僕たちはファッションの力で世界を変える
ザ・イノウエ・ブラザーズという生き方

未 読
僕たちはファッションの力で世界を変える
ジャンル
著者
井上聡 井上清史 石井俊昭(取材・執筆)
出版社
定価
1,980円(税込)
出版日
2018年02月06日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.5
革新性
4.5
応用性
4.0
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ザ・イノウエ・ブラザーズという生き方
著者
井上聡 井上清史 石井俊昭(取材・執筆)
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定価
1,980円(税込)
出版日
2018年02月06日
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レビュー

異国の地デンマークで外国人として育った井上聡・清史兄弟。2人は2004年、「ザ・イノウエ・ブラザーズ」というアートスタジオを立ち上げた。ファッション業界にいながら大量生産・大量消費社会に反旗を翻し、利益よりも社会貢献を追求。妥協しないものづくりを志向しながらも、生産から売り場まで、関わる人すべてに敬意を払う。そして貧困や環境問題を引き起こすこれまでのやりかたに全力で抵抗し、世界一のファッションブランドをめざす。そんな彼らの情熱は、一体どこからくるのだろうか。

本書では井上兄弟の生い立ちや考え方が赤裸々に綴られる。2人の情熱の原点となったのは、幼少時代に経験した差別や不条理、そして本当の正義について教えてくれた亡き父への思いだった。

また2人の考え方の指針となったガンディーやモハメド・アリらの言葉が、本書では何度も引用される。偉大な先人たちの言葉は短いながらも、兄弟の強い覚悟を表すのに十分な力強さをもつ。

信念にあふれながらも楽しんで仕事をする井上兄弟の生き方は、同じ時代を生きる私たちにとっても輝いて映るはずだ。もし社会に対して少しでも違和感をもっているなら、ぜひ本書を手に取ってみてほしい。「気持ちさえあれば、どんなやり方であってもチャレンジできる」という2人の信念は、きっとあなたの心を奮い立たせてくれるにちがいない。

ライター画像
菅谷真帆子

著者

ザ・イノウエ・ブラザーズ (THE INOUE BROTHERS…)
井上 聡 (Satoru Inoue)
井上 清史 (Kiyoshi Inoue)
デンマークで生まれ育った日系二世兄弟、井上聡(1978年生まれ)と清史(1980年生まれ)によるファッションブランド。2004年のブランド設立以来、生産の過程で地球環境に大きな負荷をかけない、生産者に不当な労働を強いない“エシカル(倫理的な)ファッション”を信条とし、春夏は東日本大震災で被災した縫製工場で生産するTシャツ、秋冬は南米アンデス地方の貧しい先住民たちと一緒につくったニットウェアを中心に展開する。さまざまなプロジェクトを通して、世の中に責任ある生産方法に対する関心を生み出すことを目標にしている。聡はコペンハーゲンを拠点にグラフィックデザイナーとして、清史はロンドンでヘアデザイナーとしても活動。そこで得た収入のほとんどを「ザ・イノウエ・ブラザーズ」の運営に費やす。
www.theinouebrothers.net

石井 俊昭 (Toshiaki Ishii)
1969年生まれ。青山学院大学卒業後、アシェット婦人画報社(現ハースト婦人画報社)などを経て、2010年にコンデナスト・ジャパン入社。『GQ JAPAN』編集部にてファッション・ディレクター、副編集長を務める。14年に退社し、フリーランスとして独立。雑誌、WEB、カタログ制作などの編集・執筆などを行う。16年よりリヴァー所属。さまざまなメディアのクリエイティヴ・ディレクションや広告のコピーライティング、企業のブランディングなど、多岐にわたって活動中。

本書の要点

  • 要点
    1
    「ザ・イノウエ・ブラザーズ」は、利益追求や事業拡大ではなく、社会貢献を主軸としたファッションブランドである。「スタイルは大量生産できない」を合言葉に、より高品質なものづくりを通して生産地に利益を還元している。
  • 要点
    2
    「大量消費社会というやり方しかない」という思いこみを取り払い、世の中に新たな仕組みを提示することが井上兄弟のミッションだ。
  • 要点
    3
    つくる人から着る人まで、すべての人が幸せになれるものが本当のラグジュアリーである。

要約

ザ・イノウエ・ブラザーズの誕生

ソーシャル・デザインへの関心
ToniFlap/iStock/Thinkstock

人間のもつ創造力で社会課題を解決しようとする取り組みを「ソーシャル・デザイン」と呼ぶ。このアイデアに触発された兄・聡と弟・清史は、亡き父の教えをもとに、アートスタジオ「ザ・イノウエ・ブラザーズ」を設立した。

ただし最終的な目標は明確だったものの、当初は会社の方向性がなかなか定まらなかった。そんな2人を見て、古くからの友人であるオスカ・イェンスィーニュスが、ボリビアのアルパカを用いたビジネスはどうかと提案。これがその後の2人の行く先を大きく決定づけるものとなった。

2007年にオスカの案内でボリビア視察に飛んだ聡は、土産物として売られるアルパカセーターが本来の価値を伝えきれていない様子を見て、ビジネスの可能性を感じるようになる。なによりデンマークで外国人として育った聡は、いままさに貧富の差を超えようと改革しているボリビアという国に強く惹かれた。

現地で試作したセーターを携え、聡はパリで小さな発表会を開いた。結果は散々だ。だが来てくれたバイヤーは、「ザ・イノウエ・ブラザーズ」のコンセプトに強く賛同してくれた。聡はものづくりに妥協することなく、世界一のアルパカセーターをつくろうと心に誓った。

アンデス地方で幸せを学ぶ

オスカはNGOとして、アンデス地方の貧困問題に関わっていた。そのときの経験から、貧困問題を根本的に解決するには、期間が限られるボランティアだと限界があると感じていた。だからこそビジネスの力で課題を解決しようとする井上兄弟を、ボリビアへと案内したのだ。

あらためてボリビアを訪れた井上兄弟とオスカは、首都郊外にあるアルパカ製品工房や、アルパカを飼育する牧畜民たちのもとを訪れた。ボリビアの労働者は過酷な環境に置かれており、将来の展望が描けないままだ。その一方で伝統を守りながら、貧しくとも力強く生活している。物質的な豊かさや経済成長のみが幸せではなく、それぞれの土地に固有の文化があり、すばらしい生き方がある。清史は彼らとのビジネスを通じて、自分たちが忘れていた“生きる力”のヒントを見出した。

2人にはそれまでファッション業界での経験がなかったし、失敗続きや資金不足で言い争うことも多かった。そんななかにあっても、話し合うことをやめない。信じているものや正しいと思うものの根本が同じだからこそ、片方が道を逸れても、もう一方が軌道修正をして前に進んだ。

世界一へのプレッシャー
zhaojiankang/iStock/Thinkstock

井上兄弟の父親はスタジオグラス作家として、ガラス作品で世界一の芸術家をめざしながら、44歳という若さで他界した。当時15歳だった聡は、父の遺志を引き継ぐこと、世界一であることに強くこだわるようになる。

だからこそ売り上げが伸び悩んでいた時期は、その焦りから他人につらく当たることも多かった。聡のプレッシャーを緩和するため、当初は資金面での協力に注力していた清史も、やがて活動そのものに深く関わるようになる。

“Style can’t be mass-produced…(スタイルは大量生産できない)”というコンセプトを貫きながらも、売り上げは伸ばさなければいけない。2人の困難な挑戦は続いた。

【必読ポイント!】 いかにして井上兄弟は生まれたか

デンマークへの反発心

2人が大量生産や大量消費をよしとする社会に抵抗を覚えるのは、その生い立ちが関係している。

白人社会のデンマークで、2人は日系2世として育った。幼稚園時代からいじめや差別を経験したうえ、父親が若くして亡くなったことで家計的にも苦しんだ。だが苦肉の策として、清史が学校の授業でみずから着る服をつくっていると、その服が評判を呼んだ。

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