KAIKAする経営 の表紙

KAIKAする経営

次世代型経営モデルのススメ


本書の要点

  • KAIKA経営とは、「新しく多様な価値観、働き方、組織形態を経営の中に取り入れていく経営思想」である。個人のダイナミズム、組織のダイナミズム、組織の広がり(社会性)の3要素を同時に満たすことで、価値を創造し続ける企業に仲間入りできる。

  • 経営者は、長期的な時間軸と一つ上の視点(メタ視点)で物事を捉えることが求められる。今後は、やり方を根本から変える思考と全体最適を追求する「脱PDCA」のアプローチも重要となる。

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日本企業の経営課題~KAIKA経営が求められる背景~

VUCAの時代に求められるオープンイノベーション

現代は、Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧さの頭文字をとったVUCAの時代である。イギリスのEU離脱やアメリカでのトランプ大統領の誕生。そしてテクノロジーの目覚ましい進化と、産業の垣根の崩壊、ICTによるビジネスモデルの変革。企業を取り巻く環境の変化は加速度を増すばかりである。このような時代において、企業や組織は生き残りをかけて日々「変化すること」が求められている。JMAが実施した調査によると、日本企業の新規事業開発・イノベーションに関わる取り組みには、まだまだ伸びしろがあることが分かる。しかし、ある企業が自前のみでイノベーションを起こすことは、時間的にも難しい。そこで、自前の経営資源の限界を打ち破る戦略を構築し、スピーディーに高付加価値を創出する手段が求められている。それが、企業内部と外部のアイデアを融合させて新しい価値を生み出す「オープンイノベーション」という考え方だ。オープンイノベーションとは、企業が他社や大学、地方自治体などと連携し、革新的なビジネスを生み出していくという方法論である。

競争力の源泉となる「人材」の課題

Peshkova/iStock/Thinkstock

オープンイノベーションを創出している組織には、次の5つの特徴がある。それは、「何のためにやるのか」を重視する「目的志向」、同僚を進んで支援する「協働」、風通しのよさを大事にする「自由闊達」、会議で本音や異論が活発に出てくる「実質主義」、主体的に行動する「自律と責任感」である。イノベーションの源泉として最も重要なのは人材である。しかし、内閣府の調査によると、「仕事のやりがい」への満足度が長期的に低下傾向にあるという。根本的な人材に対する考え方や人事制度、働き方の見直しが急務だといえる。

PDCAからOODAへ

VUCAの時代においては、計画に基づいたマネジメントは機能しない。なぜなら、刻一刻と状況が変わる中で、計画を立てているうちに様々な前提が変化してしまうからだ。つまり、PDCAサイクルが機能不全になりつつあるといえる。そこで、PDCAサイクルのかわりに注目されているのがOODAという意思決定理論である。これは、Observe:観察・感知、Orient:情勢判断、Decide:意思決定、Act:行動から成る意思決定プロセスのことだ。企業経営において、環境の変化や予想外の事柄に迅速に対応するには、観察・感知と情勢判断により、変化をしっかりと把握したうえで意思決定をし、アクションを起こす必要がある。また、社員一人ひとりが自律的に行動し、組織も外部の情報を積極的に収集して、常に新しいことにチャレンジする姿勢が欠かせない。これらの実現をめざすのがKAIKAプロジェクトである。

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【必読ポイント!】 KAIKA経営とは何か

KAIKA経営の基本的概念

BrianAJackson/iStock/Thinkstock

KAIKAとは、日本企業の課題を解決するためにJMAが提唱している「新しく多様な価値観、働き方、組織形態を経営の中に取り入れていく経営思想」である。KAIKA経営の基本的概念は、個人のダイナミズム、組織のダイナミズム、組織の広がり(社会性)という3つの要素を同時に満たすことである。これが、価値を創造し続ける企業に欠かせない条件だと考えている。

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要約公開日 2017.12.07
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