地中海世界

ギリシア・ローマの歴史
未読
日本語
地中海世界
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ギリシア・ローマの歴史
著者
未読
日本語
地中海世界
著者
出版社
定価
1,012円(税込)
出版日
2020年01月10日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

現代において大きな影響力をもつ、西洋文明の出発点はどこにあるのか。

そう問われたとき、多くの人がまっさきに思い浮かべるのは、ギリシアおよびローマのいわゆる「地中海世界」だろう。キリスト教的な東西ヨーロッパ文明はもちろんのこと、イスラム的な西アジア文明もこの地中海世界を母胎としている。こうした文明を通史的に学ぶうえで、地中海世界を避けて通ることはできない。とはいえ日本からすると、どうもなじみが薄い世界なのも確かだ。地理的にも文化的にも離れているし、遠い世界のことのように感じてしまう。

そこで本書の出番である。コンパクトな本ではあるが、けっして侮るなかれ。これ一冊で、2000年にわたるギリシア・ローマの歴史を体系的に学ぶことができてしまう。特にすばらしいのが、ギリシアとローマを別々に論じるのではなく、ひとつの一貫した歴史として描写していることだ。「なぜこう変わっていったのか」という流れがわかりやすく、実際に本書を読み終えて、権力がギリシアからローマへ移っていく過程への理解が深まった。

いわゆる「教養の書」として、押さえるべきところは押さえつつ、「奴隷」や「支配」といった概念についても、あらためて考えさせてくれる珠玉の一冊だ。なお、もともと本書は1973年に出版されたということで、その後のアップデートについては、本書の解説を務める本村凌二東京大学名誉教授の補足をご覧いただければと思う。さらなる知の世界へといざなってくれるはずだ。

著者

弓削達(ゆげ とおる)
1924年、東京生まれ。東京商科大学(現・一橋大学)卒業。東京大学教養学部教授、フェリス女学院大学学長等を歴任。2006年没。著書に、『ローマ帝国の国家と社会』『ローマ帝国とキリスト教』『素顔のローマ人』『永遠のローマ』『歴史学入門』『歴史家と歴史学』『ローマはなぜ滅んだか』ほか多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    地中海世界は、今日における主な西洋文化の生みの親である。このような地中海世界の形成をなしとげたのがローマ帝国だ。
  • 要点
    2
    自主・独立を重んじるギリシアの精神と文化は、「ポリス」という独特の共同体ないしは国家から生まれたものだった。
  • 要点
    3
    「ローマの平和」(パクス=ロマーナ)は、あくまでその「支配」の上に築かれていた。
  • 要点
    4
    ローマは市民共同体を志向していたものの、次第に立ち行かなくなり、その後は権力と暴力を原理とする国家へと移行していく。

要約

地中海世界

ローマなくして地中海世界はなかった

気候や風土などの自然環境が、そこに住む人々に影響を与えることは否定できない。とはいえ本書が扱う「地中海世界」とは、そうした自然的条件のことではなく、歴史のある時期に成立し、そして崩壊した歴史的世界のことを指す。

地中海世界は、今日における主な西洋文化の生みの親である。たとえばラテン的・ゲルマン的世界、ギリシア的・スラヴ的世界、オリエント的・アラブ的世界は、それぞれ地中海世界の崩壊から生まれた。また、キリスト教やイスラム教にまつわる文明も、もともとは地中海世界から発生したものだ。

地中海世界は、それ以前にあった多くの高度な文明を包括し、さまざまな矛盾と衝突を抱えながらも、ひとつの世界にまとめ上げた。このような地中海世界の形成をなしとげたのがローマ帝国だ。ローマなくして地中海世界は形成されなかっただろう。

ギリシア=ポリスと地中海世界
f8grapher/gettyimages

当時のローマの支配力は驚くべきものであった。それは領土の広さだけを意味しない。実際、同時代の人々がもっとも感銘を受けたのは、ローマがギリシアの文化を同等のものとして受け入れ、地中海世界に空前の繁栄をもたらしたことにあった。

もともとギリシアの世界は、ローマの支配が及ぶ百年以上前に衰退し、他国の支配に屈していた。だがローマは地中海世界を支配するなかで、自主・独立を重んじるギリシア人の精神と、それを育んだ文化を後世に伝えていった。それはギリシア人のつくり上げた「ポリス」という、独特の共同体ないしは国家から生まれたものだった。

ポリスとは一体どのようなもので、どう成立したのか。この問いをまず考えなければ、地中海世界を捉えることはできない。

ギリシアとポリス

ポリスの拡散・増加と商業交易の活性化

400年続いた暗黒時代のあと、ギリシア世界の黎明期が訪れた。それが古典ギリシアであり、ポリスの世界だ。

ポリスは一般的に「要砦(ようとりで)」を意味する。この言葉をギリシア人の国家に限定して使ったのは、アリストテレスの『政治学』が最初であった。彼によると、ポリスは複数の村落(コーメー)が合併して生まれたという。その背景には、防衛的・軍事的関心と、経済的関心の2つが働いたと見られる。

ポリスは基本的に、それぞれの村落の貴族層による政治統合だ。ゆえに実質的には、貴族が官職を独占していた。これに対して一般市民は、奴隷と家畜を用いて農耕に従事し、ときには余剰生産物を用いて交易を行なっていた。

とはいえ一般農民の生活は苦しく、貴族の間でも党争が繰り返されたため、没落農民と不平貴族は、次々と新天地を求めて植民地を開拓していった。こうしてギリシア=ポリスは、徐々に拡散・増加し、貨幣が用いられるようになったことも相まって、地中海地方では商業交易が活性化していく。

自主性を重んじる精神が文化を花開かせる

個人の自主性を重んじるポリスは、新しい文化を次々と生んでいった。まず発展していったのが、

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