乱読のセレンディピティ

思いがけないことを発見するための読書術
未読
乱読のセレンディピティ
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思いがけないことを発見するための読書術
未読
乱読のセレンディピティ
出版社
出版日
2016年10月10日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

本はじっくり読んではいけない。手当たり次第に読み、おもしろくなければ途中で投げ出す。まさに乱読がよい。著者はそう主張する。一見常識はずれに聞こえるかもしれない。しかし、本書を読み進めるうちに、なるほどと唸らされることだろう。

テクノロジーが進歩した現在、「知識を持っている」だけでは、人間はコンピューターにかなわなくなってしまった。コンピューターにはできず、人間だけができる活動が「思考すること」だと著者は語る。そのためには、ただ知識を積み上げるだけでは足りない。思考の飛躍が必要だ。そこで「乱読」なのである。自分の専門の本ばかり読んでいては新しい発想は生まれない。専門外の本も手当たり次第に読んでみることで新しいアイデアが生まれる。

本があふれるように存在する現在、すべての本を読む時間はもちろんない。だからこそ、乱読は力を発揮する。風のように流し読みするだけでも、十分に読書は効果がある、というのが著者の見解だ。

本書には、乱読の方法や効果はもちろん、おしゃべりがもたらす効果や、忘却の重要性など、様々な切り口からクリエイティブな発想を生む方法が書かれている。思いがけないことを発見する「セレンディピティ」を誘発する指南書といえよう。

もともと読書が好きな人もそうでない人も、本書を読めば新たな「偶然の発見」を楽しめるだろう。本の読み方をアップデートしたい方にぜひお薦めしたい一冊だ。

ライター画像
池田明季哉

著者

外山 滋比古(とやま しげひこ)
1923年、愛知県生まれ。お茶の水女子大学名誉教授。東京文理科大学英文科卒業。雑誌『英語青年』編集、東京教育大学助教授、お茶の水女子大学教授、昭和女子大学教授を経て、現在に至る。文学博士。英文学のみならず、思考、日本語論などさまざまな分野で創造的な仕事を続け、その存在は「知の巨人」と称される。著書には、およそ30年にわたりベストセラーとして読み継がれている『思考の整理学』(筑摩書房)をはじめ、『知的創造のヒント』(同社)、『日本語の論理』(中央公論新社)など多数。多くの知の探究者に支持された本書の続編『乱談のセレンディピティ』(小社)は、ビジネスマンの耳目を集めている。

本書の要点

  • 要点
    1
    本は手当たり次第に読むほうがよい。知識ばかりを身につけても思考力は磨かれない。新しい発想をもたらすのは「乱読」である。偶然手に取った本からひらめきが生まれる。
  • 要点
    2
    本はスピードを上げて読むべきだ。辞書を引きながらなめるように読むと、言葉の意味の流れが止まってしまう。ある程度のスピードを意識したい。
  • 要点
    3
    忘却は重要な効果を持つ。知識をすべて蓄えていると頭の中がいっぱいになってしまう。また、一度頭の中を整理してリセットするには、体を動かすのが効果的である。

要約

【必読ポイント!】 乱読のすすめ

乱読は最もおもしろい読書法
kurmyshov/iStock/Thinkstock

かつては、本はなめるように読むのがよいと著者は考えていた。しかし、難しい本をじっくり丁寧に読んでいると、知識は得られても、自ら考える力は育たない。

勉強熱心で真面目な学生が、大学の卒業論文でつまらないレポートのようなものを書いていた。参考にした本をそのまま写したようなものだ。それに引き換え、あまり勉強に熱心でなく、好きな本ばかり読んでいる学生が、時折、自分の考えを出した、おもしろい文章を書いた。そういう学生は、人の考えを借りて、自分のものだと勘違いするようなことはなかった。

おもしろい発見や思いがけないアイデアは、乱読から生まれる。人の意見に頼らず、自分の判断で本を選び、自分の金で買うとよい。図書館で借りた本やもらった本はありがたみが少なく、身にならないことが多い。よって本は身銭を切って買うべきである。

また、自分の力で本を選ぶことも重要だ。あふれるほどの本の中から何を求めて読むかを決めるのも、知的活動になる。そして、読めないものは途中で投げ出せばよい。おもしろくないものを無理に読む必要はない。本に義理立てして読了していれば、もの知りにはなるだろうが、知的個性はだんだん小さくなる。

本の選び方についても、やみくもに選ぶのがよい。世の中にはあまりにも多くの本が出ている。手当たり次第、あえて「これは」と思わないようなものを買ってくる。そうして、軽い好奇心につられて読むとおもしろい発見があるだろう。この乱読こそが、本があふれる今の時代にもっともおもしろい読書法なのである。

書評は当てにするな

本を買うときに、新聞や雑誌に載る書評を指針にする人もいるだろう。しかし、これは自分で本を選んでいるのではなく、単なる自己放棄にすぎない。

書評の多くは署名つきで書かれるが、実名で書く書評でその本を正しく批評することは難しい。出版された当初は賞賛された本が、今読んでみるとさほどでもないということや、その逆のこともよく起きる。

ある本を、出版された時点で正しく批評するのは限りなく難しい。したがって、本を選ぶときには、書評を当てにしないほうが賢明だ。

本は心の糧

著者は一方的に号令をかけ、命令する存在ではない。著者を必要以上に崇め奉ると、読者にとって得るものが少なくなる。

繰り返し読みたくなるような本を除けば、普段の読書では読み捨てでかまわない。本に執着するのは知的ではない。本を読んだら忘れるにまかせるのが一番よい。本を読んで、大事だと思ったことは自然と心に刻まれるからだ。心に刻まれなかったことをノートに書き留めても、結局はあまり意味がない。

書物は心の糧である。いくら栄養があるからといって、同じものばかり摂取していれば、栄養が偏って専門バカになってしまう。健康な読者をめざすなら、偏った大量の読書は改めなければならない。

知識はすべて借り物である
gpointstudio/iStock/Thinkstock

知識はすべて借り物である。いくら知識を覚えても、それは自分のものではない。一方、思考は、自力で行わなければならない。本を読んでものを知ると、賢くなったように錯覚するが、それは本当の人間力が備わったのではない。知識が化石のようなものであるのに対して、思考は生きている。

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要約公開日 2017.10.30
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