シュンペーターの表紙

シュンペーター

資本主義の先を予言した史上最高の経済学者


本書の要点

  • シュンペーターの理論は、かつてケインズ経済学の影に隠れてしまっていた。だが、停滞した経済を破壊していく力を想起させる彼の思想を、いまこそ見直すべきである。

  • イノベーションのカギは「新結合」だ。内発的な営みによって行動し続けるアントレプレナーと、彼らの信頼を保証する銀行家が重要なキーパーソンとなる。

  • シュンペーターは、資本主義は必然的に社会主義へと移行すると考えた。そして、これまでの資本主義でもなく社会主義でもない「新たな社会主義」を提唱した。

1 / 3

シュンペーターは何者か

孤高の思想家

近代経済の偉人といえば、近代経済学の父アダム・スミス、共産主義経済学を説いたカール・マルクス、マクロ経済学の創始者ジョン・メナード・ケインズの名が挙がる。実はヨーゼフ・アロイス・シュンペーターも、彼らと並んで近代経済学を代表する一人である。シュンペーターは1883年に生まれ、1950年に亡くなった。ケインズと同世代を生きた人物だ。シュンペーターの思想は当時の主流だったマクロ経済学からは傍流扱いされており、彼はまさに孤高の思想家だった。しかし、シュンペーターの理論は、「資本主義の終焉」といわれる現代こそ見直されるべきである。シュンペーターは「イノベーション」「アントレプレナー」といった言葉を生み出した。彼の理論の魅力は何なのか。それは「外部環境ではなく、内発的なイノベーションこそが経済と社会の進化をもたらし続ける」という考え方である。そして停滞した経済を打破していく力をもっているのだ。

マクロ経済の主流となったケインズ理論

Rafmaster/gettyimages

ケインズは、恐慌の真っ只中において政府が積極的に経済に介入して需要をつくるべきとする「需要重視型」経済理論によって、時代の寵児となった。その後ケインズの理論は、米国の「ニューディール政策」にも取り入れられ、マクロ経済学の主流となっていく。ケインズ経済学は短期的には景気を押し上げる効果が期待できる。一方で、財政悪化やインフレをもたらすという強烈な副作用もある。シュンペーターはこのケインズ理論に対して批判的だった。それは、ケインズが「技術や資本設備が一定」という前提のもとで経済を捉えていたためだ。シュンペーターから見たケインズ理論は、経済がもつ本来のダイナミズムを見失った短期的な救済措置にすぎなかった。

ドラッカーに影響を与えたシュンペーター

シュンペーターを再発見したのは、マネジメントの発明者ピーター・ドラッカーである。ドラッカーは、シュンペーターを「最も偉大な近代経済学者」とし、自身の思想においても多くの共通点をもつ。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3498/4343文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2022.09.23
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

世界史の構造的理解
世界史の構造的理解
長沼伸一郎
2025年日本経済再生戦略
2025年日本経済再生戦略
成毛眞冨山和彦
ベンチャーキャピタル全史
ベンチャーキャピタル全史
鈴木立哉(訳)トム・ニコラス
絶対悲観主義
絶対悲観主義
楠木建
永守流 経営とお金の原則
永守流 経営とお金の原則
永守重信
創造力を民主化する
創造力を民主化する
永井翔吾
超訳 アンドリュー・カーネギー 大富豪の知恵 エッセンシャル版
超訳 アンドリュー・カーネギー 大富豪の知恵 エッセンシャル版
アンドリュー・カーネギー佐藤けんいち(編訳)
逆境を楽しむ力
逆境を楽しむ力
岩出雅之

同じカテゴリーの要約

世界のマネジャーは、成果を出すために何をしているのか?
世界のマネジャーは、成果を出すために何をしているのか?
井上大輔
若者恐怖症
若者恐怖症
舟津昌平
すごいフィードバック~心が動き、行動が変わる!
すごいフィードバック~心が動き、行動が変わる!
戸田久実
無料
トリニティ組織
トリニティ組織
矢野和男平岡さつき(協力)
若者が去っていく職場
若者が去っていく職場
上田晶美
完訳 7つの習慣
完訳 7つの習慣
スティーブン・R・コヴィーフランクリンコヴィージャパン(訳)
「仕事ができるやつ」になる最短の道
「仕事ができるやつ」になる最短の道
安達裕哉
1分で話せ
1分で話せ
伊藤羊一
人を動かす 改訂新装版
人を動かす 改訂新装版
D・カーネギー山口博(訳)
部下をもったらいちばん最初に読む本
部下をもったらいちばん最初に読む本
橋本拓也