松下幸之助に学ぶ モチベーション・マネジメントの真髄
ダイバーシティ時代の部下の束ね方

未 読
松下幸之助に学ぶ モチベーション・マネジメントの真髄
ジャンル
著者
小笹芳央
出版社
定価
1,540円(税込)
出版日
2017年07月18日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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松下幸之助に学ぶ モチベーション・マネジメントの真髄
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ダイバーシティ時代の部下の束ね方
著者
小笹芳央
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1,540円(税込)
出版日
2017年07月18日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
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レビュー

とくに最近、言葉のもつ力の大きさを感じている人は多いだろう。わかりやすい例でいえば、過日の衆議院議員選挙でたびたび報道された「排除」、「さらさらない」といった発言である。

多くの有権者が感じたように、あのタイミングで発せられたこれらの言葉によって、選挙の風向きは大きく変わった。もっと別の言葉を選んでいれば、結果は違ったものになったかもしれない。それほどの力を言葉はもっているのである。

そしてそれはビジネスの現場でも同じだ。本書が、なによりも言葉を大切にした松下幸之助の言葉を取り上げつつ、ビジネスのマネジメント手法を解説しているのには、そういった意図が込められている。

もちろん一口に「幸之助の言葉」といっても、その内容は多岐にわたる。しかし自分が希望しない部署に配属された新入社員に対してユニークな表現で諭したやりとりや、損失を出した幹部にもう一度チャンスを与えたエピソードなどは、幸之助の人柄をあらわす典型例だと言えるだろう。もちろん時には厳しい表現をするときもあるが、基本的には温かみのある言葉をかけて、やる気を引き出すのが幸之助という人物であった。

来年3月、パナソニックは創業100年を迎える。一代で日本を代表する企業をつくりあげた幸之助の心中に秘められた大きな力を感じさせる、読後感さわやかな一冊である。

毬谷実宏

著者

小笹 芳央 (おざさ よしひさ)
1961年、大阪府出身。早稲田大学政治経済学部卒業後、㈱リクルート入社。2000年、㈱リンクアンドモチベーションを設立、同社代表取締役社長就任。気鋭の企業変革コンサルタントとして注目を集める。同社は設立8年で東証一部に上場、モチベーションエンジニアリングという独自の技術で幅広い業界からその実効性が支持され、設立以来急成長を続けている。現在は、モチベーションを切り口にした企業変革コンサルティング事業、個人のキャリアアップを支援するスクール事業、企業と個人をマッチングする人材紹介・派遣事業を展開するグループの代表として経営に携わる。講演会やテレビ出演などでも活躍する一方、『会社の品格』(幻冬舎)、『モチベーション・マネジメント』(PHP文庫)など著書多数がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    それぞれモチベーションが異なる人たちを束ねるには、理念やビジョンをきちんと言語化して示すことが重要である。
  • 要点
    2
    人を惹きつけ、新たな行動を引き出すには3つのステップがある。その最初のステップはアンフリーズ(解凍)だ。これは固定観念を破ったり、新たな気付きを与えたりすることを指す。
  • 要点
    3
    新たな気付きを与えることができたら、次はチェンジ(変化)のステップだ。新たな目標や意義を与え、それに向けて一歩踏み出すための安心感を提供するのである。
  • 要点
    4
    第3のステップが「リフリーズ(再凍結)」だ。ここでは正しい行動や望ましい振る舞い、新しい取り組みを定着させることが求められる。

要約

新たな気づきを与える

時間軸で考える
nevarpp/iStock/Thinkstock

人を惹きつけ、新たな行動を引き出すには3つのステップがある。その第1段階が「アンフリーズ(解凍)」だ。これは固定観念を破ったり、新たな気づきを与えたりすることを意味している。

アンフリーズを成功させるうえで効果的なのが、「時間のマジック」と「空間のマジック」だ。時間と空間を切り替えることで、当人の頭の中を支配している「世界」に変化を与えるのである。

具体的に述べていこう。「時間のマジック」とは、当人が囚われている、時間に対する見方を切り替える手法だ。たとえば目先のことで切羽詰まっている時には、時間軸を伸ばして長期的な視点を与えてあげる。逆に将来のことや長期のことばかりに気をとられて目の前のことが疎かになっている場合は、目先のことや「今」に集中させる。長期的な視点と短期的な視点の自在な切り替えこそが、当人が無意識のうちに囚われている固定観念を打破することにつながり、新たな気付きを導くのである。

どのような時間軸に切り替えればいいのかは状況によって異なるが、松下幸之助のエピソードや講話の中には、効果的に「時間のマジック」を活用しているシーンが随所に見られる。

部下の時間軸を伸ばす

昭和11年、松下電器(現・パナソニック)の分社である松下乾電池株式会社では、新入社員が35人程度集められ、幸之助を囲む懇談会がもたれた。そこで1人の新人社員が立ち上がり、「自分はてっきり松下無線に入社できると思っていたが、案に相違して乾電池に回された、ひどいやり方だ」と訴えた。

これに対して幸之助は「きみ、わしにだまされたとおもって10年間辛抱してみい。10年辛抱して今と同じ感じやったら、わしのところにもう一度来て、頭をポカッと殴り、おれの青春10年間を棒に振ってしまったと言ってやめたらいいではないか。わしは、たぶん殴られんやろうという自信をもっておるんや」と返答した。20年ほどのち、その新入社員は乾電池工場の工場長になった。

このエピソードはまさに、「若い部下の見ている時間軸を伸ばしてやる」という視点から生まれている。時間を伸ばしてやることで、目の前にある苦難を簡単に超えられるように受け止めさせた。それが部下のやる気や覚悟を引き出し、モチベーションを高めることにつながったのである。

対比して視界を広げる
egal/iStock/Thinkstock

一方の「空間のマジック」とは、空間的な視点の切り替えを指している。

人は行き詰まると、どうしても無意識のうちに特定の視界や視点に囚われてしまいがちだ。そこで幸之助は部下が固定観念に陥らないよう、しばしば何かと対比することで、より広い視野を部下に与えていた。

ある事業部の経営がなかなかうまくいかず、新任の部長が立て直しを図ることになったときのことだ。その部長は「いろいろ実態を調べましたが、これは必ずよくなります。だから半年間は黙ってみていてください。必ずよくします」と幸之助に挨拶した。これに対し幸之助は笑顔で対応した後、「きみ、私は、1年でも2年でも待つけどね、世間が待ってくれるかどうか、それは私は知らんで」と答えた。

このエピソードでは、「私は待つけど、問題は世間だよ」という言葉をかけることで、新任の事業部長に対し“世間”という視点を与えたのである。対比的な表現をすることで視界を変更させ、さらには「企業の発展は社会が決める」という信念を伝えている。企業や事業の本質的な存在意義をスパッと見抜いた、珠玉の言葉だといえる。

【必読ポイント!】めざすべき方向を示す

ロールモデルの重要性

「アンフリーズ(解凍)」ステップで新たな気付きを与えることができたら、次は「チェンジ(変化)」のステップに進む。

部下の意識や行動を変化させるためには、「目標のマジック」と「安心のマジック」がとくに効果的だ。目標のマジックは、アンフリーズされた状態の当人に新たな目標や意義を、一方の「安心のマジック」は、その目標に向かって一歩を踏み出すための安心感を与える技法である。

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