土 地球最後のナゾ
100億人を養う土壌を求めて

未 読
土 地球最後のナゾ
ジャンル
著者
藤井一至
出版社
定価
1,012円(税込)
出版日
2018年08月30日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.0
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土 地球最後のナゾ
100億人を養う土壌を求めて
著者
藤井一至
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定価
1,012円(税込)
出版日
2018年08月30日
評点
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3.8
明瞭性
4.0
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4.5
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レビュー

地球の土──地味ともいえてしまいそうなテーマだが、足元の土は国際問題へ通じている。数多くの国際紛争の調停現場を渡り歩いてきたある日本人調停官によると、あらゆる戦争や紛争は、元をたどれば資源の取り合いが原因だという。地球の環境問題や国際問題を語りたいなら、足元から世界を俯瞰して見ることも必要なのだ。

著者が土の研究の道に足を踏み入れたのは、100億人にも達しようとする世界人口を養うだけの肥沃な土が地球上にあるのかと心配したことに端を発している。お腹いっぱい食べることができ、むしろ余った食糧を廃棄するような日常にいる私たちにはピンとこない視点かもしれない。しかし、安定した食糧供給には土壌が大いに関わっているし、その土壌がひとたび病原菌などに侵されて食糧難にでも陥れば、戦争に発展しうることは歴史が証明している。たかが土と侮っていると、ある日突然足元から平和な日常が崩れ落ちてしまう可能性もある。

本書によれば、地味で物いわぬ他国の肥沃な土壌をめぐって世界規模の争奪戦が勃発しているという。加えて、作物を栽培できる土壌だけでなく、植物の育たない砂にも商品価値があり、国境を越えて売買されているのだという。土の実態を知ることは、世界の国々の動向を洞察する上でも重要といえる。

単なる興味から気軽に本書を読み始めたのだが、思いもかけずグローバルに視座を高めることとなった。ぜひみなさんも、本書で、世界の土をめぐる探検の旅に出かけてみてほしい。決して退屈しないこと請け合いだ。

金井美穂

著者

藤井 一至 (ふじい かずみち)
土の研究者。国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所主任研究員。1981年富山県生まれ。京都大学農学研究科博士課程修了。博士(農学)。京都大学研究員、日本学術振興会特別研究員を経て、現職。カナダ極北の永久凍土からインドネシアの熱帯雨林までスコップ片手に世界各地、日本の津々浦々を飛び回り、土の成り立ちと持続的な利用方法を研究している。第一回日本生態学会奨励賞(鈴木賞)、第三十三回日本土壌肥料学会奨励賞、第十五回日本農学進歩賞受賞。著書に『大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち』(山と溪谷社)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    専門的には「土壌」は岩が分解されたものと死んだ動植物が混ざったものをいう。
  • 要点
    2
    土壌で重要な役目を果たすのが粘土と腐植だ。その含有量により保水力や養分保持力に差が出る。
  • 要点
    3
    世界の土を大まかに分類すると12種類あり、場所や気候によってその性質が異なり、農業の適否などが決定づけられる。
  • 要点
    4
    世界では国外に肥沃な農地を確保する争奪戦が繰り広げられたりもしている。が、足元の土の特徴を知ることで、多額な費用の必要ない、土壌改良のアイデアが生まれるかもしれない。

要約

自然の営みが生み出す地球の土

地球の土と宇宙の土を分かつもの
mkarco/gettyimages

地球の土について語る前に宇宙の土に目を向けてみよう。実は月や火星には土がない。

月面着陸を成し遂げたアームストロング船長が踏みしめたものは、専門家が定義する「土壌」とは異なるものである。「土壌」とは、岩が分解されたものと死んだ動植物が混ざったものを指す。つまり、動植物の存在を確認できない月や火星には土壌はないといえる。

ある仮説によると、地球と月はもとは一つの惑星だった。それが隕石の衝突により分裂した(ジャイアント・インパクト仮説)。ほぼ同じ材料でできている地球と月の運命を分けたのは、水と大気だった。地球では、岩石が水と酸素、多様な生物の働きによって分解される。このような「風化」によって、粘土が生まれて土の一部となった。地球の土壌と月の砂を分かつのが、この粘土の存在である。

火星は粘土が存在する点において地球の土に近いといえる。現在の火星の表面は凍っているが、かつて水や酸素が存在したため粘土が存在する。地球の土にあって火星の土にないものとは、腐植である。腐植とは、生物遺体が分解されて腐葉土となり、さらに変質したものである。その化学構造は複雑で、現代の高度な科学技術をもってしても解明できていない。土の中にうごめく無数の微生物にしか作れない驚異の物質なのである。

では、地球上の土がすべて土壌と呼べるものかというとそうでもない。西之島のように火山が噴火してできたばかりの島には土壌は存在しない。植物が育って枯れ、生物遺体が分解されて腐植となり、火山灰や岩の風化によって粘土が生まれる。そうしてそれら腐植と粘土をミミズが混ぜて食べ、ミミズの腸内の粘液によって土壌粒子がくっつき、ころころした塊となって排出される。地球の土壌はこうして生まれている。

粘土と腐植の不思議な力

不思議に思ったことはないだろうか。万有引力の法則に従うなら、植物に水をやってもすべて流れ落ちてしまうはずである。そうならないのは、そこに粘土の力が働いているからだ。

例えば、コップにストローを差し込むと、細いストローの中だけ水面が高くなる。これを毛細管現象といい、ストローの半径が小さいほど、持ち上げられる水面は高くなる。土の中では、土の粒子間にある無数の隙間が極細ストローの役目を果たすため、重力に逆らって水が保持される。粘土が多い土ほど極細ストローが多くなり、保水力が大きくなる仕組みだ。

一方、乾いた土に水をまいても水がなかなか浸み込まないこともある。これは乾燥した腐植が優れた撥水機能を持つためだ。だが、腐植はひとたび水となじんでしまえばスポンジのように水を吸収する性質もある。

さらに、粘土を多く含む土はより多くの養分を保持する力も持っている。例えば、青色の色水を粘土の多い土に注いでみると、ろ過されて透明な水が排出される。これは粘土粒子が持つマイナス電気に、プラス電気を持つ青色色素イオンが吸着するからだ。植物の栄養分となるカルシウムやマグネシウム、カリウムなども水の中でプラス電気を帯びたイオンとなって粘土粒子に吸着するため、粘土が多いほど養分も多く保持できる。

つまり、腐植と粘土を多く含む土は、保水力が高く、栄養分の多い、「肥沃な土」といえるのだ。

食糧生産を支える世界の土

始まりの土
markara/gettyimages

世界の土は、大まかに分類すると色や状態によって12種類に分けられる。その中に、21世紀には100億人に達するという地球上の人口を養えるだけの肥沃な土はあるのだろうか。著者は自分の目で見て探し出すべく、12種類の土をめぐる旅に出ることにした。

まず著者が長靴とスコップを片手に向かった先は、

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