増補改訂版 道具としてのファイナンスの表紙

増補改訂版 道具としてのファイナンス


本書の要点

  • 企業が行う財務的な意思決定の方法を学ぶ学問がファイナンスである。投資・調達・株主還元の意思決定の先にあるのは、企業価値の最大化だ。

  • 企業は正味現在価値(NPV)を投資判断に用い、株主や債権者は企業価値評価にフリーキャッシュフロー(FCF)を用いる。

  • 最適資本構成は、デットの節税効果と財務破綻コストのトレードオフで決まる。

  • 経営の自由度の価値は、ディシジョン・ツリー法やリアル・オプション法で評価する。その本質的価値は、経営者がオプションを行使する決断ができることにある。

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投資に関する理論

ファイナンスはビジネスの共通言語

ファイナンスの勉強に、必要以上の時間とお金をかける必要はない。あくまでビジネスの現場で大切なのは、アクションに結びつく分析や提案をし、それを実現することだからだ。ファイナンス理論は世界のビジネスにおける共通言語である。ファイナンスとは、「企業が行う財務的な意思決定の方法を学ぶ学問」を意味する。投資すべきか否か、どう調達するか、いくら株主還元するか。これら3つの意思決定の先にあるのは企業価値の最大化だ。本書のエッセンスの一部を紹介していく。

正味現在価値で投資判断をする

takasuu/gettyimages

お金の価値は「そのお金をいつ受け取るか」で変わる。明日の100万円より今日の100万円のほうが、価値があるということだ。いまの100万円をたとえば国債で運用すると、時間の経過とともに利息を生む。これを「お金の時間価値」という。将来価値は、将来のある時点に受け取るお金の価値を表す。一方、現在価値は、将来に受け取るお金を現在の価値に割り引いたものである。企業は投資なしに企業価値を高めることはできない。現在の投資が企業の将来を左右する。投資判断の決定プロセスは、プロジェクトのキャッシュフローの予測を行い、投資の判断指標を計算し、その計算結果と採択基準を比較して、基準を満たしていれば、プロジェクトを実行するというものになる。ここからは、投資の経済的な価値を数値にした投資判断指標について説明する。著者がかつて勤務していた日産自動車では、投資判断に「正味現在価値(NPV:Net Present Value)」を使っていた。投資判断の本質は「価値(手に入れるもの)」と「価格(差し出すもの)」を比較することだ。NPV=プロジェクトが将来生み出すキャッシュフローの現在価値の合計額-初期投資額で計算できる。NPV>0なら投資すべき、NPV<0なら投資を見送るべきと判断する。複数のプロジェクトから1つを選ぶ場合は、NPVの大きいプロジェクトを選ぶ。

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要約公開日 2022.10.05
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