Yahoo! JapanのビッグデータとAIが教える21世紀の投資戦略

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出版社
出版日
2018年04月25日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.5
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「金融資産、1億円」。多くのビジネスパーソンが目標としつつも、実現は難しいと感じている額ではないだろうか。これを「ビッグデータとAIで実現できる!」と高らかに宣言するのが、本書を著した岡田克彦氏だ。

岡田氏は複数の金融機関でトレーダーを勤めた後、ビッグデータを金融分野に応用する研究者となった異色の人物である。研究を株式投資に活用するためベンチャー企業を設立した彼のもとに、ヤフーから提携の誘いが舞いこんだ。「ものは試し」とヤフーが収集しているビッグデータを株価予測に使うと、精度が段違いだったという。

ヤフーの傘下に入り、同社のビッグデータをすべて活用できる立場を得た岡田氏だったが、彼が着目したのは株価の動きそのものではなく、その裏にある人間の心理だ。たとえば相場の格言のひとつである「五月に売れ」を検証したところ、株価の動きや新聞記事の論調も年の前半は強気、後半は弱気の傾向があるとハッキリ見てとれた。相場は空気や雰囲気に大きく影響されるのだ。このことから株価が実力とかけ離れたときに売り買いすれば、高い確率で収益を上げられると著者は主張する。

本書のタイトルから、難しい内容を想像される読者も多いかもしれない。しかし棒グラフが読めれば十分理解できるし、統計やデータ解析の知識も必要ない。資産形成に関する基礎知識とともに、平易にビッグデータやAIの威力を知ることができる、一石二鳥の一冊といえるだろう。

ライター画像
ヨコヤマノボル

著者

岡田 克彦 (おかだ かつひこ)
1963年、兵庫県に生まれる。関西学院大学大学院経営戦略研究科教授。行動経済学会会長。Magne-Max Capital Management社CEO。ワシントン大学大学院でMBAを取得。 神戸大学大学院博士後期課程修了。博士(経営学)。モルガン・スタンレーとUBS証券でデリバティブ・トレーディングと資産運用に従事。その後、シンガポールでヘッジファンド運用会社を共同経営したあと、研究活動に主軸を移す。専門は行動ファイナンス。
著書には『図解でわかる行動ファイナンス入門』(秀和システム)、共著には『人生に失敗する18の錯覚 行動経済学から学ぶ想像力の正しい使い方』(講談社+α新書)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    株式相場は、経済状況や企業動向だけで動いているのではない。人間が持つ感情が集積した空気感や雰囲気といったものに大きく左右されている。
  • 要点
    2
    著者の研究により、株式相場での収益性には明らかな季節性があること、さらに個別銘柄にも「モテ期」、つまり買われやすい時期があることが実証された。
  • 要点
    3
    長期的にいえば、株式投資は銀行預金よりも明らかに「儲かる」。ビッグデータやAIを活用し、平均より数%でも年間の収益率を上げれば、20年で1億円の資産を作るのも夢ではない。

要約

「これで日本の金融界を支配できるで!」

トレーダーからAI投資会社の社長に
PierreOlivierClementMantion/iStock/Thinkstock

著者の岡田克彦氏はAIの専門家ではなく、もともと日米の金融機関でトレーダーをしていたという経歴の人物だ。岡田氏は相場を動かす「ざわつき」の正体を解明したいという思いから大学院で金融経済学を修めた後、ビッグデータの解析に関する研究プロジェクトに参画し、金融分野に応用する研究を担当した。

そしてビッグデータやAIを株取引に活用する企業を立ち上げ、ニュースなどから株価を予測するアルゴリズムを開発したのだが、ベンチャー企業ではデータ収集の規模にも限りがある。そんな時に声をかけてきたのがヤフーだ。ヤフーは資産形成事業をはじめるにあたり、有力なパートナーを探していた。とんとん拍子に話は進み、岡田氏の投資会社には、ヤフーがさまざまなサービスから収集してきたデータが、数十枚のDVDに焼かれて提供された。

ビッグデータもAIも万能ではない

「これで日本の金融界を支配できるで!」ヤフーのビッグデータの威力に、岡田氏の会社は騒然となった。提供されたデータを株価予測のアルゴリズムにかけてみると、岡田氏の会社で独自に収集したデータから得られたものとは、精度が段違いだったのだ。

しかし株価予測は、ビッグデータとAIがあればすべて解決するほど単純な問題ではない。ある画像を見せて「ネコかどうか」を識別させるような問題であれば、AIは学習によって、非常に高い精度で判断することができる。一方で株価予測の場合、そううまくはいかない。「ネコかどうか」を識別するポイントはどんな画像でもそれほど変わらないが、人間は同じ条件下でも、かならず同じ行動を取るとは限らないからである。

グーグルはAIでインフルエンザの流行予測をおこない、1年目は見事に的中させたが、2年目はまったく当たらなかった。AIといえども、人間の行動の予測は非常に難しいのである。

なぜ月曜日の株価は金曜日より悪いのか

ビッグデータの分析には、「こういう法則性があるはずだ」という仮説を立てず、大量のデータそのものから法則性を見つける「データ中心アプローチ」という手法がある。しかしこの手法は株価予測では通用しない。株価はコイン投げと同じく、それまでの履歴から将来を予測できない「ランダムウォーク」だからだ。

では株価予測にAIを使うことが無駄かといえばそうではない。ポイントは株価そのものを予測するのではなく、投資家の心理を予測することにある。株価は「年の前半に上がり、後半に下がる」傾向が強いといわれる。また「月曜日の株価は、金曜日より悪い」という傾向もある。

こうした経験則をもとに、曜日、温度、湿度、天候などを取り込んだビッグデータを生成し、AIを使って精密に実証すれば、値上がりの可能性が高い銘柄ばかりを仕込むことも可能となる。

【必読ポイント!】AIが株価の割安タイミングを教える

群衆行動がゆがめる株価
Stefan Malloch/iStock/Thinkstock

投資家はどんなときも不安でいっぱいだ。まして大事件や大災害が起こったときは、「セオリー通りなら暴落するはずだ」と思っても、その判断に自信をもてない。起こった出来事が大きければ大きいほど、他の投資家の行動をマネするようになってしまう。

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要約公開日 2018.09.04
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.本文およびデータ等の著作権を含む知的所有権は岡田克彦、株式会社フライヤー に帰属し、事前に岡田 克彦、株式会社フライヤーへの書面による承諾を得ること なく本資料の活用、およびその複製物に修正・加工することは堅く禁じられています。また、 本資料およびその複製物を送信、複製および配布・譲渡することは堅く禁じられています。
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