社長の「まわり」の仕事術

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出版日
2017年11月11日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

世の中には、経営者が著者となっている本や、経営者について書かれた本がたくさん出ている。それらの内容はもちろん素晴らしい。だが、世の中のほとんどの人は、必ずしも経営者になるわけではないのではないか。経営者にならない人のほうが、多いのではないか。そのように、著者は冒頭で、執筆のきっかけとなった思いを述べている。

すごい経営者のまわりには、デキる人たちがたくさんいる。社長のビジョンを実現しようと奮闘している、社長の「まわり」の人がいる。その人たちの仕事の進め方から学ぼうというのが本書である。

本書には、特にエネルギッシュで若々しく、勢いのある経営者6人の「まわり」で活躍する13人が登場する。彼らの所属するのは、カルビー、DeNA、ストライプインターナショナル、隈研吾建築都市設計事務所、中川政七商店、サニーサイドアップ、と、まさに今伸び盛りの企業である。

社長の「まわり」の人がどんなふうに社長の意思を汲み取り、自分の仕事に落とし込み、社長の仕事を支えているのか。その仕事術は、世の中の多くのビジネスパーソンからしてみれば、等身大のものとして大いに参考になることだろう。著者ならではの着眼点が光る、斬新なテーマの一冊だ。ビジネス書初心者の方にも、また、巷のビジネス書は読み飽きたという方にも、ぜひおすすめしたい。

ライター画像
池田明季哉

著者

上阪 徹(うえさか とおる)
1966年兵庫県生まれ。早稲田大学商学部卒。ワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスとして独立。経営、金融、ベンチャー、就職などをテーマに雑誌や書籍、webメディアなどで幅広く執筆やインタビューを手がける。これまでの取材人数は3000人超。著書に『書いて生きていく プロ文章論』(ミシマ社)、『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』(あさ出版)、『職業、ブックライター。』(講談社)、『成功者3000人の言葉』(飛鳥新社)、『リブセンス〈生きる意味〉』(日経BP社)、『10倍速く書ける 超スピード文章術』(ダイヤモンド社)など多数。インタビュー集に、累計40万部を超えるベストセラーとなった『プロ論。』(徳間書店)シリーズなど。
公式ホームページ http://www.uesakatoru.com

本書の要点

  • 要点
    1
    経営者を支え、コミュニケーションをとっていくためには、工夫が必要になる。言われたことすべてに対応するのでなく、重要度に合わせて対応スピードを変えたり、忙しさを考慮して情報共有は短く正確にしたり、経営者に合わせた方法をとっていく。
  • 要点
    2
    経営者の「まわり」で働くことは、それまでと違う視点を得ることにつながる。たとえば、経営者の「先回り」を心がけることは、必然的に経営者の思考をたどることになり、自身の考え方を成長させる訓練になる。また、経営者のふるまいから、自然とメリハリのつけ方を学びとることもできる。

要約

カルビー代表取締役兼CEO 松本晃のまわり

急成長を遂げた「フルグラ」

カルビーといえば、「かっぱえびせん」や「ポテトチップス」など、昔ながらの大ヒット商品を持つ老舗の菓子メーカーのイメージを持つ人も多いだろう。しかし一方で、わずか5年で利益率を10倍以上に伸ばした、先進的な会社としても知られるようになってきている。その背後には会社の改革があり、改革を先導したのが、2009年に会長兼CEOになった松本晃氏である。

松本氏が、スナック菓子に次ぐ新しい事業の柱として目をつけたのが「フルグラ®」ことフルーツグラノーラだった。フルグラの売り上げは今や300億円。2000年代の10年間と比べて、売り上げ規模が10倍にもなっている。このフルグラの急成長を、松本氏のもとでマーケティング担当として担ったのが、藤原かおりさんだった。

「3回言われたら本気」というさじ加減
kobeza/iStock/Thinkstock

藤原さんに与えられたのは、30億円の売り上げをまずは100億円にする、という目標だった。そのために「フルグラプロジェクト」が立ち上がり、藤原さんと松本氏は月に1度、会議を行うことになる。

アメリカのシリアル市場が2兆円であるのに対し、当時日本の市場は250億円だった。その差は必ず縮まるはずだという仮説に基づき、藤原さんは動き始めた。まずは普通の食品のレベルで店に置いてもらえるように、配荷率を上げた。同時に、フルグラを売ってもらうモチベーションを作るため、社内の啓蒙を進めていった。藤原さんが大切にしたことは、新しいことをやっていこうという松本氏のスタンスにならって、会議ではやりたいことをどんどん提案すること、そして、言われたことを実行に移して実現することだった。

藤原さんがフルグラに携わって3年目になると、売り上げは143億円にまで伸び、目標は500億円になった。その頃から、松本氏は藤原さんに直接「こういうことをしたらいいんじゃないか」と指示をするようになったという。日々、いろいろなことを思いついて部下に伝えたくなるのがトップの性分だが、すべてに応えていては振り回されてしまう。そこで、藤原さんは、急ぐ必要のないものは後回しにしていった。もし3回言われたら、「本気だ」と受け止めて取り組む、というふうに、対応のさじ加減を身につけていった。

藤原さんは松本氏と仕事をするようになって、視点が変わったという。大きな視点で物事を見ること、しかし、実行には綿密な計画を立てること。いつでも冷静に、落ち着いた態度でいること。一生で一度きりの学びをここ数年で得られたと、藤原さんは語る。

【必読ポイント!】DeNA代表取締役会長 南場智子のまわり

現場から経営トップの側へ
amanaimagesRF/Thinkstock

中井雄一郎さんは、南場氏が代表に復帰するときに新設されたセクション「会長室」に配属され、唯一の会長専任担当となった。日々「会長が持つ力をいかに最大化するか」というミッションに取り組んでいる。

会長室の担当をする前は、オートモーティブ事業部でロボットシャトルの営業担当をしていた。現場からいきなり経営トップのすぐ側で仕事をすることになったが、中井さんに緊張はなく、成長の機会になりそうだとは思ったという。 「目的から入る」、「戦略から考える」、「事業部の大上段から理解して取り組む」というDeNAの基本に則り、会長が何に困っているのかを聞き出してやるべきことを次々と決めていった。

会長が会う人物の情報、案件の情報を、そのスケジュールの直前にコンパクトに伝えるのは、中井さんの役目のひとつだ。見やすさが大事なのでパワーポイントで絵入りの資料を作り、あえて紙で印刷して渡している。情報の鮮度もとても大切なので、ミーティング終了後もすぐに資料づくりに取りかかり、どんどん渡す。

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要約公開日 2018.03.16
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