世界史の構造的理解

現代の「見えない皇帝」と日本の武器
未読
日本語
世界史の構造的理解
世界史の構造的理解
現代の「見えない皇帝」と日本の武器
未読
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世界史の構造的理解
出版社
定価
1,870円(税込)
出版日
2022年07月04日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

本書は、世界史を理数系の視点から「構造的」に論述した一冊である。物理学者の視点で考察された世界史は、いままで私たちが抱いていた世界観を根本から問い直し、新たな視点を与えてくれるはずだ。過去の出来事から未来の事象、そして人間の思考や行動までも物理学の視座で捉えている。こうして歴史を理解することは、未来への深い洞察へとつながっている。

著者が描く未来は決して楽観的なものではない。豊かで便利になったはずの現代社会において、どことなく閉塞感を感じることはないだろうか。人間の欲望は満たされ続け、この先、人間の活動領域はデジタル空間、メタバースへとシフトする可能性もあるが、行き着く先に何が待っているだろうか。「快楽カプセル」のなかで夢を見続けるだけの存在になるのではないか。本書では、人間の短期的願望が極大化し、もう後には戻ることができないそうした状態をコラプサー化と呼び、警鐘を鳴らしている。

コラプサー化を回避し、日本が世界で存在感を示すカギとなるのが、幕末に活躍した「理数系武士団」だという。かれらのような人間は、現代の日本でも技術者として存在しており、国難の折には立ち上がって日本再興の切り札になるとする。もはや、軍事力でも経済力でも、日本は大国に太刀打ちできる状況ではない。日本の明るい未来を築くことができる「理数系武士団」とは何者なのか。どのようにかれらが力を発揮できるのか。本書を一読して、ぜひその姿を想像していただきたい。

ライター画像
香川大輔

著者

長沼伸一郎(ながぬま しんいちろう)
1961年東京生まれ。早稲田大学理工学部応用物理学科(数理物理)卒業後、同大学理工学部大学院中退。1987年、自費出版『物理数学の直観的方法』(通商産業研究社)の出版によって、理系世界に一躍名を知られる。その後も組織には属さず仲間と一緒に研究生活を送っている。
著書に『物理数学の直観的方法 普及版』『経済数学の直観的方法 マクロ経済学編』『経済数学の直観的方法 確率・統計編』(いずれも講談社ブルーバックス)、『現代経済学の直観的方法』(講談社)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    グローバリゼーションが進む現代は、巨大メディアとマーケットの複合体が巨大権力として君臨する全く新しいタイプの世界統合を目指している。
  • 要点
    2
    近代西欧、特にアメリカの個人の自由を尊重する姿勢によって、ごく少数の要素だけで社会が構成される「縮退」を通じて社会全体が短期的願望だけを求めるようになり、そこから回復できない状態であるコラプサー化が引き起こされる。
  • 要点
    3
    コラプサー化を回避しグローバルな世界で日本がまた存在感を示すための鍵は、理数系武士団である。

要約

【必読ポイント!】 「見えない皇帝」が支配する近代社会

日本の組織力を引き上げた理数系武士団

コロナは、今まで社会の底に潜在化していた問題を一挙に表面化させる力を持っている。そうしてサルベージされた難題は容易に解決するものではない。これに対抗するためには、「もともと社会や文明全体が抱えていた大きな課題に対する、明確なビジョンをもっていることが重要だ」。

しかし、現代の日本は、「今後のビジョンの提示」において米中などに遅れをとりそうな気配がある。今までは、「勤勉さ」という武器で出遅れをカバーしてきたと考えられてきたが、そもそもその見方自体に疑問がある。戦略論における組織の力を「戦闘力(体力面での力)と戦略力(知的な力)の積」と考えると、「勤勉さ」は前者に属する。それだけでは大きな拡大は望めない。とすると、日本は「戦略力」に優れた国だったはずだ。

日本では国難の折に「理数系武士団」とでも呼べる集団が出現し、大きな力を国に与えていたのではなかろうか。かれらが独創的なビジョンで国を先導していたということだ。突出した発想力を持つ島津斉彬や自発的な育成機関となった緒方洪庵の適塾、理系的発想の忠実な伝道者となった坂本龍馬などがその代表例といえる。

現代でも「理数系武士団」は、資金量とスピードに勝る米中などと向き合うための、日本が隠し持つ秘密の武器なのだ。

「勢力均衡型」の西欧社会と「世界統合型」の中国
pakornkrit/gettyimages

そもそも現在の世界はどこへ向かっているのだろうか。

現代は、グローバリゼーションを一種の震源として世界が動いているように感じられる。しかしそれはこれまでの世界史でも同様であった。

グローバリゼーションがどこに向かうかのギリギリで戦われた顕著な例が、ナポレオン戦争であった。そしてこの戦争は、第二次世界大戦との類似点が多い。両者はともに、ナポレオン・ボナパルトとヒトラーという強烈な独裁者が中心になっており、これに対し連合軍が対抗した。また、英国から見たときに「海vs陸」という共通の構図を持っており、連合軍の制海権(制空権)に屈して、攻撃の矛先をロシア・ソ連に向け失敗している点も同じだ。ここにはもちろん、地政学的な理由が大きく影響している。

両者には相違点もあった。ナポレオン戦争は、「世界統合と勢力均衡」のどちらを選択するかという、大きな意義を帯びていたのだ。ナポレオンはヨーロッパ全体をフランスの下に統合するという「世界統合型」を目指し、連合軍側の英国は複数の国家がバランスをとりながら並立する「勢力均衡型」を志向した。後者が勝利したというのがその世界史的な意味である。

ここで中国を眺めると、中国は歴史的に、単一の帝国からなる「世界統合型」として成り立っており、ここに欧米との文明的性格の根本的な違いが見えてくる。中国は、「大きな権力の下で管理社会の中の沈滞した精神のようなものに覆われていく」ようだ。

実は、現代のわれわれの世界で進むグローバリゼーションは、中国史の中で起こったのに似た一種の“世界統合”である。そこでは、独裁者や皇帝の代わりに巨大メディアとマーケットの複合体が巨大権力として君臨する。

メディアが地形の平坦化を進行させる
piranka/gettyimages

それでは、ヨーロッパと中国が、「勢力均衡型」と「世界統合型」という全く異なるものに分かれた理由は何なのか。注目したいのは地形的な違いだ。特に海と陸の関係である。

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