義は、自分が将来達成したいと思っている「あるべき姿」を描き、それを達成する上で整えるべき環境について分析すること、そして自分が持っている経営資源(能力)を意識しながら、事象の背後にあるメカニズムを分析し、「あるべき」姿に到達するシナリオを描くことだ。なかでも重要なのは、どこに注力すれば成果が最大化されるかを、ビジネスパートナーにしっかりと示すことである。

戦略を考えることは、すべての人にとって有用な知的作業だ。企業内の仕事だけでなく、ボランタリー組織の運営や資格試験の勉強、就職・転職活動、家計のやりくりなど、さまざまな局面で役に立つだろう。

もちろん、どれだけ戦略を練ったとしても、不確実性から完全に自由になることは不可能である。だが、たとえそうだとしても、人々の意思と相互作用から生まれる不確実性に対処しやすくなるし、事後的に何をすればいいのかも明確になる。

常識を疑い、考え抜くクセをつけよ
SIphotography/iStock/Thinkstock

戦略を立てるということは、シナリオを描くということだ。何かに焦点を絞り、良い循環をつくりだし、できるだけ自然に「あるべき姿」へといたる流れを創る。

このような戦略を考える際に、かならずするべきことが2つある。ひとつは「常識」を疑い、考え抜くクセをつけること、そしてもうひとつは、目の前で起きている事象の表層にとらわれず、その「背後にあるメカニズム」を掘り下げて考えることである。

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