不可能を可能にせよ!

NETFLIX 成功の流儀
未読
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出版社
サンマーク出版

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出版日
2020年02月25日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

ネットフリックスの創業者にして初代CEOのマーク・ランドルフによる回想録が登場した。マークがネットフリックスのアイデアにたどり着いてからサービスを開始し、株式公開を果たして同社を去るまでの約6年間を扱っている。そこには「世界を変えた男」の激動のドラマがあった。

いまやサブスクリプションのビジネスモデルで覇者といえるネットフリックス。しかし、1990年代半ばの時点では、マークは、アマゾンの成功に触発されてeコマースのアイデアを探していた、おそらく数千人のひとりにすぎなかった。ではなぜマークは成功したのか。ひとつは、現CEOであるリード・ヘイスティングスとの出会いである。もうひとつは、著者がスタートアップ創業期と抜群に相性がよかったことである。

本書は「これがクライマックスか」と思われる場面の連続だ。まずアマゾンによる買収、ブロックバスターへの身売りを巡るやりとりがある。ついで、CEOの座をめぐる実に人間臭い、しかし決して陰湿ではないドラマがある。もちろんチームの友情もある。さまざまな画期的なビジネスモデルが生まれてきた背景とプロセスも実に興味深い。

本書のキーフレーズをふたつ紹介しよう。ひとつは本書の原題にもなっている“That will never work”(それ、絶対うまくいかないわ)。そしてもうひとつは“Nobody knows anything”(先のことは誰にもわからない)である。これを念頭において、極上のビジネス・エンターテインメントを楽しんでいただきたい。

ライター画像
しいたに

著者

マーク・ランドルフ
Marc Randolph
ネットフリックス共同創業者で初代CEO。同社ウェブサイトのエグゼクティブ・プロデューサー、取締役を務めた。他にも数社のスタートアップ企業を共同創業して成功させ、そのキャリアは40年以上。また、会社を立ち上げたばかりの起業家のメンターを務めるとともに、多くのテクノロジー系ベンチャーへの投資家としても活躍してきた。業界イベントに講演家として招かれることも多く、若い起業家を対象としたさまざまなプログラムに関わっている。

本書の要点

  • 要点
    1
    マークとリードは、数々のアイデア出しと試行錯誤を経て、DVDを郵送でレンタルするというアイデアにたどり着き、マーケットを開拓していった。
  • 要点
    2
    ドットコムバブル崩壊という逆風と、レイオフという痛みを乗り越え、サブスクリプション、マッチングサービス、翌日配送という独自のビジネスモデルを構築し、株式公開にこぎつけた。
  • 要点
    3
    ネットフリックスでは立ち上げのときから、「徹底的な正直さ、自由と責任」という企業文化が生まれ、規模が拡大した後も、その文化が維持されている。

要約

「それ、絶対うまくいかないわ」

アメリカ初のインターネットDVDレンタル店
PeaFactory/gettyimages

マーク・ランドルフとリード・ヘイスティングスは、交代で車を運転しながら一緒に通勤をする仲だった。1997年当時、著者マークにわかっていたのは起業してネット販売をやりたいということだけだった。

車中では、考えたアイデアをリードにぶつけるものの、ことごとく跳ね返される日々だった。ある日、ビデオのeコマースというアイデアが、リードのアンテナに引っかかった。ここからすべては始まった。役割としては、マークが自分の時間を投資する、リードが資金を提供することに決まった。すなわち経営者と投資家である。

“That will never work”(それ、絶対うまくいかないわ)。これは、マークの妻ロレインが最初にこのアイデアを聞いたときの反応だ。何よりコストがかかりすぎる。だが、DVD郵送レンタルならうまくいくのではないか。マークはそう考え、アイデアの実現に向けて動き出す。

1998年4月14日、ネットフリックスのサービスが立ち上がる。アメリカ初のインターネットDVDレンタル店だ。DVDプレーヤーのオーナーは、住んでいる場所に関係なく、あらゆるDVD作品を確実に購入したりレンタルしたりできるようになると謳った。

マーケットをつくる

マークが最初にとりかかったのは、DVDおよびDVDプレーヤーのマーケット開拓だった。アメリカで初めてDVDプレーヤーが試験販売されたのは、その前年1997年の3月のことだった。サービス開始時点で、DVDのタイトルはわずか800。おかげで世の中にあるDVDすべての在庫があると謳うことができた。

最初のプロモーションは、東芝、ソニーといったメーカーとのタイアップだった。DVDプレーヤーを購入すると、無料でDVDをレンタルできるというクーポンをつけたのだ。メーカーは、ソフトがないからプレーヤーを買わないという消費者のジレンマを解くことができる。まさにウィンウィンの契約である。

サービスへのアクセスは急速に伸びた。しかし、客の多くは無料レンタルを利用した後に戻ってきてくれなかった。完全に持ち出しで、赤字が膨らむいっぽうだった。

もうひとつ悪い数字があった。当初の目論見に反して、売上の大部分がDVDの販売によるもので、レンタルの売上はわずか3%。アマゾンやウォルマートといった巨人が販売を始めたら、瞬く間にネットフリックスは踏み潰されてしまう。マークたちは、DVD販売かレンタルかという選択を迫られた。限られたリソースをどちらに投入すべきか。DVD販売は売上のほぼ全てだが、今後は確実に消えていくのが目に見えていた。

レンタルに絞り込む
erdikocak/gettyimages

そんな頃、アマゾンから声がかかった。買収の提案である。シアトルに飛んだマークたちは、アマゾンのオフィスで買収の提案額を聞き、彼らのケチぶりに度肝を抜かれる。アマゾンがDVDの販売に手を伸ばせば、規模でもコストでも歯が立たない。そしてマークたちに声がかかったという事実が、彼らがDVD販売に舵を切ったことを物語っていた。

買収に心は揺れたが、マークらは思い留まった。そして、売上のたった3%でしかなかったレンタルに賭けることを決意したのだ。

1999年、サブスクリプションモデルを導入し、レンタルは大幅に伸びた。しかし、ユーザーを広げるために、最初の1カ月を無料お試しにしたため、これが大きくコストを押し上げた。少なくとも加入者が100万に達するまでは、赤字が続く状態である。投資家の資金頼みの経営が続く。

ドットコムバブルの崩壊

2000年、ドットコムバブルが崩壊した。ネットフリックスは倒産こそ免れたものの、計画していた株主公開は延期へ。投資家の資金も、一転、手の届かないものになった。

そこで次にマークらが考えたのが、ブロックバスターへの身売り、ないしは提携の提案である。当時、ブロックバスターは9000店舗を構えるビデオレンタルの王者だった。ネットと実店舗、旧作中心と新作中心という具合に、両社は事業をうまく補完できると踏んだ。しかし、ブロックバスターのネット事業への評価は低く、一蹴されてしまう。

それまでもっぱら顧客獲得に注力してきたネットフリックスであるが、コストの削減に真剣に取り組まなければならないことが誰の目にも明らかになった。そこで、サイトからは余分な機能をそぎ落とし、レンタルプランも絞り込むこととなる。2001年夏には、ついに多くのメンバーに別れを告げざるをえないところまで追い込まれた。いよいよレイオフに踏み切ったのである。

【必読ポイント!】 先のことは誰にもわからない

サブスクリプション

1カ月定額料金を払えば、好きなDVDを借りっぱなしにできる。返却期限を気にしなくてもいいし、店舗に足を運ぶ必要もない。こうしたネットでのサブスクリプションのモデルは、当時は奇妙な仕組みとされた。

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要約公開日 2020.04.23
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