資本主義の先を予言した史上最高の経済学者

シュンペーター

未読
シュンペーター
資本主義の先を予言した史上最高の経済学者
シュンペーター
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シュンペーター
出版社
出版日
2022年06月16日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「イノベーション」という言葉はビジネスのさまざまな場面で耳にすることだろう。企業の経営方針でふれられ、さらなる成長の起爆剤としての期待がこめられていることも多い。

このイノベーションという言葉の生みの親こそ、本書の主役であるシュンペーターだ。彼はイノベーションの他にも「アントレプレナー」「創造的破壊」といったビジネスで重要な用語を生み出してきた。シュンペーターの理論は常に前を向き、停滞した現状を打破するような魅力を持つ。だからこそ、経済の停滞した現代において注目を浴びているのだろう。

著者の名和高司氏はシュンペーターの主著三冊をもとに、その理論の本質と魅力を語りつくす。第1部では、シュンペーターの生涯を振り返り、彼の思想の神髄に迫る。第2部では、シュンペーターの思想のコアとなる「イノベーション」を掘り下げていく。要約では「新結合」「アントレプレナー」「銀行家」というキーワードをピックアップした。そして第3部では、黄昏に向かう資本主義とその後の社会について、シュンペーターの考えを明らかにしていく。

本書を読めば、シュンペーターの人物像、イノベーションの本質、そして資本主義の行く末について、大局的に学べるうえに、関連知識とのつながりも見えてくる。まさに「新結合」の源泉に満ちた一冊といってもいい。未来を拓くためのヒントをつかんでいただきたい。

著者

名和高司(なわ たかし)
京都先端科学大学ビジネススクール教授、一橋大学ビジネススクール客員教授
東京大学法学部卒、三菱商事(東京、ニューヨーク)に約10年間勤務、ハーバード・ビジネス・スクール修士(ベーカースカラー授与)。シュンペーターおよびイノベーションを主に研究。2010年まで、マッキンゼーのディレクターとして、約20年間、コンサルティングに従事。自動車・製造業分野におけるアジア地域ヘッド、ハイテク・通信分野における日本支社ヘッドを歴任。日本、アジア、アメリカなどを舞台に、多様な業界において、次世代成長戦略、全社構造改革などのプロジェクトに幅広く従事。イノベーション研究グループのグローバルリーダのひとり。デンソー(~2019年まで)、ファーストリテイリング、味の素、SOMPOホールディングス(いずれも現在も)などの社外取締役、ボストン コンサルティング グループ(~2016年まで)、インターブランド、アクセンチュア(いずれも現在も)などのシニアアドバイザーも兼任。近著に『パーパス経営──30年先の視点から現在を捉える』『企業変革の教科書』(ともに東洋経済新報社)、『稲盛と永守──京都発カリスマ経営の本質』『経営改革大全──企業を壊す100の誤解』(ともに日本経済新聞出版)、『コンサルを超える──問題解決と価値創造の全技法』『成長企業の法則──世界トップ100社に見る21世紀型経営のセオリー』(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    シュンペーターの理論は、かつてケインズ経済学の影に隠れてしまっていた。だが、停滞した経済を破壊していく力を想起させる彼の思想を、いまこそ見直すべきである。
  • 要点
    2
    イノベーションのカギは「新結合」だ。内発的な営みによって行動し続けるアントレプレナーと、彼らの信頼を保証する銀行家が重要なキーパーソンとなる。
  • 要点
    3
    シュンペーターは、資本主義は必然的に社会主義へと移行すると考えた。そして、これまでの資本主義でもなく社会主義でもない「新たな社会主義」を提唱した。

要約

シュンペーターは何者か

孤高の思想家

近代経済の偉人といえば、近代経済学の父アダム・スミス、共産主義経済学を説いたカール・マルクス、マクロ経済学の創始者ジョン・メナード・ケインズの名が挙がる。実はヨーゼフ・アロイス・シュンペーターも、彼らと並んで近代経済学を代表する一人である。シュンペーターは1883年に生まれ、1950年に亡くなった。ケインズと同世代を生きた人物だ。

シュンペーターの思想は当時の主流だったマクロ経済学からは傍流扱いされており、彼はまさに孤高の思想家だった。しかし、シュンペーターの理論は、「資本主義の終焉」といわれる現代こそ見直されるべきである。

シュンペーターは「イノベーション」「アントレプレナー」といった言葉を生み出した。彼の理論の魅力は何なのか。それは「外部環境ではなく、内発的なイノベーションこそが経済と社会の進化をもたらし続ける」という考え方である。そして停滞した経済を打破していく力をもっているのだ。

マクロ経済の主流となったケインズ理論
Rafmaster/gettyimages

ケインズは、恐慌の真っ只中において政府が積極的に経済に介入して需要をつくるべきとする「需要重視型」経済理論によって、時代の寵児となった。その後ケインズの理論は、米国の「ニューディール政策」にも取り入れられ、マクロ経済学の主流となっていく。

ケインズ経済学は短期的には景気を押し上げる効果が期待できる。一方で、財政悪化やインフレをもたらすという強烈な副作用もある。シュンペーターはこのケインズ理論に対して批判的だった。それは、ケインズが「技術や資本設備が一定」という前提のもとで経済を捉えていたためだ。シュンペーターから見たケインズ理論は、経済がもつ本来のダイナミズムを見失った短期的な救済措置にすぎなかった。

ドラッカーに影響を与えたシュンペーター

シュンペーターを再発見したのは、マネジメントの発明者ピーター・ドラッカーである。ドラッカーは、シュンペーターを「最も偉大な近代経済学者」とし、自身の思想においても多くの共通点をもつ。

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要約公開日 2022.09.23
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